ラベル 銘柄を明かさない理由R(第20章 相場の世界を駆け抜けろ) の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 銘柄を明かさない理由R(第20章 相場の世界を駆け抜けろ) の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年3月5日火曜日

銘柄を明かさない理由R257 いつか必ず天下を(後編)

第257話 いつか必ず天下を(後編)

日本の軍用船が到着するまでに、男は仕事を見つけなくてはならなかった。
ある日、男は兵隊たちが慣れない手つきで、そろばんをはじいている姿を見た。
男は神戸の商社にいた頃、そろばんを独学していた。
「そろばんに難儀しておられるようですが、お手伝いしましょうか」

「お前、上手だなあ」、男がそろばんをはじくのを見た兵隊がいった。
やがて男は、月給1円で日本軍の軍属として働くことになった。
それまで、数人の兵隊が1日がかりでやっていた仕事を、男は半日足らずで終えた。
夜遅くまでやっていた仕事がなくなった兵隊たちから、男は感謝された。

男は主計少尉に「今度の軍用船で内地へ強制送還されます」と訴えた。
「心配しなくてもいい」と、主計少尉は強制送還の取り消しを働きかけてくれた。
その後、男は現地の日本軍の食糧や必要物資の仕入れを手がけることになった。
そのうち、男は食糧や必要物資を前線へ送る仕事も手がけるようになった。

1914年(大正3年)11月7日、日本軍はドイツの直轄地だった青島を攻撃、占領した。
男は日本の民間人として、第一号の青島入りとなった。
男は青島に入ると、自分の貿易会社を設立し、取扱商品を広げた。
やがて、男は4万人からなる青島軍司令部出入りの御用商人になった。

青島を占領した日本軍の中には、遊興に耽る軍人も少なくなかった。
青島占領後、内地からは料理屋や芸者たちが続々とやってきた。
青島市街は、賑やかな歓楽街へなっていった。
御用商人になった男は、毎晩のように高級料亭で将校連中を接待した。

同業者から妬まれていた男は、憲兵隊に通報されることになった。
便宜を図ってもらうため、日本軍の高官に贈賄したという容疑だった。
男は、憲兵の取り調べに素直に応じた。
取り調べが進むうち、憲兵の態度がみるみる変わっていった。

贈賄の相手に、司令部のとんでもない高官の名前が出てきたのである。
しかも、男の身元を内地へ照会すると、未成年であることもわかった。
結局、憲兵もそれ以上、取り調べを進めることができなくなった。
結果、証拠不十分で、男は無罪釈放となった。

釈放されるとき、取り調べの責任者だった中尉が男にいった。
「お前のことを調べたら、実にこれまで努力してやってきたことがわかる。
せっかくの才能があるんだ、お前の頭を正道に使え、決して邪道を歩むな。
邪道によって金儲けしようとか、出世しようとか考えるな、正道を歩け」

2019年2月27日水曜日

銘柄を明かさない理由R256 いつか必ず天下を(中編)

第256話 いつか必ず天下を(中編)

1914年8月1日、ドイツがロシアに宣戦、英仏が参戦、第一次世界大戦が始まった。
同年8月15日、日本は日英同盟の関係から、第一次世界大戦に参戦した。
日本軍はドイツ軍が駐留する青島攻略のため、軍事行動を開始した。
大連へ集結した日本軍は、山東半島へ軍艦で進撃を始めた。

「こいつだ」、6月に大連港に降り立った男は決断した。
欧州が戦場となっている今、日本軍の御用商人になるしかない。
男は世話になっていた大連の洋服生地問屋に事情を話した。
「軍隊相手に商売するなどとんでもない」、洋服生地問屋の主人は反対した。

主人から何度も引き止められたが、男の決意は変わらなかった。
主人からの餞別を手に、男は日本軍の後を追って、山東半島へ渡った。
当時、男は十六歳の少年で、日本軍の御用商人になれるはずがなかった。
だが、男は諦めず、日本軍の後を追ったのである。

男は山東半島に集結していた日本軍に頼み込んだ。
「なんでもいい、何か商売をさせてくれ」
頼む男に、日本軍はいった。
「ここは戦場だぞ。子どもがうろつくところではない。早く内地へ帰れ」

そのうち、日本軍は250キロ離れた青島へ移動してしまった。
このまま、ここにいては乗垂れ死ぬだけだ。
日本軍に追いつかなければ死ぬ。
男は250キロもの距離を、徒歩で行くことにした。

男は村落の無い山の中を、たった一人で歩き続けた。
人間の味を知っている野犬を撃退し、中国人の畑から食物を盗み、飢えを凌いだ。
青島へ着くまでの5日くらいは、這うようにして歩き続けた。
日の丸の旗がはためく村落の入口で、男は意識を失い、倒れこんでしまった。

気がつくと、家の中に寝かされ、数名の兵隊が男を取り囲んでいた。
助かった、と思うと、再び、男は意識を失った。
二度目に気づいたときは、医務室のベッドの上だった。
回復すると、男の身柄はすぐに憲兵隊に引き渡された。

男は憲兵隊に厳しい取調べを受けた。
「お前のような奴が大陸を放浪して、匪賊の仲間入りをするんだ。
今度、軍用船が来たら内地へ送り返す、それまで炊事場で働け」
男は仕事をもらえたが、軍用船が来れば内地へ強制送還されることになった。

2019年2月23日土曜日

銘柄を明かさない理由R255 いつか必ず天下を(前編)

自身のオリジナル小説である「銘柄を明かさない理由R」。
新たな「クーロンズ・アイ編」を開始した。
「クーロンズ・アイ編」は、ドイツのケルンから始まった。
その後、自身が若かりし頃、訪れたことのあるスイスへと舞台へ移した。

タイトルのみ決めて書き始めた「クーロンズ・アイ編」。
これからのストーリーは、中国を舞台に展開する。
ワールドワイドに展開するストーリーは、自身も予測不能だ。
それでは「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

--------------------------------------------------------------------------
第255話 いつか必ず天下を(前編)

日本で満洲と呼ばれる地域は、建国時の地域全体を意識することが多い。
現在の遼寧省、吉林省、黒竜江省の3省と、内モンゴル自治区の東部を範囲とする。
1900年、ロシア軍によって清国人数千人が虐殺されるアムール川事件が起きた。
1904年から勃発した日露戦争は日本の勝利に終わった。

1931年、大日本帝国は満洲事変を契機に満洲を占領、翌1932年、満洲国を建国した。
満洲国は清朝最後の皇帝であった愛新覚羅溥儀を元首、後の皇帝とした。
日本は南満洲鉄道や満洲重工業開発を通じて、産業投資を行なった。
不毛の地ばかりだった満州に農地が多数開墾され、荒野には工場を建設して開発した。

満州では治安が良くなり、交通が開け、貨幣が統一された。
これらの経済発展を受けて、中国民国側から豊かさを求めて多くの移民が流入した。
満州国地域における日本人以外の人口は満州国建国以前よりも増加した。
1932年に約3000万だった人口は、終戦までには約4500万人に増加した。

1914年(大正3年)6月、1人の男が大連港に降り立った。
東北の方向を望むと、澄み切った青空が広がっていた。
澄み切った青空を背景に、大和尚山が雄大な姿でそびえ立っていた。
標高663.1mの山だったが、その威容に男は魅入られていた。

男は、神戸の高等小学校を卒業すると、すぐに貿易商へ奉公に出た。
男は一日中、休みなしで働かされた。
「いまは下働きの小僧だが、いつか必ず天下に大号令を出してやる」
休みなしで働く男は、胸に思いを秘めていた。

ひたすら、男が仕事と勉強に明け暮れる毎日。
1914年の春、男が勤務する会社が倒産した。
主人は毎日、金策に追われ、債権者は朝から晩まで取り立てにやってきた。
小僧の身ながら、倒産の惨めさをいやというほど思い知らされた。

男は勤務先の倒産に直面して、あることを決意していた。
「いくら懸命に働いても、人に使われていては会社が倒産したらまた失業だ。
こんなことを、繰り返していては、天下を取ることなどおぼつかない。
どうせやるなら、ワシひとりの力でやってみせよう」

1914年6月、大連港に降り立った男は、大連の洋服生地問屋に世話になった。
同年6月28日、オーストリア皇太子がセルビアの青年に暗殺された。
同年7月28日、オーストリアはセルビアに宣戦した。
同年8月1日、ドイツがロシアに宣戦、英仏が参戦、第一次世界大戦が始まった。

2019年2月17日日曜日

銘柄を明かさない理由R254 プライベートバンカー(後編)

第254話 プライベートバンカー(後編)

プライベートバンカー(Private Banker)という職種がある。
個人またはパートナーシップ等の形態で、銀行を所有し、経営する個人銀行家である。
法人格での銀行経営者の事を「プライベートバンカー」と呼んではいけない。
自称プライベートバンクも、スイス銀行法上のプライベートバンカーにあたらない。(wikipediaより)

春鈴(シュンリン)の父親は、プライベートバンカーで、キリスト教徒でもあった。
春鈴が持ち帰った古びた銀の把っ手が2つついたカップ。
一目見た春鈴の父親は、そのカップが聖遺物である聖杯の特徴を備えていると思った。
春鈴からカップを預った父親は、カップを科学鑑定に出すことにした。

カップを科学鑑定に出してから数週間後、春鈴の自宅。
帰宅した父親が、母親に背広を預けながらいう。
「科学鑑定の結果が出たよ」
「結果はどうでした」、母親がいう。

「聖杯である可能性が、限りなく高いそうだ」、父親がいう。
「そう」、母親はいうと背広をハンガーにかけ始めた。
「春鈴の様子はどうだ」、父親が母親に聞く。
「神父さんが亡くなったショックが、まだ残っているみたい」、母親がいう。

「多感な時期だから、しかたあるまい。
聖杯は、春鈴が神父からいただいたものだ。
お前から春鈴に返しておいてくれないか」、父親が母親に聖杯を差し出していう。
「わかりました」、母親は聖杯を受け取るといった。

十数年後、春鈴の父親はスイスで屈指のプライベートバンカーとなっていた。
徹底した顧客情報の守秘と着実な資産運用は、多くの顧客を獲得していた。
各国の芸能人、プロアスリートをはじめ、顧客の中には各国政財界の要人もいた。
だが、積極的に支店等を展開することなく、その拠点はスイスのみだった。

数年後、高齢だった春鈴の母親が亡くなり、やはり高齢だった父親が体調を崩した。
父親は、秘書として業務に従事してきた春鈴に後を託すことにした。
病床で父親は春鈴に「後はお前に任せた、よろしく頼む」と告げた。
「後は任せて」、黒髪でオリエンタルな美貌の持ち主となった春鈴は答えた。

「ありがとう、春鈴」、父親はいうと安心したのか目を閉じた。
数日後、父親は亡くなり、春鈴が正式に後を継ぐことになった。
跡を継いだ春鈴は、”春鈴”から"スプリングベル"に改名した。
後に伝説となるプライベートバンカー"スプリングベル"が誕生した瞬間だった。

2019年2月14日木曜日

銘柄を明かさない理由R253 プライベートバンカー(前編)

第253話 プライベートバンカー(前編)

聖杯を持って家に帰る春鈴(シュンリン)を見送った神父は部屋に戻った。
神父は部屋を片付け、部屋の隅々まで入念に掃き清めた。
神父は部屋を出て浴室に湯を溜め、身体の汚れを洗い流すと清潔な服に着替えた。
部屋に戻った神父は椅子の上に立つと、天井の梁にロープをかけ、自らの首を通した。

ロープに首を通した神父は、今までの人生を思い返した。
ドイツのケルン、孤児院で過ごした幼少期の思い出。
第二次世界大戦末期、ケルン騎士団に入団して、聖杯をスイスへ避難させたこと。
終戦後に戻ったケルンの街は破壊され、ケルン騎士団と連絡が取れなかったこと。

絶望の中、聖杯と共に生きることを決め、再び、スイスへ向かったこと。
スイスの老神父がいる小さな教会に住み込みで働き、やがて跡継ぎを任されたこと。
数日前、身体の衰えに怯える神父は、夢の中で神からのお告げを受けた。
「近いうちに汝を助ける者が現れる、聖杯はその者に引き継ぐがよい」

キリスト教では、自ら命を絶つことは重罪だとされている。
だが、身体の衰えていた神父は、これからも聖杯の秘密を守りきる自信がなかった。
「神よ、お許しください」、神父は立っていた椅子を蹴った。
しばらくすると、数人の天使が舞い降り、神父は天国に召された。

聖杯を持って家に帰る途中、春鈴はパン屋さんに寄ってパンを買った。
春鈴の自宅は、教会をコンパクトにしたような家だった。
玄関を開けた春鈴は元気よく「ただいま」といい家に入った。
「お帰り、春鈴、朝ごはん食べるわよ」、母親がいう。

「食べる~」、春鈴はダイニングへ買ってきたパンを片手に走っていった。
春鈴、父親、母親が食卓を囲んで、朝食を食べ始めた。
「春鈴、その包みはなんだい」、父親が春鈴に聞く。
「お祈りにいった教会の神父さんから貰ったの」

いうと、春鈴は包みから、古びた銀の把っ手が2つついたカップを取り出した。
「神父さんが、聖なる杯っていってたの、素敵でしょ」
春鈴の父親は、プライベートバンカー(個人銀行家)だった。
また熱心なキリスト教徒でもあり、骨董品の収集家でもあった。

古びた銀の把っ手が2つついたカップを見た父親は、あることに気づいた。
「神父さんから、いいカップを貰ったね。
少しの間、お父さんにカップを貸してくれないかな」
「いいよ、お父さん、貸してあげる」、春鈴は元気に学校へ出かけていった。

2019年2月8日金曜日

銘柄を明かさない理由R252 後を継ぐ者(後編)

自身のオリジナル小説「銘柄を明かさない理由R」。
先日から、「クーロンズ・アイ編」を書き始めた。
よく、小説を書き始めると、登場人物たちが勝手に動き始めるといわれる。
自身は今までこのことを実感しているが、今も実感しているw

書き始めると登場人物たちが勝手に動きだすため、いくらでも書ける気がしている。
自身の定年はまだ先で、定年後は継続雇用には応じないことにしている。
相場師以外に起業も考えているが、作家もいいかもしれないと思い始めている。
それでは、「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

--------------------------------------------------------------------------
第252話 後を継ぐ者(後編)

教会に着いた春鈴(シュンリン)は、教会の敷地に倒れている神父を見つけた。
春鈴は倒れている神父に駆け寄った。
「神父さん、どうしたの、大丈夫」
春鈴は倒れている神父に呼びかけた。

年老いた青い目、長身、やせ型の神父は目を開いていった。
「おお、春鈴か、わるいが手を貸して立たせてくれんか」
春鈴は神父の手を掴むと、小さな体の全体重をかけて、立たせようとした。
神父は片手の杖を使い、よろけながらも立ち上がることに成功した。

「ありがとう春鈴、最近、歳のせいか、急に意識がなくなることがあってな。
お礼をしたいので、お祈りが終わったら部屋においで」、神父がいう。
「大丈夫でよかった。お祈りが終わったら部屋へいくね」
春鈴と年老いた神父は、教会へ向かって歩き出した。

お祈りが終わった春鈴は、神父の部屋へ向かった。
春鈴が部屋のドアをノックすると、中から神父が「お入り」といった。
神父の部屋は、最低限の設備や家具しかない質素な部屋だった。
「さあ、お座り」、神父が春鈴に椅子に座るよう促した。

春鈴は椅子に座ると、初めて入った神父の部屋を珍しそうに見ていた。
神父は食器棚から、古びた銀の把っ手が2つついたカップを取り出した。
テーブルに置いたカップに、冷蔵庫から取り出したグレープジュースを注いだ。
神父は春鈴に「助けてくれたお礼だよ」といい、カップを差し出した。

「いただきます」、春鈴は美味しそうにグレープジュースを飲んだ。
飲み終わった春鈴に、神父が「美味しかったかい」という。
「うん、美味しかった」、春鈴が笑顔で答える。
「助けてくれたお礼に、そのカップは春鈴にあげよう」、神父がいう。

「貰ってもいいの」、春鈴が神父に確認する。
「いいとも、ただ大事にしていたカップなので、春鈴にも大事にして欲しいんだ。
そのカップには名前があるんだよ」、神父がいう。
「なんて名前」、春鈴が聞く。

「聖なる杯っていう名前だよ」、神父がいう。
「聖なる杯って、素敵な名前、ありがとう神父さん、大事にするね」、春鈴がいう。
家に帰る春鈴を見送る神父は、数十年前、スイスに来たケルン騎士団の男だった。
「聖杯はあの子に引継がれた、全ては神の仰せのままに」、神父はつぶやいた。

2019年2月7日木曜日

銘柄を明かさない理由R251 後を継ぐ者(前編)

第251話 後を継ぐ者(前編)

スイス連邦、通称スイスは中央ヨーロッパにある連邦共和制国家。
永世中立国であるが、欧州自由貿易連合に加盟している。
また、バチカン市国の衛兵はスイス傭兵が務めている。
歴史によって、西欧に分類されることもある。

ドイツ、フランス、イタリアなどに囲まれた内陸に位置している。
国内には多くの国際機関の本部が置かれている。
首都はベルンで、主要都市にチューリッヒ、ジュネーヴ、バーゼルなどがある。
スイスにおける国防の基本戦略は、拒否的抑止力である。

スイスを侵略することによって得られる利益。
スイス軍の抵抗や国際社会からの制裁によって生じる損失。
損失の方が大きくなる状況をつくり出すことにより、国際紛争を未然に防ぐのである。
2002年の国連加盟後も、この基本戦略は変わっていない。

スイスには中世からの銀行業の歴史があり、多数の金融機関がある。
スイス銀行と言われる個人銀行は、顧客情報の守秘義務に関して国際的に有名である。
刑事事件が起こっても、原則として顧客の情報は外部に漏らさない。
この秘密主義の方針は、しばしば世界的な批判の的となっている。

ケルン大聖堂からスイスに聖杯が移動されてから、数十年後。
スイスで最も美しい教会があるといわれる街。
早朝、黒髪の女の子が街の通りを歩いて教会へ向かっていた。
「おはよう、春鈴(シュンリン)」、パン屋の太った店主が声をかける。

「おはよう、パン屋さん」、春鈴が笑顔で応える。
「今日も教会かい、毎朝、熱心だな」、パン屋の太った店主が笑いながらいう。
「パン屋さん、神様へのお祈りは大事よ」、春鈴が笑顔でいう。
「お祈りが大事なのはわかっているんだけどな」、パン屋の太った店主がいう。

「いつでも、どこでもいいのよ、お祈りは」、春鈴が笑顔でいう。
「今日も春鈴にとって、いい日になるといいな」、パン屋の太った店主がいう。
「ありがとう、パン屋さん、帰りに寄るね」、春鈴が笑顔でいう。
「本当、素直で明るい娘だね」、春鈴を見送るパン屋の店主に妻がいう。

教会に着いた春鈴は、教会の敷地に倒れている神父を見つけた。
春鈴は倒れている神父に駆け寄った。
「神父さん、どうしたの、大丈夫」
春鈴は倒れている神父に呼びかけた。

2019年2月6日水曜日

銘柄を明かさない理由R250 ケルンの騎士団(後編)

第250話 ケルンの騎士団(後編)

聖遺物のひとつとされる、聖杯はいくつか存在する。
聖杯の1つは、エルサレム近くの教会にあったとされるものである。
7世紀、ガリアの僧がエルサレム近くの教会でそれを見て、触れたと証言している。
銀でできており、把っ手が2つ対向して付いていたというが、現在の所在は不明。

あと、3箇所にある杯も、聖杯だといわれている。
3箇所とは、ジェノヴァ大聖堂、バレンシア大聖堂、メトロポリタン美術館である。
これらの3箇所の中に、ケルン大聖堂は含まれていない。
だが、ケルン大聖堂には、エルサレム近くの教会にあったとされる杯があった。

ケルン大聖堂に聖杯が持ち込まれてから、聖杯を守る騎士団が誕生した。
「ケルンの騎士団」と名づけられた騎士団の使命は、命を賭して聖杯を守ることだった。
深夜、ケルン大聖堂の一室。
部屋に入ってきた男の1人が、入団を認められたばかりの男にいった。

「アメリカ軍は、刻々とケルンに近づきつつある。
いずれ、ケルンも戦場と化すだろう。
一刻も早く、聖杯を安全な場所へ移動しなくてはならない。
中立国であるスイスへ聖杯を移動して欲しい」

入団を認められたばかりの若い男は、頭を上げていった。
「仰せのまま、聖杯を移動いたします」
部屋に入ってきた男の1人が、入団を認められたばかりの男に紙を手渡していった。
「その紙に聖杯に関する注意事項が書いてある」

紙を受け取った入団を認められたばかりの若い男がいう。
「もし、不測の事態があった場合は、どうすればよいのでしょうか」
部屋に入ってきた男の1人がいう。
「全ては神の仰せのままに」

翌朝、入団を認められた若い男は、ケルン中央駅にいた。
ケルン中央駅は、ドイツ鉄道の主要鉄道駅である。
駅はケルンの中心部にあり、ケルン大聖堂に程近い。
大聖堂にとても近いので、ジョークで駅礼拝堂と言われることもある。

入団を認められた若い男は、スイスへ向かうための切符を購入した。
駅の構内は、避難する大勢の人で混雑していた。
これから向かうスイスで、何が待ち受けているのかはわからない。
入団を認められた若い男は、聖杯の入ったトランクを携え、改札へ向かった。

2019年2月5日火曜日

銘柄を明かさない理由R249 ケルンの騎士団(前編)

本ブログには、自身が初めて書いた小説「銘柄を明かさない理由R」がある。
5人の無敗の相場師、ロイヤルストレートフラッシュの物語である。
そして彼らを取り巻く人々の物語でもある。
もちろん、素人が書いた小説なので、プロの方が書いた小説の足元にも及ばないw

主要登場人物は、無敗の天然こと10(テン)、無敗の相場師J、無敗のクイーンことQ。
無敗の大物相場師キングことK、無敗の若き相場師エースことAである。
一旦、完結していたが、続きを書きたくなったので再開した。
再開したのは「銘柄を明かさない理由R ベイビーワールドエンド編」w

自身としては「ベイビーワールドエンド編」が終われば、休載するつもりだった。
だが、昨年から相場が下がり続けていることもあり、続きを書きたくなってきた。
全てのストーリーは決まっていないが、あとは登場人物が動いてくれるはずだ。
それでは、続編「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

--------------------------------------------------------------------------
第249話 ケルンの騎士団(前編)

ケルンは、ベルリン、ハンブルク、ミュンヘンに次いで4番目に大きな都市である。
ヨーロッパでは1,000万人以上が住む大都市圏の一つである。
市内にはケルン大聖堂があり、カトリック教会のケルン大司教の拠点がある。
第二次世界大戦まで、ケルンは他国の支配を幾度か経験している。

第二次世界大戦中、ドイツの都市の中でも最も多くの空襲を受けた都市の一つだった。
イギリス空軍(RAF)によって34,711トンの爆弾が都市に落とされた。
この空襲でケルンの人口は95%減少し、市街地のほとんどが破壊された。
第二次世界大戦では、激しい空爆を受けてケルン市内の9割の建造物が破壊された。

1945年3月からはドイツ軍とアメリカ合衆国軍との間で激しい市街戦となった。
同年3月5日陥落したが、ケルン大聖堂だけは奇跡的にも完全には崩壊しなかった。
崩壊しなかったケルン大聖堂は、絶望の淵に陥っていた市民に希望を持たせた。
2015年には、移民による大晦日集団性暴行事件が起き、ドイツ全土に衝撃を与えた。

ドイツのケルンにあるケルン大聖堂は、ゴシック様式の大聖堂である。
正式名称は、ザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂。
ゴシック様式の建築物としては世界最大である。
大聖堂の維持管理は、主にケルン大聖堂中央建築協会によって担われている。

1945年2月、深夜、ケルン大聖堂の一室。
蝋燭のみで照らされた簡素な部屋に、2人の男が向かい合って立っていた。
1人は年老いたケルン大聖堂の年老いた主席司祭だった。
もう1人の男は、金髪、青い目、長身、やせ型のアーリア人の特徴を持つ若い男だった。

年老いた主席司祭が、アーリア人の特徴を持つ若い男に古びた杯を掲げて見せた。
「この杯は、最後の晩餐のとき用いられた杯、聖杯だ。
イエスと弟子たちの最後の晩餐に使われ、十字架上のイエスの血を受けたものだ」
いうと、主席司祭は聖杯にぶどう酒を注ぎ、若い男の前に差し出した。

「ケルンの騎士となることを誓うか」、主席司祭がいう。
「ケルンの騎士となり、この身を捧げることを誓います」
若い男はぶどう酒が注がれた杯を受け取ると、一気に飲み干した。
ぶどう酒を飲み干した若い男は、ひざまずいて頭をたれた。

部屋の木製ドアが開き、数名の男が入ってきた。
入ってきた男たちは、若い男を取り囲んだ。
取り囲んだ男の1人が、若い男にいった。
「ケルン騎士団への入団を認めよう」

2018年12月31日月曜日

銘柄を明かさない理由R248 相場の世界を駆け抜けろ(後編)

自身のオリジナル小説である「銘柄を明かさない理由R」。
いったん、終了していたが、今年、書きたくなり再開した。
タイトルのみ決めて書き始めた「ベイビーワールドエンド編」。
本稿で「ベイビーワールドエンド編」は終了するが、出来上がりには満足しているw

今年の相場は2015年の相場と同様、面白いことになっている。
自身は翌2016年2月の聖バレンタインの虐殺相場、いわゆる大底で買いを入れた。
「銘柄を明かさない理由R」を執筆しながらの買いで、楽しかったことを覚えている。
自身は来年、3年前と同じく「銘柄を明かさない理由R」を執筆しながら買うことにしたw

来年から「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をスタートする。
決まっているのは、いつもながらタイトルのみだ。
だが、書き始めれば、あとは登場人物たちがストーリーを作ってくれるはずだ。
それでは「銘柄を明かさない理由R ベイビーワールドエンド編」をお届けするw

--------------------------------------------------------------------------
第248話 相場の世界を駆け抜けろ(後編)

大晦日の昼下がり、無敗のJ(ジャック)は河川敷に寝転がっていた。
よく晴れた空にはいくつかの雲が流れている。
今日の雲は動きがゆっくりだ。
雲はさまざまに形を変えながら流れていく。

リーマンショックから10年目の今年。
3年前と同じく、夏頃まで平穏だった相場は、年末へ向けて大きく下落した。
翌年2月、聖バレンタインの虐殺相場が訪れ、相場は大底をうった。
来年、3年前と同じ虐殺相場が訪れるかもしれない、無敗のJは考えていた。

リーマンショックでは、多くの個人投資家が退場を余儀なくされた。
聖バレンタインの虐殺相場でも、少なくない数の個人投資家が退場した。
暴落相場や下落相場は、仕込みの絶好のチャンスでしかない。
にも関わらず、信用取引で買い向かい、退場する個人投資家が後を絶たない。

軽快な足音が聞こえてきた。
足音がした方を見ると、トレーニングウェアに身を包んだ女性がいた。
髪を後ろで束ねた端正な顔立ちには汗が光っている。
トレーニングウェアに身を包んだ女性は、顔見知りの無敗のクイーンだった。

「大晦日なのに昼寝か」、シャドーボクシングをしながら、無敗のクイーンがいう。
「そちらこそ、大晦日にシャドーボクシングか」、無敗のJは寝転がったまま答えた。
「聞きたいことがある」、シャドーボクシングをやめた無敗のクイーンがいう。
「何だ」、無敗のJが寝転がったままいう。

「年明けの相場をどう見ている」、無敗のクイーンが横に座りながらいう。
「気づいていると思うが、3年前の相場とそっくりだ」、無敗のJがいう。
「確かにな。年明け、貴様はどうするつもりだ」、無敗のクイーンがいう。
「さて、どうするかな」無敗のJがいう。

しばらくの間、2人は無言だった。
「ところで、結婚相手は見つかったのか」、無敗のJがいう。
「結婚なんぞには興味は無い」、無敗のクイーンがいう。
「素直に見つかってないといえよ」、無敗のJが笑いながらいう。

「ヒマそうにしている貴様にいわれたくないわ」、無敗のクイーンがいう。
「確かにそれもそうだ」、無敗のJがいう。
「そろそろ行くか、じゃあな」、無敗のクイーンが立ち上がりながらいう。
「またな」、無敗のJがいうと、無敗のクイーンは颯爽と走り去った。

2018年12月30日日曜日

銘柄を明かさない理由R247 相場の世界を駆け抜けろ(中編)

第247話 相場の世界を駆け抜けろ(中編)

上海市(Shanghai)は、中華人民共和国の直轄市である。
有数の世界都市であり、同国の商業・金融・工業・交通などの中心地。
香港・北京と並ぶ中国最大の都市の一つである。
アメリカのシンクタンクの総合的な世界都市ランキングで、世界9位と評価された。

2012年6月時点での常住人口は、2,400万人を超えている。
市内総生産は、2兆3,560億元(約45兆円)である。
いずれも首都の北京市を凌ぎ中国最大である。
中華人民共和国国務院により国家中心都市の一つに指定されている。

上海市浦東新区には、上海ワールドフィナンシャルセンター(SWFC)がある。
所在地は、上海市浦東新区世紀大道100で、高さは492m。
2013年9月現在、世界第5位(中華人民共和国で第1位の高さ)の超高層ビルである。
「最高フロア高さ」と「軒高」では、ブルジュ・ハリーファに次いで世界第2位である。

但し、展望台の高さ(地上474m)はブルジュ・ハリーファ竣工後も世界一を誇る。
7階から77階は、オフィスフロアとなっている。
金融機関を中心に、日本・ドイツなど外資企業が入っており、約1万人が働く。
28、29階には上海の金融情報の発信拠点となるメディアセンターがある。(Wikipediaより)

上海ワールドフィナンシャルセンターのオフィスフロアの1室。
1人の男が、部下らしき男の報告を受けていた。
「ようやく、上海の"ベイビー"の消去に成功しました」、部下らしき男がいう。
「思ったより、時間がかかったな」、報告を受けた男がいう。

「申し訳ありません。ですが、外部には知られておりません」、部下らしき男がいう。
「外部に知られてはことだからな」、報告を受けた男がいう。
「次のフェーズに移行してもよろしいでしょうか」、部下らしき男がいう。
「速やかに次のフェーズへ移行しろ」、報告を受けた男が命じた。

部下らしき男は部屋を出て行った。
報告を受けた男は椅子から立ち上がると、ブラインドを開け、窓外の景色を眺めた。
ようやく、次のフェーズへ移行できる。
男は窓外に広がる上海の高層ビル群を眺めながら思った。

香港、北京の"ベイビー"に続き、上海の"ベイビー"も消去された。
これで、我が国には、"ベイビー"による脅威はなくなった。
ようやく、あの国へ思い切った戦いを挑むことができる。
真の勝者は誰か思い知らせてやる、男は冷酷な笑みを浮かべた。

2018年11月26日月曜日

銘柄を明かさない理由R246 相場の世界を駆け抜けろ(前編)

第246話 相場の世界を駆け抜けろ(前編)

平日の昼、大阪市中央区の御堂筋沿いにある証券会社の大阪支店。
大阪支店の通用口から、1人の男が出てきた。
出てきた男は取締役兼大阪支店長の男、村野だった。
しばらく、大阪の街ともお別れやな、馴染みの店に挨拶がてら顔をだすか。

今朝、村野を東京本社へ異動する辞令が出た。
実質、最高経営者である村野が、代表執行役社長グループCEOになる辞令だった。
先日の「ブラックフライデー」で、東京証券取引所だけが暴落せえへんかった。
金融庁は、東京証券取引所だけが暴落しなかった理由を調べた。

その結果、ワテが国内の証券会社を率いて、買い向かったことが知られてしもうた。
金融庁は、ワテに代表執行役社長グループCEOに就任せえといいよった。
実質、最高経営者なんで、肩書きなんてどうでもええんやけどな。
まっ、ええか、勤め先が変わるだけや、村野は馴染みの店に向かった。

御堂筋の一本奥にある、ひなびた定食屋が村野の馴染みの店だった。
馴染みの店は、昭和の雰囲気を漂わせるひなびた店で賑わっていた。
のれんをくぐった村野に、店の高齢の店主が厨房から「いつものか」という。
「いつものや」、村野は答えてイスに座った。

しばらくすると、高齢の店主が料理を運んできた。
「お待たせ、いつもの煮魚定食やで」
「おおきに、ワテはここの煮魚が大好物やねん、おっちゃんの煮魚は最高やで」
村野は箸を取り、煮魚定食を美味そうに食べ始めた。

食べ終わった村野がいう。
「勘定や。美味かったで。やっぱ、ここの煮魚定食は最高やな」
厨房から出てきた高齢の店主がいう。
「いつもおおきに、お代はお連れの人から戴きましたよって」

「はぁ、連れ、連れなんかおらへんかったやろ」
村野が不思議そうにいう。
「遅れて後ろの席に座っていたスタジャンのあんちゃんが払ってくれましたよって。
一万円で釣りはいらんって、気前のええあんちゃんやったわ」、高齢の店主がいう。

「そのあんちゃんのスタジャン、ボロやったか」、村野が高齢の店主に聞く。
「そういやボロやったな、最初は貧乏かいなと思うたわ」、高齢の店主が村野にいう。
「そっか、またな、おっちゃん」、村野は高齢の店主にいうと、定食屋を出た。
どうやら、淀屋に借りができたようやな、村野は大阪支店へ向かって歩き始めた。