第420話 酒田の五法(中編)
本間宗久(ほんまそうきゅう)は、出羽庄内(山形県酒田市)出身の江戸時代の米商人。
酒田、大坂、江戸での米の商いで、莫大な富を得たとされる。
後に、米沢藩の上杉鷹山を補佐した酒田の豪商だった本間光丘は甥にあたる。
宗久は、大坂堂島の相場師だった牛田権三郎と並び称される稀代の相場師だった。
宗久は酒田罫線法を考案したが、ローソク足の考案者であるともいわれている。
ローソク足は、相場の値動きを時系列に沿って、グラフとして表す手法の一つ。
現在、世界中のヘッジファンドや個人投資家が、ローソク足チャートを利用している。
宗久が考案した酒田罫線法も、株式相場や商品先物相場などで活用されている。
堂島(大阪)、蔵前(東京)の米会所は、全国の米が集まる先駆的な先物市場だった。
米会所では、後のチャールズ・ダウに引けを取らない、テクニカル分析が行われていた。
宗久が考案した酒田罫線法は、「酒田五法」として知られている。
「酒田五法」は、ローソク足の組み合わせによって売り時や買い時を読む、五つの法則。
「酒田五法」のローソク足の組み合わせには、以下がある。
上昇から下落するパターンが三度続き、天井としてみなされる「三山(さんざん)」。
下落から上昇のパターンが三度続き、大底としてみなされる「三川(さんせん)」。
急騰後の大きな下落を三川宵の明星、急落後に反発した後の急騰が三川明けの明星となる。
ローソク足チャートが、三度続いて窓を開けることが「三空(さんくう)」。
上昇時の三空は三空踏み上げ、下落時の三空は三空叩き込みと呼ばれている。
三日連続で上昇や下落が続くことが「三兵(さんぺい)」。
上昇が三日連続ならば赤三兵、下落が三日連続ならば黒三兵と呼ばれている。
重要なのは、連続の傾向より値動きの幅や前日終値との比較になる。
前日の終値よりも高い始値で、赤三兵となれば、極めて強い上昇傾向と見ることができる。
短期間に上昇と下落を繰り返す場合、売り買いが交錯して方向性が定まらない。
このような方向性が定まらない状態が「三法(さんぽう)」。
宗久が考案した「酒田五法」は、本間本家の家訓とされた。
本間本家の跡取りは、十八歳の冬に「本間の荒行」を行う必要があった。
「三山」、「三川」、「三空」、「三兵」、「三法」、「これ、酒田の五法なり」。
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