第233話 相場は楽観の中で成熟する(後編)
米国にジョン・テンプルトンという相場師がいた。
彼はオックスフォード大学で法律の学位を取得、証券会社に勤務した。
後に投資顧問業を開始、その後、自らファンドを設立し大きな財を成した。
彼はウォール街の伝説的なファンドマネージャーとなり、テンプルトン財団を設立する。
彼は、上昇相場の始まりから終わりを、4つのステージにわけた格言を残している。
「Bull markets are born on pessimism, grow on skepticism, mature on optimism and die on euphoria.(相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく)」
1.市場が総悲観となれば、上昇相場の出発点になる。
2.先行きに警戒感が残るうちは、徐々に上昇を続ける。
3.警戒感が薄れて楽観的になった頃、相場は成熟(高値圏)になる。
4.市場が総強気になっているとき、上昇相場の終わりが訪れる。
ダウ平均株価が、金融株に牽引され、過去最高を更新していた。
各国の株価や指標も、ダウ平均株価につられ、過去最高を更新していた。
日経平均株価、上海総合指数、欧州株価など。
今、世界市場は、ジョン・テンプルトンの3番目のステージに達しようとしていた。
ニューヨーク市マンハッタン区のタートル・ベイ。
タートル・ベイには、日本企業のオフィスが多くあった。
そのため日本食レストランや居酒屋も多くあった。
ある日のランチタイム、日本食レストランに2人の日本人相場師がいた。
「バブルだよな」、天使の笑顔をもつ男が、食前酒のグラスを合わせながらいう。
「確かにね、だけど誰も気づいていない」、ウイッグの女がグラスを合わせていう。
「今日、本屋に寄ったら、株関係の本の特設コーナーができていたよ」
食前酒の日本酒を飲みながら、天使の笑顔をもつ男がいう。
「パーティーで会う人たちは、皆、株にかなりお金を使っているみたいよ。
必ずといってもいいほど、話しているうちに、株の話になるの」
食前酒の日本酒を飲みながら、ウィッグの女がいう。
やがて、食事を終え、2人の日本人相場師は日本食レストランを出た。
「やはり、日本食は日本で食べるのが一番だな」、天使の笑顔をもつ男がいう。
「当たり前でしょ」、ウィッグの女が笑いながらいう。
「号外、号外だよ、またNYダウが過去最高を更新したよ」
2人の前を、新聞売りの少年が大声を出しながら駆け抜けていった。
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