第220話 4年後の再会(中編)
ランチタイムの日本橋のカフェで2人の男が談笑していた。
「ところで仕事は忙しいんですか」、21世紀少年が聞く。
「証券会社の情報システムは、普段はそんなに忙しくない。
むしろ、ヒマなときの方が多いよ。
4年前に、君と一緒に外資系証券会社と戦ったときは楽しかったな。
君のメールにあったベイビーは実に興味深かったよ」、男がいう。
「ベイビーのことで話がしたいなんて、メールを送ってすいませんでした」
21世紀少年が男に頭を下げる。
「おいおい、謝らなくていい、でベイビーのことで話っていうのは」、男が聞く。
「ベイビーはAIですが、必ずどこかでインターネットと接続しているはずです。
ベイビー本体のIPアドレスを調べていただけないでしょうか」、21世紀少年がいう。
「ベイビー本体のIPアドレスを調べて、どうするんだい」、男が聞く。
「ベイビーのプログラムを解析した後、ベイビーを制御できるウイルスを送り込みます。
ウイルスの名前は”ベイビーワールドエンド”です」、21世紀少年がいう。
「そういうんじゃないかと思い、すでにベイビーのIPアドレスは調べておいたよ。
これがベイビーのIPアドレスだ」、男は21世紀少年にメモを渡した。
「どうやって、手に入れたんですか」、21世紀少年が驚いて聞く。
「ワールド株式投資セミナーのサーバーを覗いただけだよ」、男がいう。
「ありがとうございます、助かります」、21世紀少年が礼をいう。
そこへ、ローストビーフサンドセットが運ばれてきた。
「さあ、食べよう、ん、どうした」、男が21世紀少年にいう。
「あの、あなたの後方のテーブルに、2人の女性がいるんですが。
さっきから、ずっとこちらを見ているんです。
しかも、ガン見なんです」、21世紀少年が男の後方を見ながらいう。
「ああ、彼女たちは同じ証券会社にいるトレーダーだよ。
1人は無敗のクイーン、もう1人は無敗のテンって呼ばれている。
君と会うって話をしたら、是非、会わせろって頼まれたんだ。
2人の方が君が話しやすいだろうと思い、あえて離れた場所に座ってもらったんだ。
これだけ離れていれば、あの2人には何を話しているか聞こえやしないよ。
あの2人はいい歳なのに独身なんだ、君もあの2人みたいにはならないようにしろよ」
男は後ろを振り向くことなく、笑いながらいった。
男は気づいていなかったが、入店時、無敗のクイーンに集音マイクをつけられていた。
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