2024年7月15日月曜日

【小説】まとめ屋~vol.385~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

X:お疲れ
B:おつかれ
X:Bしかいねえのか
B:さっきまでZがいたよ
X:Zの相手について新たな情報あったのか
B:競売物件の事件番号がわかったらしいよ
X:何だそれ
B:Zの相手は海が見える別荘を所有している
B:別の別荘所有者が、別荘地の管理費を滞納したので競売にかけたと発信していた
B:その競売物件の事件番号がわかったらしい
X:番号がわかれば何かできんのか
B:裁判所で裁判記録を閲覧することができる
B:閲覧できれば、別の別荘所有者の住所や氏名がわかる
B:住所や氏名がわかれば、プライバシー侵害されてることを教えることができる
X:何で競売にかけられたことがプライバシー侵害になるんだ
B:競売にかけられた理由を発信したからだよ
X:管理費を滞納したのは事実だろ
B:事実でも、競売にかけられた理由まで公開されない
X:知られたくない理由かもしれねえってことか
B:相続放棄で競売にかけられる場合もあるからね
X:よけいなこと発信しやがってと思うかもな
B:別荘を特定されてなければ、よかったんだけどね
X:Zはいつ裁判記録を閲覧しにいくんだ
B:裁判記録の閲覧は、Yに頼むっていってたよ
X:あのバカ、慣れてるからな、さてとそろそろ寝るわ、おやすみ
B:おやすみ

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「もう、そんな時間か」、声をかけられた男が振り返っていう。
「また、まとめ屋のサイト見てたんですか」、声をかけた男がいう。
「競売に関する資料は裁判所で閲覧できるよな」、声をかけられた男がいう。
「できますが、最近はBITが多いようです」、声をかけた男がいう。
「BITって?」、声をかけられた男がいう。
「裁判所がネットで競売物件の情報を提供するシステムですよ」、声をかけた男がいう。
「どんな情報が提供されるんだ」、声をかけられた男がいう。
「物件概要や現地の状況を確認できるらしいです」、声をかけた男がいう。
「競売にかけられた理由も確認できるのか」、声をかけられた男がいう。
「理由までは確認できないと思います」、声をかけた男がいう。
「だろうな、あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

裁判所では、抵当権や判決などに基づいて、債務者などの不動産を強制的に売却し、この売却代金を債務の支払に充てる手続を行っており、その際に裁判所から売りに出される物件が競売物件となる。
BIT(Broadcast Information of Tri-set system)は、インターネットを利用して不動産競売物件に関する情報を入手できるシステムで、売りに出されている競売物件に関する情報(三点セット)、競売に関する過去のデータ、売却のスケジュールなどを確認することができる。三点セットは、①物件明細書(物件の権利関係などを記載した書類)、②現況調査報告書(物件の現在の状況を記載した書類)、③評価書(物件の周辺環境や評価額などを記載した書類)をいう。
「予告犯」筒井哲也氏より
-------------------------------------------------------
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ネットの誹謗中傷をなくすにはどうしたらよいかをテーマに書いています。
誹謗中傷された場合の法的手続きですが、費用対効果は決してよいとはいえません。
また、相手から虚偽告訴罪で訴えられる可能性もあります。
誹謗中傷されたら、やり返さずに弁護士に相談されることをオススメします。
相談すれば、どのような罪に問えるかなど、アドバイスしてもらえることが多いです。
「まとめ屋」の方法はリーガルチェックを受けていないため、行わないでくださいw

0 件のコメント:

コメントを投稿