第150話 来るべきときの備え
都内のある証券会社。
情報システムの責任者である男は考えていた。
株は安く買って高く売る、Buy low,Sell highが基本のはずだ。
なぜ、中学生は高く買って、安く売ろうとしているのか。
いくら考えてもわからなかった。
そうだ、あいつに聞いてみよう、男の頭に1人の女性が浮かんだ。
男が勤める証券会社には資産運用を担当する部署がある。
通称アルカディアと呼ばれる部署の責任者は、無敗のクイーンと呼ばれる女性だった。
情報システムの責任者である男は、アルカディアのあるフロアへ向かった。
アルカディアへ着いた男はドアをノックしたが応答がない。
男はそっとドアを開けた。
何だ、こいつら、何をしている、ドアを開けた男は目を見張った。
アルカディアは白を基調とした部屋で、壁面には多くのモニターが埋め込まれている。
1人の女性はインカムを装着し、壁面のモニターに映るゲームをしていた。
シューティングにロールプレイング、モニターのゲームはどれも異なっていた。
同時並行でこれだけのゲームをしているのか、男は呆気にとられた。
責任者の女性、無敗のクイーンは顔の上に新聞を乗せていた。
まさか、この女、寝ているのか。
「何の用だ」、新聞の下から無敗のクイーンの声がした。
「教えて欲しいことがあってきた」、男は慌てて答えた。
「なんだ貴様か、久しぶりだな」、無敗のクイーンは新聞の下から端正な顔を出した。
「教えて欲しいことがある、株を高く買い、安く売るとしたら目的は何だ」、男は聞いた。
無敗のクイーンは優雅な笑みを浮かべるといった。
「簡単だ、株価を釣り上げるためだよ、何かあったのか」
「会長が無敗の個人投資家を育成している噂を聞いたことはあるか」、男がいう。
「ああ、聞いたことはあるが、それがどうした」、無敗のクイーンがいう。
「会長が育成している無敗の個人投資家が、株を高く買い、安く売ろうとしている」
「面白い話だ、詳しく聞かせてもらおうか」、無敗のクイーンが優雅な笑みでいう。
「かまわないが、あの女性社員は何をしているんだ。
勤務中にゲームをしているようにしかみえない」、男がいう。
「最下段のモニターを見てみろ、常に相場の動きが映し出されている。
テンは来るべきときに備え、トレーニングしているに過ぎん」、無敗のクイーンはいった。
株式投資で得た利益を元手に資産運用中の個人投資家。資産運用の状況や日々の生活を忘れないように記録している極めて私的なブログです。右下のカテゴリにオリジナル小説「神崎教授とAIの事件ファイル」、「銘柄を明かさない理由R」、「まとめ屋(暴走している株ブログに思うこと)」のリンクがあります。
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2016年11月6日日曜日
2016年11月4日金曜日
銘柄を明かさない理由R149 バグ
第149話 バグ
都内の古びた木造家屋。
2階の自室で中学生の男の子は、あることに気づいた。
あれ、この取引画面、バグってる。
バグっているのは祖父の取引口座がある証券会社の取引画面だった。
それは普通の者なら気づかないバグだった。
ある操作をすると、画面が固まってしまう。
単純なプログラムミスだな。
男の子は考えられる要因と対策を、証券会社にメールした。
翌朝、都内にある証券会社。
情報システムの責任者である男は、部下から報告を受けた。
「昨夜、取引画面のプログラムにバグがあるとの指摘メールが届きました。
昨夜の内に改修は終わっており、損害等は確認されていません」、部下がいう。
「どのようなバグだ」、責任者の男が問う。
「ある操作をすると、画面がフリーズしていました」、部下が答える。
「どのような操作をすると、フリーズしていたんだ」、責任者の男が問う。
「同じ銘柄を高値で買い発注、安値で売り発注したときです」、部下が答える。
「株は安く買って、高く売るんだ、そんな取引は想定外だ。
初心者が誤発注したときに、たまたま気がついたんだろ」、責任者の男がいう。
「いえ、そのメールを送ってきたのは、中学生ですが無敗の個人投資家です。
しかも、その中学生はその操作バグの早期の改修を要望していました」、部下が答える。
責任者の男は、社内の噂を思い出した。
会長が無敗の個人投資家を養成しているという噂。
養成しているのは、中学生、フリーター、ホステス、主婦、舞台俳優など様々。
養成は順調に進んでおり、とてつもないパフォーマンスを叩き出しているという噂だった。
「その中学生の取引口座を教えてくれ」、責任者の男がいう。
「かしこまりました、届いたメールも転送します」、部下は答え、席に戻った。
ほどなくして、部下から取引口座情報と届いたメールが転送された。
メールには今回のバグの考えられる要因と対策が、的確に記されていた。
責任者の男は、取引口座情報を確認した。
取引口座情報の備考欄に、アルファベットのKの文字があった。
会長は無敗のキングと呼ばれている相場師、イニシャルはKだ。
この中学生が会長が養成している無敗の個人投資家なのか、責任者の男は思った。
都内の古びた木造家屋。
2階の自室で中学生の男の子は、あることに気づいた。
あれ、この取引画面、バグってる。
バグっているのは祖父の取引口座がある証券会社の取引画面だった。
それは普通の者なら気づかないバグだった。
ある操作をすると、画面が固まってしまう。
単純なプログラムミスだな。
男の子は考えられる要因と対策を、証券会社にメールした。
翌朝、都内にある証券会社。
情報システムの責任者である男は、部下から報告を受けた。
「昨夜、取引画面のプログラムにバグがあるとの指摘メールが届きました。
昨夜の内に改修は終わっており、損害等は確認されていません」、部下がいう。
「どのようなバグだ」、責任者の男が問う。
「ある操作をすると、画面がフリーズしていました」、部下が答える。
「どのような操作をすると、フリーズしていたんだ」、責任者の男が問う。
「同じ銘柄を高値で買い発注、安値で売り発注したときです」、部下が答える。
「株は安く買って、高く売るんだ、そんな取引は想定外だ。
初心者が誤発注したときに、たまたま気がついたんだろ」、責任者の男がいう。
「いえ、そのメールを送ってきたのは、中学生ですが無敗の個人投資家です。
しかも、その中学生はその操作バグの早期の改修を要望していました」、部下が答える。
責任者の男は、社内の噂を思い出した。
会長が無敗の個人投資家を養成しているという噂。
養成しているのは、中学生、フリーター、ホステス、主婦、舞台俳優など様々。
養成は順調に進んでおり、とてつもないパフォーマンスを叩き出しているという噂だった。
「その中学生の取引口座を教えてくれ」、責任者の男がいう。
「かしこまりました、届いたメールも転送します」、部下は答え、席に戻った。
ほどなくして、部下から取引口座情報と届いたメールが転送された。
メールには今回のバグの考えられる要因と対策が、的確に記されていた。
責任者の男は、取引口座情報を確認した。
取引口座情報の備考欄に、アルファベットのKの文字があった。
会長は無敗のキングと呼ばれている相場師、イニシャルはKだ。
この中学生が会長が養成している無敗の個人投資家なのか、責任者の男は思った。
2016年10月28日金曜日
銘柄を明かさない理由R148 Mother's birthday
第148話 Mother's birthday
メガネをかけた中学生の男の子は下校途中だった。
男の子は母親の再婚相手から暴力を受けていた。
やがて男の子は、再婚相手の暴力を見かねた祖父母に引き取られた。
祖父が亡くなったあと、男の子は祖母と2人暮らしだった。
あっ、お母さんだ、男の子は気づいた。
スーパーから出てきた女性は、男の子の母親だった。
「お母さん」、男の子は声をかけた。
「お母さん」と呼ばれた女性は、男の子をみると複雑な表情を浮かべた。
「元気にしているの」と母親がいう。
「うん、元気だよ、お母さんは元気にしている」、男の子が無邪気な笑顔で問う。
「なんとか、元気にしているわ」、母親がいう。
「お母さん、確か今日は誕生日だよね」、男の子がいう。
「そうよ」、母親は答える。
「ちょっと待ってて」といい、男の子は母親を残し近くのATMへ向かった。
男の子は祖父の残してくれた資産を、株式取引で増やしていた。
男の子は、ATMで限度額一杯の現金を引き出した。
お母さんは、お金に困っているはずだ。
お金を渡せば、お母さんは喜んでくれるはずだ。
男の子はATMにある封筒に引き出した現金を入れた。
男の子は現金の入った封筒を手に母親の元へ向かった。
「お母さん、はい、誕生日プレゼント」
男の子は母親に現金の入った封筒を差し出した。
「なに、これ」、母親は封筒を手にとった。
封筒の中を見た母親は絶句した。
「お母さん嬉しくないの」、男の子がたずねる。
「これだけのお金をどうやって手に入れたの」、母親がいう。
「おじいちゃんに教えてもらった株だよ」、男の子がいう。
親子の間に沈黙が流れた。
「最高の誕生日プレゼントをありがとう。
でも一生、使うことができないプレゼントかもしれない」、母親がいう。
「また、いつかお母さんの手料理をお腹いっぱい食べさせてね」
男の子はにっこりと笑い、その場を後にした。
メガネをかけた中学生の男の子は下校途中だった。
男の子は母親の再婚相手から暴力を受けていた。
やがて男の子は、再婚相手の暴力を見かねた祖父母に引き取られた。
祖父が亡くなったあと、男の子は祖母と2人暮らしだった。
あっ、お母さんだ、男の子は気づいた。
スーパーから出てきた女性は、男の子の母親だった。
「お母さん」、男の子は声をかけた。
「お母さん」と呼ばれた女性は、男の子をみると複雑な表情を浮かべた。
「元気にしているの」と母親がいう。
「うん、元気だよ、お母さんは元気にしている」、男の子が無邪気な笑顔で問う。
「なんとか、元気にしているわ」、母親がいう。
「お母さん、確か今日は誕生日だよね」、男の子がいう。
「そうよ」、母親は答える。
「ちょっと待ってて」といい、男の子は母親を残し近くのATMへ向かった。
男の子は祖父の残してくれた資産を、株式取引で増やしていた。
男の子は、ATMで限度額一杯の現金を引き出した。
お母さんは、お金に困っているはずだ。
お金を渡せば、お母さんは喜んでくれるはずだ。
男の子はATMにある封筒に引き出した現金を入れた。
男の子は現金の入った封筒を手に母親の元へ向かった。
「お母さん、はい、誕生日プレゼント」
男の子は母親に現金の入った封筒を差し出した。
「なに、これ」、母親は封筒を手にとった。
封筒の中を見た母親は絶句した。
「お母さん嬉しくないの」、男の子がたずねる。
「これだけのお金をどうやって手に入れたの」、母親がいう。
「おじいちゃんに教えてもらった株だよ」、男の子がいう。
親子の間に沈黙が流れた。
「最高の誕生日プレゼントをありがとう。
でも一生、使うことができないプレゼントかもしれない」、母親がいう。
「また、いつかお母さんの手料理をお腹いっぱい食べさせてね」
男の子はにっこりと笑い、その場を後にした。
2016年10月24日月曜日
銘柄を明かさない理由R147 ある王の話
第147話 ある王の話
破綻した大手証券会社に勤めていた男、嗤う男が推奨した株。
その株は恐るべき仕手株だった。
嗤う男は、ある業界紙で「銘柄診断」というコラムを執筆していた。
「銘柄診断」は、取り上げた株が急騰することから神コラムと呼ばれていた。
「銘柄診断」で取り上げられたあと、株価は急騰した。
急騰後、しばらくボックス圏、すなわちある株価内で推移した。
やがて、その株は下値を切り上げながら、徐々に株価が上昇していた。
日経平均に関係なく、その株は騰がり続けた。
仕手株には特徴がある。
相場に関係なく、株価が上昇するのである。
仕手株が動意づいたか見抜くには、株価の推移を見ればよい。
相場に関係なく、株価が上昇しているのなら仕手株が動意づいた確率が高い。
都内のタワーマンションの1室。
男は次に主演する舞台の台本を読み終えた。
リア王の悲劇の現代版アレンジか。
男は、若い頃に読んだリア王の話を思い出した。
ブリテンの王であるリアは退位するにあたり、国を3人の娘に分割し与えることにした。
長女ゴネリルと次女リーガンは言葉巧みに父を喜ばせた。
だが、末娘コーディリアの率直な物言いに、立腹したリアはコーディリアを勘当する。
リアは、2人の娘ゴネリルとリーガンを頼るが、裏切られて荒野をさまようことになる。
リアを助けるため、コーディリアはフランス軍とドーバーに上陸、父との再会を果たす。
だがフランス軍は敗れ、リアとコーディリアは捕虜となる。
リアは助け出されるが、コーディリアは獄中で殺されていた。
娘の遺体を抱いて現れたリアは悲しみに絶叫し世を去った。
リア王さん、なぜ1人で生きていこうとしなかった。
娘を頼った時点で終わりだろ。
信じられるのは、己だけだよ。
舞台俳優の男は台本を閉じた。
「銘柄診断」で推奨された株は買いだ。
買って買って買いまくってやる。
やがて、株価が頂点に達したとき、売りに回ってやる。
仮面の相場師と呼ばれる男は、凄みのある笑みを浮かべた。
破綻した大手証券会社に勤めていた男、嗤う男が推奨した株。
その株は恐るべき仕手株だった。
嗤う男は、ある業界紙で「銘柄診断」というコラムを執筆していた。
「銘柄診断」は、取り上げた株が急騰することから神コラムと呼ばれていた。
「銘柄診断」で取り上げられたあと、株価は急騰した。
急騰後、しばらくボックス圏、すなわちある株価内で推移した。
やがて、その株は下値を切り上げながら、徐々に株価が上昇していた。
日経平均に関係なく、その株は騰がり続けた。
仕手株には特徴がある。
相場に関係なく、株価が上昇するのである。
仕手株が動意づいたか見抜くには、株価の推移を見ればよい。
相場に関係なく、株価が上昇しているのなら仕手株が動意づいた確率が高い。
都内のタワーマンションの1室。
男は次に主演する舞台の台本を読み終えた。
リア王の悲劇の現代版アレンジか。
男は、若い頃に読んだリア王の話を思い出した。
ブリテンの王であるリアは退位するにあたり、国を3人の娘に分割し与えることにした。
長女ゴネリルと次女リーガンは言葉巧みに父を喜ばせた。
だが、末娘コーディリアの率直な物言いに、立腹したリアはコーディリアを勘当する。
リアは、2人の娘ゴネリルとリーガンを頼るが、裏切られて荒野をさまようことになる。
リアを助けるため、コーディリアはフランス軍とドーバーに上陸、父との再会を果たす。
だがフランス軍は敗れ、リアとコーディリアは捕虜となる。
リアは助け出されるが、コーディリアは獄中で殺されていた。
娘の遺体を抱いて現れたリアは悲しみに絶叫し世を去った。
リア王さん、なぜ1人で生きていこうとしなかった。
娘を頼った時点で終わりだろ。
信じられるのは、己だけだよ。
舞台俳優の男は台本を閉じた。
「銘柄診断」で推奨された株は買いだ。
買って買って買いまくってやる。
やがて、株価が頂点に達したとき、売りに回ってやる。
仮面の相場師と呼ばれる男は、凄みのある笑みを浮かべた。
2016年10月17日月曜日
銘柄を明かさない理由R146 神コラムの異変
第146話 神コラムの異変
ある業界紙で「銘柄診断」というコラムが始まった。
毎週、金曜日にこれから騰がりそうな銘柄を紹介するコラムだった。
コラムを書いている筆者の経歴は華やかだった。
破綻した大手証券会社を退職後、外資系証券会社で取締役を勤めた男だった。
今はフリーの株式評論家らしい男の銘柄分析は緻密だった。
ファンダメンタルズとテクニカルをベースにした分析には、説得力があった。
そのコラムには、他のコラムにはない独特の決まり文句があった。
「いつ急騰してもおかしくない株だ、週明け、すぐにでも買うことをお勧めする」
「銘柄診断」が推奨した株は、決まって面白いように上昇した。
いつしか、「銘柄診断」は、神コラムと呼ばれるようになっていた。
ある日のことだった、「銘柄診断」がある株を取り上げた。
その株はいつも推奨する株とは、大きく異なっていた。
大阪難波のタワーマンション。
「銘柄診断」を読んだイケメンの芸人に似た男、淀屋は思った。
その株はあかんやろ、下手したら死人が出んで。
淀屋初代本家13代目当主の男は、不敵な笑みを浮かべた。
その男の主演する舞台はフィナーレを終えた。
楽屋へ戻った男は、「銘柄診断」の推奨株を見て思った。
いよいよ来たか、この相場もらったな。
仮面の相場師と呼ばれる男は、凄みのある笑みを浮べた。
都内の高級マンション。
ウィッグの女は、「銘柄診断」の推奨株も大量に仕込み終えていた。
さあ、相場はどうなるのかしら。
これだから株は止められないわ、ウィッグの女はグラスのワインを飲み干した。
都内の一軒家、中学生の男の子は「銘柄診断」の推奨株を見て思った。
祖父の教えてくれた危険な株、仕手株だ。
仕手株には手を出すなと、祖父は教えてくれた。
でも、今の僕にはアルキメデスがある、男の子はにっこりと微笑んだ。
ある証券会社の資産運用部署、通称アルカディア。
無敗のクイーンは、「銘柄診断」の推奨株を調べていた。
その株は、仕手株として有名な株だった。
面白い、無敗のクイーンは優雅な笑みを浮かべた。
ある業界紙で「銘柄診断」というコラムが始まった。
毎週、金曜日にこれから騰がりそうな銘柄を紹介するコラムだった。
コラムを書いている筆者の経歴は華やかだった。
破綻した大手証券会社を退職後、外資系証券会社で取締役を勤めた男だった。
今はフリーの株式評論家らしい男の銘柄分析は緻密だった。
ファンダメンタルズとテクニカルをベースにした分析には、説得力があった。
そのコラムには、他のコラムにはない独特の決まり文句があった。
「いつ急騰してもおかしくない株だ、週明け、すぐにでも買うことをお勧めする」
「銘柄診断」が推奨した株は、決まって面白いように上昇した。
いつしか、「銘柄診断」は、神コラムと呼ばれるようになっていた。
ある日のことだった、「銘柄診断」がある株を取り上げた。
その株はいつも推奨する株とは、大きく異なっていた。
大阪難波のタワーマンション。
「銘柄診断」を読んだイケメンの芸人に似た男、淀屋は思った。
その株はあかんやろ、下手したら死人が出んで。
淀屋初代本家13代目当主の男は、不敵な笑みを浮かべた。
その男の主演する舞台はフィナーレを終えた。
楽屋へ戻った男は、「銘柄診断」の推奨株を見て思った。
いよいよ来たか、この相場もらったな。
仮面の相場師と呼ばれる男は、凄みのある笑みを浮べた。
都内の高級マンション。
ウィッグの女は、「銘柄診断」の推奨株も大量に仕込み終えていた。
さあ、相場はどうなるのかしら。
これだから株は止められないわ、ウィッグの女はグラスのワインを飲み干した。
都内の一軒家、中学生の男の子は「銘柄診断」の推奨株を見て思った。
祖父の教えてくれた危険な株、仕手株だ。
仕手株には手を出すなと、祖父は教えてくれた。
でも、今の僕にはアルキメデスがある、男の子はにっこりと微笑んだ。
ある証券会社の資産運用部署、通称アルカディア。
無敗のクイーンは、「銘柄診断」の推奨株を調べていた。
その株は、仕手株として有名な株だった。
面白い、無敗のクイーンは優雅な笑みを浮かべた。
2016年10月10日月曜日
銘柄を明かさない理由R145 ノンフレームメガネの男
第145話 ノンフレームメガネの男
世界有数の保険法人の日本オフィス。
ノンフレームメガネをかけたラフな男は、ある調査会社からの報告書を読んでいた。
1ヶ月前、大手外資系証券会社に勤務する男から依頼があった報告書だった。
保険法人と取引のある調査会社に、ある調査をして欲しいという内容だった。
銀座の高級クラブで、著名な株式評論家が薬物らしきものを飲まされた。
ついては、誰の仕業か調べて欲しいという内容だった。
普通なら、直接、依頼するよう回答する。
だが、外資系証券会社が大口の取引先だったことから、仲介役を引き受けた。
報告書には、薬物らしきものを飲ませるように指示した男の名前が記されていた。
高校時代の同級生が勤める証券会社の会長の名前だった。
バブル相場で巨額の富を手に入れた男、業界で知らない者はいない男。
最後の相場師に師事した大物相場師、無敗のキング。
なぜ、大物相場師が株式評論家に薬物らしきものを飲ませるように指示したのか。
なぜ、外資系証券会社がそのことを調べているのか。
何か始まろうとしているのか、それともすでに始まっているのか。
ノンフレームメガネの男はアシスタントに、報告書を外資系証券会社に送るよう指示した。
ふと、ノンフレームメガネの男は思った。
なぜ、外資系証券会社は、あの調査会社を指名したのか。
あの調査会社は、元社員だった社長と男性1名、女性1名の小さな調査会社だ。
だが、入社したとき、上司から高難度の案件は、あの調査会社に依頼するようにいわれた。
取引している調査会社はいくつもある。
だが、一桁しか社員がいない調査会社は、あの調査会社だけだ。
狸に似た社長に、どのような過去があるのか。
調べてみるか、ノンフレームメガネをかけたラフな男は人事部へ向かった。
人事部の社員が調べて教えてくれた。
狸に似た社長は、英国で採用され、海外勤務が長かったらしい。
日本勤務になり、しばらくしてから退社、調査会社を興した。
高難度の案件をこなせること、元社員の会社であることから、重宝しているという話だった。
あの狸に似た社長、仕事ができることは間違いない。
勤務していれば、かなりの地位につけたはずだ、なぜ、辞めて調査会社を興したのだろう。
ノンフレームメガネの男は知らなかった。
狸に似た社長が、この国を守る組織からの指示で、調査会社を興したことを。
世界有数の保険法人の日本オフィス。
ノンフレームメガネをかけたラフな男は、ある調査会社からの報告書を読んでいた。
1ヶ月前、大手外資系証券会社に勤務する男から依頼があった報告書だった。
保険法人と取引のある調査会社に、ある調査をして欲しいという内容だった。
銀座の高級クラブで、著名な株式評論家が薬物らしきものを飲まされた。
ついては、誰の仕業か調べて欲しいという内容だった。
普通なら、直接、依頼するよう回答する。
だが、外資系証券会社が大口の取引先だったことから、仲介役を引き受けた。
報告書には、薬物らしきものを飲ませるように指示した男の名前が記されていた。
高校時代の同級生が勤める証券会社の会長の名前だった。
バブル相場で巨額の富を手に入れた男、業界で知らない者はいない男。
最後の相場師に師事した大物相場師、無敗のキング。
なぜ、大物相場師が株式評論家に薬物らしきものを飲ませるように指示したのか。
なぜ、外資系証券会社がそのことを調べているのか。
何か始まろうとしているのか、それともすでに始まっているのか。
ノンフレームメガネの男はアシスタントに、報告書を外資系証券会社に送るよう指示した。
ふと、ノンフレームメガネの男は思った。
なぜ、外資系証券会社は、あの調査会社を指名したのか。
あの調査会社は、元社員だった社長と男性1名、女性1名の小さな調査会社だ。
だが、入社したとき、上司から高難度の案件は、あの調査会社に依頼するようにいわれた。
取引している調査会社はいくつもある。
だが、一桁しか社員がいない調査会社は、あの調査会社だけだ。
狸に似た社長に、どのような過去があるのか。
調べてみるか、ノンフレームメガネをかけたラフな男は人事部へ向かった。
人事部の社員が調べて教えてくれた。
狸に似た社長は、英国で採用され、海外勤務が長かったらしい。
日本勤務になり、しばらくしてから退社、調査会社を興した。
高難度の案件をこなせること、元社員の会社であることから、重宝しているという話だった。
あの狸に似た社長、仕事ができることは間違いない。
勤務していれば、かなりの地位につけたはずだ、なぜ、辞めて調査会社を興したのだろう。
ノンフレームメガネの男は知らなかった。
狸に似た社長が、この国を守る組織からの指示で、調査会社を興したことを。
2016年10月1日土曜日
銘柄を明かさない理由R144 狐と狸(後編)
第144話 狐と狸(後編)
翌朝、都内にある調査会社。
男が資料を確認していると、女性社員が出社してきた。
「ひさしぶりだね、おはよう」、男がいう。
「昨夜、会ったばかりじゃないですか」、女性社員は怒りながらいった。
「情報入手の連絡したら、2人で店にやってきて、社長1人で勝手に転ぶなんて。
あんな方法で辞めさせなくてもいいでしょう。
昨夜はマネージャーから、延々と説教されましたよ。
場合によっては、損害賠償請求するとまでいわれました」、女性社員はいった。
「あらかじめ教えておくと、驚かないだろ」、男が笑いながらいった。
「ったくもう、ところで社長は」、女性社員が聞く。
「昨夜、運ばれた病院で検査をした、もちろん受け身をとったので頭は異常なしだった。
ところが他によくないところが見つかり、精密検査するらしい」、男が笑いながらいう。
「ええっ、何ですか、それ、社長の検査費用をわたしが払うんですか」、女性社員がいう。
「心配しなくてもいい、店には請求しないそうだ」、男が笑いながらいう。
「当たり前です」、女性社員は怒りが覚めやらぬ様子で仕事の準備を始めた。
ふと視線が気になり見ると、男が女性社員を見ていた。
「何、見ているんですか」、女性社員がいう。
「い、いや、何か雰囲気が変わったなと思って」、男がいう。
「毎晩、酔っ払いの相手をしていたら、雰囲気も変わりますよ。
男のイヤな部分をたくさん見たんです、あ~絶対、婚期遅れるわ」、女性社員がいう。
「それは社長に損害賠償請求してもいいかもしれないな。
ところで誰が株式評論家の先生に薬物らしきものを飲ませたんだい」、男が聞く。
「飲ませたのは店で1、2を争うホステス、指示をしたのは、この男」
女性社員はバッグからメモを取り出し男に渡した。
「その情報を聞き出すために、どれだけ気をつかったことか。
先輩たちの服や持ち物、仕事ぶりを褒めまくりましたよ。
女の世界の恐ろしさを、つくづく感じました。
あ~あの世界は、わたしにはムリ」、女性社員はいった。
メモを受け取った男は、メモに書かれた名前に見入っていた。
指示をした男は、最後の相場師に師事した大物相場師キングだったのか。
なぜだ、なぜキングは株式評論家から、情報を得ようとしたんだ。
相場で何かが起ころうとしているのか、いや、すでに起こっているのか、男は思った。
翌朝、都内にある調査会社。
男が資料を確認していると、女性社員が出社してきた。
「ひさしぶりだね、おはよう」、男がいう。
「昨夜、会ったばかりじゃないですか」、女性社員は怒りながらいった。
「情報入手の連絡したら、2人で店にやってきて、社長1人で勝手に転ぶなんて。
あんな方法で辞めさせなくてもいいでしょう。
昨夜はマネージャーから、延々と説教されましたよ。
場合によっては、損害賠償請求するとまでいわれました」、女性社員はいった。
「あらかじめ教えておくと、驚かないだろ」、男が笑いながらいった。
「ったくもう、ところで社長は」、女性社員が聞く。
「昨夜、運ばれた病院で検査をした、もちろん受け身をとったので頭は異常なしだった。
ところが他によくないところが見つかり、精密検査するらしい」、男が笑いながらいう。
「ええっ、何ですか、それ、社長の検査費用をわたしが払うんですか」、女性社員がいう。
「心配しなくてもいい、店には請求しないそうだ」、男が笑いながらいう。
「当たり前です」、女性社員は怒りが覚めやらぬ様子で仕事の準備を始めた。
ふと視線が気になり見ると、男が女性社員を見ていた。
「何、見ているんですか」、女性社員がいう。
「い、いや、何か雰囲気が変わったなと思って」、男がいう。
「毎晩、酔っ払いの相手をしていたら、雰囲気も変わりますよ。
男のイヤな部分をたくさん見たんです、あ~絶対、婚期遅れるわ」、女性社員がいう。
「それは社長に損害賠償請求してもいいかもしれないな。
ところで誰が株式評論家の先生に薬物らしきものを飲ませたんだい」、男が聞く。
「飲ませたのは店で1、2を争うホステス、指示をしたのは、この男」
女性社員はバッグからメモを取り出し男に渡した。
「その情報を聞き出すために、どれだけ気をつかったことか。
先輩たちの服や持ち物、仕事ぶりを褒めまくりましたよ。
女の世界の恐ろしさを、つくづく感じました。
あ~あの世界は、わたしにはムリ」、女性社員はいった。
メモを受け取った男は、メモに書かれた名前に見入っていた。
指示をした男は、最後の相場師に師事した大物相場師キングだったのか。
なぜだ、なぜキングは株式評論家から、情報を得ようとしたんだ。
相場で何かが起ころうとしているのか、いや、すでに起こっているのか、男は思った。
銘柄を明かさない理由R143 狐と狸(前編)
第143話 狐と狸(前編)
週末の夜、それは銀座の高級クラブで起こった。
週末ということもあり、店は賑わっていた。
数週間前に採用された女性は、試用期間中だった。
試用期間中の女性は、男性客2人のテーブルを担当していた。
「トイレはどこかな」、太った狸に似た男が試用期間中の女性に聞く。
「ご案内いたします」、試用期間中の女性はトイレの方向を見ながら席を立った。
狸に似た男は、女性の肩に手をかけて、立ち上がろうとしていた。
狸に似た男は女性の肩に手をかけることができず、身体のバランスが崩れた。
グラスの割れる音がして、鈍い衝撃音がした。
店内の客が見ると、グラスが散乱する中、狸に似た男は床に仰向けに倒れていた。
連れの男は、狸に似た男に近づき、しゃがみ込んだ。
「大丈夫ですか」、連れの男が狸に似た男に声をかける。
狸に似た男は、ゆっくりと目を閉じた。
「おい、君、すぐに救急車を呼べ」、連れの男がいった。
試用期間中の女性は動揺し、うろたえていた。
「一刻を争う事態かもしれないんだ、すぐに救急車を呼べ」、連れの男がいう。
黒服のボーイが、かしこまりましたといい、店の奥に走った。
試用期間中の女性は、呆然と立ち尽くしていた。
店の奥からキツネに似たマネージャーが飛び出てきていった。
「申し訳ございません、今、救急車を呼びましたので」
連れの男は立ち上がるといった。
「後頭部を強打している、救急隊員が来るまで絶対に動かすな。
だいたい何だ、この店は、ホステスの教育はできているのか。
話題も少なく客に気を使わせる、挙句の果てには客にケガをさせる、なんて店だ」
キツネに似たマネージャーは、連れの男に謝り続けた。
やがて、救急車が到着し、救急隊員によって狸に似た男が運び出された。
「後は任せて、君は事務所で待っていなさい」
キツネに似たマネージャーは、試用期間中の女性にいい店外へ出て行った。
店の外でキツネに似たマネージャーは、連れの男に連絡先をたずねた。
「今は一刻を争うんだ、あとで搬送先の病院に確認しろ」、男はいった。
狸に似た男と連れの男を乗せた救急車は、サイレンを鳴らし走り去っていった。
あの試用期間中の女性には辞めてもらうしかないな、キツネに似たマネージャーは思った。
週末の夜、それは銀座の高級クラブで起こった。
週末ということもあり、店は賑わっていた。
数週間前に採用された女性は、試用期間中だった。
試用期間中の女性は、男性客2人のテーブルを担当していた。
「トイレはどこかな」、太った狸に似た男が試用期間中の女性に聞く。
「ご案内いたします」、試用期間中の女性はトイレの方向を見ながら席を立った。
狸に似た男は、女性の肩に手をかけて、立ち上がろうとしていた。
狸に似た男は女性の肩に手をかけることができず、身体のバランスが崩れた。
グラスの割れる音がして、鈍い衝撃音がした。
店内の客が見ると、グラスが散乱する中、狸に似た男は床に仰向けに倒れていた。
連れの男は、狸に似た男に近づき、しゃがみ込んだ。
「大丈夫ですか」、連れの男が狸に似た男に声をかける。
狸に似た男は、ゆっくりと目を閉じた。
「おい、君、すぐに救急車を呼べ」、連れの男がいった。
試用期間中の女性は動揺し、うろたえていた。
「一刻を争う事態かもしれないんだ、すぐに救急車を呼べ」、連れの男がいう。
黒服のボーイが、かしこまりましたといい、店の奥に走った。
試用期間中の女性は、呆然と立ち尽くしていた。
店の奥からキツネに似たマネージャーが飛び出てきていった。
「申し訳ございません、今、救急車を呼びましたので」
連れの男は立ち上がるといった。
「後頭部を強打している、救急隊員が来るまで絶対に動かすな。
だいたい何だ、この店は、ホステスの教育はできているのか。
話題も少なく客に気を使わせる、挙句の果てには客にケガをさせる、なんて店だ」
キツネに似たマネージャーは、連れの男に謝り続けた。
やがて、救急車が到着し、救急隊員によって狸に似た男が運び出された。
「後は任せて、君は事務所で待っていなさい」
キツネに似たマネージャーは、試用期間中の女性にいい店外へ出て行った。
店の外でキツネに似たマネージャーは、連れの男に連絡先をたずねた。
「今は一刻を争うんだ、あとで搬送先の病院に確認しろ」、男はいった。
狸に似た男と連れの男を乗せた救急車は、サイレンを鳴らし走り去っていった。
あの試用期間中の女性には辞めてもらうしかないな、キツネに似たマネージャーは思った。
2016年9月29日木曜日
銘柄を明かさない理由R142 父と娘の思い
第142話 父と娘の思い
銀座の高級クラブでの面接を終えた帰り道。
調査会社に勤めている女性社員は、明かりのついたビルを見ながら思った。
父は休みの日には、家族をよく遊びに連れて行ってくれた。
潮干狩りに、海水浴、テーマパーク、年に数回の海外旅行。
ある日、父の勤めていた大手証券会社が破綻した。
まもなく両親は離婚し、学校でいじめられるようになった。
だが、いじめを受けていることを、母にも先生にも相談できなかった。
皆から羨ましがられるようなことをしてきた自分が悪いんだと思っていた。
ある日、大きな男の人が現れた。
大きな男の人は、一緒にいじめに立ち向かってくれた。
後でわかったことだが、大きな男の人はいじめの事実を公にしてくれた。
大きな男の人は、いじめに立ち向かった私を最後まで気にかけてくれた。
あれ以来、大きな男の人は現れなかった。
当時は気づかなかったが、今ならわかる。
あの大きな男の人は娘を何とかしてくれと、父から頼まれたのだろう。
父は今、どこで何をしているのだろう。
アルカディアを有する証券会社の社長は、社長室にいた。
社長室の机には、かって家族だった3人が写った写真がある。
破綻した大手証券会社で、社内一の美人といわれていた元妻。
元妻の横で愛らしく笑う我が娘、海外旅行での思い出の写真だった。
勤めていた大手証券会社が破綻した。
株の世界で一から出直すといったら、元妻が反対し離婚することになった。
元妻が引き取った1人娘の様子を、ときおり見ていた。
ある日、娘の様子がおかしいことに気づいた。
当時、社長だった今の会長に、娘に何があったのか聞いてもらった。
娘は学校でいじめられていた。
会長は娘とともに、いじめに立ち向かってくれた。
しかも信じられないことに、当時の社員を総動員してくれた。
会長、あのときのご恩は生涯、忘れません。
あなたの創業したこの会社、わたしは成長させ続けます。
会長の会社には、アルカディアメンバーをはじめ、優秀な人材が揃っています。
いつの日にか、必ず天下をとるので、その日を楽しみにお待ちください。
銀座の高級クラブでの面接を終えた帰り道。
調査会社に勤めている女性社員は、明かりのついたビルを見ながら思った。
父は休みの日には、家族をよく遊びに連れて行ってくれた。
潮干狩りに、海水浴、テーマパーク、年に数回の海外旅行。
ある日、父の勤めていた大手証券会社が破綻した。
まもなく両親は離婚し、学校でいじめられるようになった。
だが、いじめを受けていることを、母にも先生にも相談できなかった。
皆から羨ましがられるようなことをしてきた自分が悪いんだと思っていた。
ある日、大きな男の人が現れた。
大きな男の人は、一緒にいじめに立ち向かってくれた。
後でわかったことだが、大きな男の人はいじめの事実を公にしてくれた。
大きな男の人は、いじめに立ち向かった私を最後まで気にかけてくれた。
あれ以来、大きな男の人は現れなかった。
当時は気づかなかったが、今ならわかる。
あの大きな男の人は娘を何とかしてくれと、父から頼まれたのだろう。
父は今、どこで何をしているのだろう。
アルカディアを有する証券会社の社長は、社長室にいた。
社長室の机には、かって家族だった3人が写った写真がある。
破綻した大手証券会社で、社内一の美人といわれていた元妻。
元妻の横で愛らしく笑う我が娘、海外旅行での思い出の写真だった。
勤めていた大手証券会社が破綻した。
株の世界で一から出直すといったら、元妻が反対し離婚することになった。
元妻が引き取った1人娘の様子を、ときおり見ていた。
ある日、娘の様子がおかしいことに気づいた。
当時、社長だった今の会長に、娘に何があったのか聞いてもらった。
娘は学校でいじめられていた。
会長は娘とともに、いじめに立ち向かってくれた。
しかも信じられないことに、当時の社員を総動員してくれた。
会長、あのときのご恩は生涯、忘れません。
あなたの創業したこの会社、わたしは成長させ続けます。
会長の会社には、アルカディアメンバーをはじめ、優秀な人材が揃っています。
いつの日にか、必ず天下をとるので、その日を楽しみにお待ちください。
2016年9月27日火曜日
銘柄を明かさない理由R141 ゴールデンクロス(後編)
第141話 ゴールデンクロス(後編)
銀座にある高級クラブのホステス、ウィッグの女は出勤途上だった。
ゴールデンクロスが近いと察知していたウィッグの女は、すでに大量の株を仕込んでいた。
ついに、ゴールデンクロスが現れたわ、本当、株ほど簡単なお金儲けはないわね。
株を教えてくれた先生に感謝しなくちゃね、ウィッグの女は1人で笑いそうになった。
店へ出勤すると、黒服のボーイが寄って来ていった。
「マネージャーが事務室へ来て欲しいとのことです」
何かしら、ウィッグの女は事務室へ向かった。
ノックをして事務室に入ると、キツネに似たマネージャーと見知らぬ女性がいた。
「どうしたの、マネージャー」、ウィッグの女が聞く。
「どうしても、ウチで働きたいっていう女の子が来たんだ。
業界未経験なので、お断りしたんだが諦めてくれないんだよ。
君からうまくいってくれないかなと思ってね」、キツネに似たマネージャーがいう。
またか、ウィッグの女は思った。
この業界、憧れだけでやっていけるほど甘くない。
しかも未経験でいきなり、この店に来るとは。
世間知らずもいいとこね、ウィッグの女は思った。
ウィッグの女はマネージャーの横に座ると、女性を見た。
整った気品のある顔立ちだわ、でも業界では平均点というところかしら。
わるいけど容姿だけでは不採用ね。
ウィッグの女は、女性の履歴書を手に取った。
女性は都内の聞いたこともない会社に勤めていた。
志望動機は、ありきたりの「この業界で自分の可能性を試してみたい」だった。
頭脳明晰なウィッグの女は、ふと学歴が気になりたずねた。
「なぜ、名門の私立校から公立校へ変わったの」
「父が勤めていた証券会社が破綻して、学費が払えなくなったんです」、女性がいった。
「お父さんは、その後、どうしたの」、ウィッグの女が聞く。
「父と母はまもなく離婚しました、それから母と2人暮らしです。
父の消息はわかりません」、女性がいった。
この女、おもしろい、ゴールデンクロスとともに現れたのも、何かの縁かもしれないわ。
ウィッグの女がキツネに似たマネージャーにいった。
「なかなかの過去を持っているみたいだし、試しに使ってみてあげてもいいんじゃない」
ウィッグの女の一言で、都内にある調査会社に勤める女性社員の採用が決まった。
銀座にある高級クラブのホステス、ウィッグの女は出勤途上だった。
ゴールデンクロスが近いと察知していたウィッグの女は、すでに大量の株を仕込んでいた。
ついに、ゴールデンクロスが現れたわ、本当、株ほど簡単なお金儲けはないわね。
株を教えてくれた先生に感謝しなくちゃね、ウィッグの女は1人で笑いそうになった。
店へ出勤すると、黒服のボーイが寄って来ていった。
「マネージャーが事務室へ来て欲しいとのことです」
何かしら、ウィッグの女は事務室へ向かった。
ノックをして事務室に入ると、キツネに似たマネージャーと見知らぬ女性がいた。
「どうしたの、マネージャー」、ウィッグの女が聞く。
「どうしても、ウチで働きたいっていう女の子が来たんだ。
業界未経験なので、お断りしたんだが諦めてくれないんだよ。
君からうまくいってくれないかなと思ってね」、キツネに似たマネージャーがいう。
またか、ウィッグの女は思った。
この業界、憧れだけでやっていけるほど甘くない。
しかも未経験でいきなり、この店に来るとは。
世間知らずもいいとこね、ウィッグの女は思った。
ウィッグの女はマネージャーの横に座ると、女性を見た。
整った気品のある顔立ちだわ、でも業界では平均点というところかしら。
わるいけど容姿だけでは不採用ね。
ウィッグの女は、女性の履歴書を手に取った。
女性は都内の聞いたこともない会社に勤めていた。
志望動機は、ありきたりの「この業界で自分の可能性を試してみたい」だった。
頭脳明晰なウィッグの女は、ふと学歴が気になりたずねた。
「なぜ、名門の私立校から公立校へ変わったの」
「父が勤めていた証券会社が破綻して、学費が払えなくなったんです」、女性がいった。
「お父さんは、その後、どうしたの」、ウィッグの女が聞く。
「父と母はまもなく離婚しました、それから母と2人暮らしです。
父の消息はわかりません」、女性がいった。
この女、おもしろい、ゴールデンクロスとともに現れたのも、何かの縁かもしれないわ。
ウィッグの女がキツネに似たマネージャーにいった。
「なかなかの過去を持っているみたいだし、試しに使ってみてあげてもいいんじゃない」
ウィッグの女の一言で、都内にある調査会社に勤める女性社員の採用が決まった。
2016年9月26日月曜日
銘柄を明かさない理由R140 ゴールデンクロス(中編)
第140話 ゴールデンクロス(中編)
都内のある調査会社に勤める男は依頼先との打ち合わせが終わり、帰社していた。
ようやく、ゴールデンクロスが出現した。
これから上昇相場が始まる、これからの買いはなしだ。
あとはいつ元本引き上げの売りをするかだな、男は思った。
帰社した男に、女性社員が声をかけた。
「社長がお呼びです、今すぐ社長室へ来てくださいって、また何かよくないことされました」
「いつもいっているだろう、心当たりは山ほどあると」
笑う女性社員を残し、男は社長室へ向かった。
社長室に着いた男は、軽くノックをした。
「入りたまえ」、男が社長室に入ると、社長は窓の外を見て、しばらく黙っていた。
「遠慮は要らん、掛けたまえ」、太った貫禄ある社長が振り向きながらいう。
とっくに、男はソファに座っていた。
「また、す、座っていたのか、まあいい」、社長がバツがわるそうにいった。
「また仕事の依頼ですか」、男はたずねた。
「ああ、そうだ、我が社のお得意様を通じての依頼だ」、社長がいう。
「依頼主と調査内容を教えてもらえますか」、男が聞いた。
「我が社のお得意様は、世界有数の保険法人だ。
そこを通して、大手の外資系証券会社から依頼があった」、社長がいう。
「大手の外資系証券会社からの依頼ですか」、男がいう。
「そうだ、しかも金に糸目はつけないらしい」、社長は嬉しそうにいった。
社長が話した依頼内容は以下だった。
著名な株式評論家が、銀座の高級クラブでホステスに薬物らしいものを飲まされた。
連れの男が別のホステスに店外へ呼び出された間に、意図的に行なわれた。
誰の仕業なのか調べて欲しいという依頼内容だった。
「もし薬物を飲まされたのが事実なら、警察へ届け出た方が話は早い」、男はいった。
「そうはできない何らかの事情があるのだろう」、社長がいう。
「仕方ありませんね、どうせ断れないんでしょう」、男がいう。
「当たり前だ、お客様は神様だからな」、社長が笑いながらいった。
席へ戻った男に女性社員が声をかける。
「何かお手伝いできることがあったら、何なりと仰ってください」
「今回ばかりは、君の助けが必要になるかもかもしれない」、男がいう。
「わかりました、お力になれるよう頑張ります」、女性社員がいう。
都内のある調査会社に勤める男は依頼先との打ち合わせが終わり、帰社していた。
ようやく、ゴールデンクロスが出現した。
これから上昇相場が始まる、これからの買いはなしだ。
あとはいつ元本引き上げの売りをするかだな、男は思った。
帰社した男に、女性社員が声をかけた。
「社長がお呼びです、今すぐ社長室へ来てくださいって、また何かよくないことされました」
「いつもいっているだろう、心当たりは山ほどあると」
笑う女性社員を残し、男は社長室へ向かった。
社長室に着いた男は、軽くノックをした。
「入りたまえ」、男が社長室に入ると、社長は窓の外を見て、しばらく黙っていた。
「遠慮は要らん、掛けたまえ」、太った貫禄ある社長が振り向きながらいう。
とっくに、男はソファに座っていた。
「また、す、座っていたのか、まあいい」、社長がバツがわるそうにいった。
「また仕事の依頼ですか」、男はたずねた。
「ああ、そうだ、我が社のお得意様を通じての依頼だ」、社長がいう。
「依頼主と調査内容を教えてもらえますか」、男が聞いた。
「我が社のお得意様は、世界有数の保険法人だ。
そこを通して、大手の外資系証券会社から依頼があった」、社長がいう。
「大手の外資系証券会社からの依頼ですか」、男がいう。
「そうだ、しかも金に糸目はつけないらしい」、社長は嬉しそうにいった。
社長が話した依頼内容は以下だった。
著名な株式評論家が、銀座の高級クラブでホステスに薬物らしいものを飲まされた。
連れの男が別のホステスに店外へ呼び出された間に、意図的に行なわれた。
誰の仕業なのか調べて欲しいという依頼内容だった。
「もし薬物を飲まされたのが事実なら、警察へ届け出た方が話は早い」、男はいった。
「そうはできない何らかの事情があるのだろう」、社長がいう。
「仕方ありませんね、どうせ断れないんでしょう」、男がいう。
「当たり前だ、お客様は神様だからな」、社長が笑いながらいった。
席へ戻った男に女性社員が声をかける。
「何かお手伝いできることがあったら、何なりと仰ってください」
「今回ばかりは、君の助けが必要になるかもかもしれない」、男がいう。
「わかりました、お力になれるよう頑張ります」、女性社員がいう。
2016年9月25日日曜日
銘柄を明かさない理由R139 ゴールデンクロス(前編)
第139話 ゴールデンクロス(前編)
株価が底値から上昇に転じると、短期線が上向きに転じる。
更に株価の上昇が続くと、中期線、長期線が上向きに転じる。
中期線が長期線を上回ることを、「ゴールデンクロス」という。
「ゴールデンクロス」は、上昇相場始まりのシグナルとされている。
都内の吹き抜けのアトリウムがあるオフィスビルの1室。
嗤う男は、背中に冷や汗が流れるのを感じていた。
「誰かに薬物のようなものを飲まされ、この場所を白状させられた話は本当か」
円卓の左側に座った男が無表情にいった。
「はい、銀座の高級クラブだったので、つい油断してしまいました」、嗤う男がいう。
「白状したのは、この場所だけか」、円卓の右側の男が聞く。
「お、おそらく、正直いって途中から覚えていないのです」、嗤う男がいう。
「一緒にいながら、お前は何をしていたのだ」、中央奥に座った男が問う。
「申し訳ありません、別のホステスから店外へ呼び出されたのです。
非常階段で身の上話を聞いていました。
テーブルに戻ると、先生はすでに意識を失っていらっしゃいました」
嗤う男の横に立つ年齢不詳の男が答える。
「あらかじめ、周到に用意された計画だったようだな。
誰の仕業か突き止めなくてはならない」、中央奥に座った男がいう。
「汚名返上の機会をいただけないでしょうか」、年齢不詳の男がいう。
「どう、返上するのだね」、円卓の右側の男が聞く。
「この手の調査を得意としている調査会社を知っています。
その調査会社を使って、誰の仕業か突き止めます」、年齢不詳の男がいう。
「失敗したら、後はないと思え」、中央奥に座った男がいう。
「かしこまりました」、年齢不詳の男と嗤う男は退室した。
「ついにゴールデンクロスが出ましたな」
円卓の左側に座った男が無表情にいう。
「計画は予定通りでよろしいでしょうな」
円卓の右側に座った男が、中央奥に座った男に聞く。
円卓の中央奥に座った男が不敵な笑みを浮べた。
「計画は予定通り、次のステージへ移行する。
今や相場は我らの意のままだ。
今回のゴールデンクロス、多くの者にとって終わりの始まりになるだろう」
株価が底値から上昇に転じると、短期線が上向きに転じる。
更に株価の上昇が続くと、中期線、長期線が上向きに転じる。
中期線が長期線を上回ることを、「ゴールデンクロス」という。
「ゴールデンクロス」は、上昇相場始まりのシグナルとされている。
都内の吹き抜けのアトリウムがあるオフィスビルの1室。
嗤う男は、背中に冷や汗が流れるのを感じていた。
「誰かに薬物のようなものを飲まされ、この場所を白状させられた話は本当か」
円卓の左側に座った男が無表情にいった。
「はい、銀座の高級クラブだったので、つい油断してしまいました」、嗤う男がいう。
「白状したのは、この場所だけか」、円卓の右側の男が聞く。
「お、おそらく、正直いって途中から覚えていないのです」、嗤う男がいう。
「一緒にいながら、お前は何をしていたのだ」、中央奥に座った男が問う。
「申し訳ありません、別のホステスから店外へ呼び出されたのです。
非常階段で身の上話を聞いていました。
テーブルに戻ると、先生はすでに意識を失っていらっしゃいました」
嗤う男の横に立つ年齢不詳の男が答える。
「あらかじめ、周到に用意された計画だったようだな。
誰の仕業か突き止めなくてはならない」、中央奥に座った男がいう。
「汚名返上の機会をいただけないでしょうか」、年齢不詳の男がいう。
「どう、返上するのだね」、円卓の右側の男が聞く。
「この手の調査を得意としている調査会社を知っています。
その調査会社を使って、誰の仕業か突き止めます」、年齢不詳の男がいう。
「失敗したら、後はないと思え」、中央奥に座った男がいう。
「かしこまりました」、年齢不詳の男と嗤う男は退室した。
「ついにゴールデンクロスが出ましたな」
円卓の左側に座った男が無表情にいう。
「計画は予定通りでよろしいでしょうな」
円卓の右側に座った男が、中央奥に座った男に聞く。
円卓の中央奥に座った男が不敵な笑みを浮べた。
「計画は予定通り、次のステージへ移行する。
今や相場は我らの意のままだ。
今回のゴールデンクロス、多くの者にとって終わりの始まりになるだろう」
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