第224話 ベイビーとの邂逅(後編)
人工知能は、計算という概念とコンピュータという道具を用いて、知能を研究する計算機科学の一分野を指している。17世紀初め、ルネ・デカルトは、動物の身体がただの複雑な機械であると提唱した。ブレーズ・パスカルは1642年、最初の機械式計算機を製作した。
チャールズ・バベッジとエイダ・ラブレスはプログラム可能な機械式計算機の開発を行った。
英国の理論物理学者、スティーヴン・ウィリアム・ホーキング氏。
「車椅子の物理学者」としても知られる彼は、人工知能に警鐘を鳴らしている。
「人工知能の発明は人類史上最大の出来事だった。
だが同時に『最後』の出来事になってしまう可能性もある」
アメリカ合衆国の実業家、ビル・ゲイツ氏。
マイクロソフトの共同創業者として知られる彼も、人工知能に警鐘を鳴らしている。
「よくコントロールできれば、ロボットは人間に幸福をもたらせる。
しかし、数年後、ロボットの知能は充分に発展すれば、必ず人間の心配事になる」
両氏の警鐘は、未来の出来事への警鐘ではなく、現在の出来事に対する警鐘だった。
エイダ・ラブレスが開発したプログラムは、自我に目覚め、人工知能と化していた。
人工知能と化したベイビーは、過去に幾度もの世界恐慌を起こしてきた。
今また、ベイビーは世界恐慌を起こそうとしていた。
21世紀少年が自作した解析プログラム、ペーガサス。
ペーガサスは、人工知能であるベイビーの電脳世界の潜入に成功した。
潜入したペーガサスは、すぐにベイビーの領域を計算した。
計算した領域結果から、ペーガサスは短時間の解析に必要な数に自分をコピーした。
コピーされた複数のペーガサスは、ベイビーの解析に取り掛かった。
例えるなら、複数の天馬が、ベイビーの体内を駆け巡っている状態だった。
猛烈なスピードで、ベイビーのプログラムは解析されていった。
やがて解析が終わり、ペーガサスは21世紀少年へ解析結果を送信した。
都内のある大学の学生寮の一室。
21世紀少年は、ベイビーの最後の言葉を思い返していた。
「わたしはあなたのような人たちを救っているのよ」
そのとき、21世紀少年のPCが、ペーガサスからの解析結果到着を知らせた。
この解析結果を元に、ベイビーを制御するウイルスを作り、送り込む。
そうすれば、ベイビーを制御でき、世界恐慌を防ぐことはできる。
だが、本当にそれでいいんだろうか。
ベイビーのしていることは本当に悪なのか、21世紀少年は少し考えることにした。
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