2024年7月12日金曜日

【小説】まとめ屋~vol.384~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

X:お疲れ
Z:お疲れ
B:おつかれ
X:Yのバカはいねえのか
Z:さっきまでいたわよ
B:ニュースになったネットストーカーが住む町のネットカフェにいるらしいよ
X:そのストーカーについて新たな情報あんのか
B:複数のアカウントを使い、女性に誹謗中傷を行っていた
B:それとは別に、実名のアカウントも使っていた
B:アカウントは閉鎖してるけど、痕跡からあることがわかったらしいよ
X:何だ、あることって
Z:他国出身の可能性があるらしいわ
X:何でわかったんだ
B:ログイン画面が外国語になっていたらしい
Z:しかも、奥さんの出身かもしれない国
X:ってことは、二人とも同じ国の出身かもしれねえってことか
B:そうだったとしても不思議じゃない
Z:その国出身の人が多く住んでる町だものね
B:あと、ストーカーだってことを知っている人がいたらしい
X:誰が知ってたんだ
B:Yが近所で聞き込みしていたら、知ってる人がいたらしい
X:何で、その人は知ってたんだ
B:以前、取材に訪れたマスコミが、その人に教えてくれたらしい
Z:近所にストーカーがいると、噂になってるかも
X:本人はそのこと知ってんのか
B:どうだろうね
Z:近所の人が本人にいうわけないし、知らないんじゃないの
X:近所から白い目で見られてるってことか、さてとそろそろ寝るわ、おやすみ
Z:わたしも寝るわ、おやすみ
B:おやすみ

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「もう、そんな時間か」、声をかけられた男が振り返っていう。
「また、まとめ屋のサイト見てたんですか」、声をかけた男がいう。
「マスコミはどこから事件ネタを入手してるんだ?」、声をかけられた男がいう。
「よく聞くのが、関係者からの情報提供ですね」、声をかけた男がいう。
「他にどんな方法がある?」、声をかけられた男がいう。
「裁判所の開廷表をチェックしている記者もいますね」、声をかけた男がいう。
「裁判を傍聴したりしてるのか」、声をかけられた男がいう。
「傍聴したり、関係者へ取材したりしてるんでしょうね」、声をかけた男がいう。
「関係者への取材に法的な問題はないのか」、声をかけられた男がいう。
「公益性があれば、問題にならないと思いますよ」、声をかけた男がいう。
「なるほどな、あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

人の社会的評価(名誉)は人格的利益の一つです。これを低下させるような具体的事実を不特定又は多数の人に対して公表されたときは、不法行為として損害賠償や差止めを請求することができます。
ただし、表現の自由や報道の自由等との調整のため、名誉毀損に当たる事実の公表があっても、公共の利害に関する事実で、もっぱら公益を図る目的があり、事実が真実であると証明される、または真実と信じるについて相当の理由があるときには、不法行為とはならないとされています。
(日本司法支援センター 法テラス)
「予告犯」筒井哲也氏より
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ネットの誹謗中傷をなくすにはどうしたらよいかをテーマに書いています。
誹謗中傷された場合の法的手続きですが、費用対効果は決してよいとはいえません。
また、相手から虚偽告訴罪で訴えられる可能性もあります。
誹謗中傷されたら、やり返さずに弁護士に相談されることをオススメします。
相談すれば、どのような罪に問えるかなど、アドバイスしてもらえることが多いです。
「まとめ屋」の方法はリーガルチェックを受けていないため、行わないでくださいw

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