第235話 世界恐慌、終わりの始まり(中編)
世界最大の証券取引所であるニューヨーク証券取引所(NYSE)。
ニューヨーク証券取引所のサーバールームには複数のサーバーがあった。
人工知能"ベイビー"のサーバーは、世界中の市場を株高にしていた。
世界株高の中、世界恐慌のXデーは迫りつつあった。
ある日のこと、都内にある重厚な門構えの木造家屋。
敷地内には石庭があり、都会の喧騒を忘れさせる佇まいだった。
回廊に面した各部屋は、質素でありながら気品のある空間になっていた。
居間には、家主である伝説の相場師、無敗のキングがいた。
卓上の電話が鳴った。
男性秘書が受話器をとり、かけてきた相手と用件を確認する。
保留にした男性秘書が、無敗のキングに聞く。
「難波の女帝が、ベイビーのことで話があるそうです」
「電話をよこせ」、無敗のキングが男性秘書にいう。
男性秘書が無敗のキングの近くに電話機を運び、保留を解除し受話器を手渡す。
「すまんな、こんな夜、遅うに」、難波の女帝がいう。
「まだ、起きてましたので、ご心配はご無用です」、無敗のキングがいう。
「ついにベイビーによる世界恐慌が始まったようや。
さっき始まった、NYダウがとんでもないことになっとる。
開始時の下げ幅は年初来どころか、かってない下げ幅や。
間違いなく、週明けの各国市場は暴落するで」、難波の女帝がいう。
「暗黒の金曜日、ブラックフライデーですか」、無敗のキングがいう。
「この週末、世界中の投資家は恐怖に震えることになる。
週明け、休みの間に恐怖が増幅した世界中の投資家は一斉に売るはずや。
まさか、金曜日に仕掛けてくるとは思わへんかったわ」、難波の女帝がいう。
「確かに金曜に仕掛けてきたのは、休みの間に恐怖を増幅させるためでしょう。
ですが、我々に土日の2日間、準備する期間を与えてくれたともいえます。
私は持てる力の全てを使い、全力で買い向かいますよ。
たとえ、全てを失うことになろうが、悔いはありません」、無敗のキングがいう。
しばらく、難波の女帝は無言だった。
「あんた、ウチが思うてたより、ええ男やったんやな。
けど、あんただけにええ格好はさせへんで、ウチも淀屋二代目本家の力を見せたるわ。
用意せなあかんので、ほなな」、難波の女帝との電話は終わった。
0 件のコメント:
コメントを投稿