2021年12月26日日曜日

銘柄を明かさない理由R422 天狗の降臨(前編)

第422話 天狗の降臨(前編)

歴代最年少の13歳で「本間の荒行」を成し遂げた宗矩は、中学校を首席で卒業した。
地元の難関進学高校に入学した宗矩は、卒業まで首席を維持し続けた。
肩まで伸びた黒髪と端正な顔立ちの宗矩はスリムだったが、身体能力は優れていた。
女子生徒からの人気は高かったが、特定の相手と交際することはなかった。

難関進学高校を卒業した宗矩は、地元を離れ、都内の難関大学へ入学した。
入学した宗矩は、同い年で大阪出身の丑田晃一(うしだこういち)と出会う。
晃一は宗矩と異なり、短髪の体育会系だったが、2人はすぐに意気投合した。
やがて、宗矩は、晃一大坂堂島の相場師だった牛田権三郎の一族であることを知った。

その昔、大坂堂島の米相場で名を上げた本間宗久と牛田権三郎。
長き時を経て、それぞれの子孫である本間宗矩と丑田晃一は盟友となった。
「いてもたろうや、宗やん」、「やるか、晃一」、宗矩の部屋で2人は決めた。
稀代の相場師を先祖に持つ宗矩と晃一が、株式投資を行うのは必然ともいえる流れだった。

相場の分析には、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析がある。
テクニカル分析は、株価の推移であるチャートから、今後の株価動向を予測する。
テクニカル分析には、分析で予測精度を上げられるメリットがあった。
現代っ子の2人が着手したのが、自動売買システムの作成だった。

宗矩のテクニカル分析に基づき、晃一が売買プログラムを組んでいった。
着手してから半年後、自動売買システムの初号機が完成した。
「お待たせ~できたで、宗やん」、「早速、試運転するぞ、晃一」
翌日、初号機は市場平均より高いリターンをたたき出した。

「全然あかんな、改良するわ、宗やん」、「だな、晃一」
初号機のリターンは市場平均より高かったが、2人の期待よりは下だった。
「ファンダメンタルズの要素も取り入れた方がええんかな、宗やん」
「テクニカルファンダメンタルズは必要ないよ、晃一」

二号機、三号機、四号機・・・、試運転と改良が繰り返された。
「だいぶ、予測精度が上がってきたで、宗やん」
ファンダメンタルズは必要ないといったろ、晃一」
初号機の試運転から、さらに半年後、十号機が出来上がった。

「たぶん、これで大丈夫や、宗やん」、「期待しているよ、晃一」
取引開始時間に合わせて、十号機が稼働し始めた。
十号機のモニターにTransaction closed(取引成立)」が立て続けに表示された。
十号機は、市場平均の倍以上のリターンをたたき出した。

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