第384話 つかの間の平穏(中編)
休日の東京都中央区日本橋。
日本橋の上には、スタジャンにジーンズ姿の"浪花の相場師"、ヨドヤ コウヘイがいた。
日本橋の感じは、淀屋橋の感じによう似とるな、ヨドヤは思った。
しかし、テンちゃん遅いな、ヨドヤは約束の時間を過ぎている腕時計を見て思った。
この日、ヨドヤは交際中の彼女、"無敗の天然"ことテンマ リナと待ち合わせしていた。
ヨドヤが東京に開設する事務所の備品を、一緒に買いに行く約束をしていた。
女の子は時間がかかるからな、おまけに、テンちゃんは少し天然のとこあるし。
ヨドヤは、日本橋を行き交う大勢の人々を見ながら思った。
「だ~れだ」、ヨドヤの目の前に、カジュアルな装いをしたテンマが現れた。
「だ~れだって、テンちゃんやろ」、ヨドヤがいう。
「すっご~い、よくわかりましたね」、テンマが驚いていう。
後ろから目隠ししていわなあかんのに、目隠しすんの忘れてたんやな、ヨドヤは思った。
「遅れるかと思ったけど、間に合ってよかった、さあ行きましょ」
全然、間に合ってないんやけど、と思いながら、ヨドヤはテンマと買い物に向かった。
テンマは、ヨドヤを豪華なエントランスがある老舗百貨店に連れて行った。
店内は高級感あふれる雰囲気で、客も店員も上品な雰囲気を醸し出していた。
1人やったら、絶対、来うへんとこやな、スタジャンにジーンズ姿のヨドヤは思った。
実家が資産家で、老舗百貨店を行きつけにしているテンマは、ヨドヤを売場に案内した。
「スリッパは絶対にこれがいいです」、テンマがある高級スリッパを勧めた。
桁がちゃうやろ、値札を見たヨドヤは思ったが、仕方なく購入した。
その後、いくつかの備品を購入し、目的だった備品の買い物を終えた。
もう少し買った方がいいです、というテンマに、ヨドヤはいった。
「もう十分や、ワテはどちらかというと、シンプルな方が好きやねん」、ヨドヤがいう。
「もしかして、フォトフレームとかも置きたくない派ですか」、テンマがいう。
「そうやな、小物のないシンプルな空間が好きやな」、ヨドヤがいう。
「そうなんですね」、テンマが残念そうにいい、老舗百貨店での買い物が終わった。
買い物が終わったあと、2人は食事をし、この日のデートを終えた。
ヨドヤは分家への挨拶、テンマは事務所に立ち寄った後、実家へ帰宅することにした。
数時間後、ヨドヤが事務所にするマンションに帰ると、テンマは実家へ帰宅していた。
2人で買った備品は、所定の位置にきれいにそろえてあった。
やはり女の子やな、寝室のシングルベットに仰向けになったヨドヤは、呆気にとられた。
寝室の天井には、2人が以前、デートしたときの、2ショット写真が貼り付けられていた。
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