2026年5月29日金曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP33 防衛の最前線

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。

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EP33 防衛の最前線

セダンが向かう先には、東京中央技術大学病院があった。
敷地面積 約66,200㎡、延床面積 約145,900㎡。病床数 863床の最先端の病院。
中心となる中央棟と、付随する施設で構成されている。
敷地内には以下の主要な施設があった。

・中央棟:地上16階、地下3階。延床面積: 約72,000㎡。
・外来棟:地上5階、地下2階。延床面積: 約10,500㎡。
・研究所:複数の棟で構成。延床面積: 約11,300㎡。
これらの他に、研修棟、データセンター専用棟、放射線治療棟などが点在していた。

敷地の周囲はフェンスで囲われており、正門や搬入口には警備員の詰所がある。
敷地内には、至る所に監視カメラや赤外線センサーが設置されている。
最もセキュリティが厳しいのは、YUKIの本体があるデータセンター専用棟。
データセンター専用棟には電波検知システムがあり、ジャミング(電波妨害)している。

ジャミングは、データセンター専用棟を中心に半径 1km、高度500mまでカバーしている。
もし、ドローンがジャミングの圏内に入れば、即座に墜落することになる。
先日、都内の病院がシステムダウンする中、東京中央技術大学病院は無事だった。
無事だったのは、高度なセキュリティで守られているデジタルの要塞のためだった。

セダンは一般外来駐車場の入口を通り過ぎ、地下駐車場への入口から敷地に入った。
警備員詰所で停止、運転手が書類を見せると、先へ進むよういわれた。
地下へと続くスロープを下って、地下3階の駐車場に入った。
「公用車・救急車専用エリア」の表示がある区画に駐車した。

運転手がドアを開けて降り、神崎が座る側のドアを開けてくれた。
神崎が降りると、佐倉井が横に来て、神崎にいう。
「そこのスタッフ専用ドアを開けると、受付があります。
名前を伝えていただくと、手配済の病室への行き方を案内してくれます。

病室は中央棟10階の102号室です。隣の101号室にはM1がいます。
私たちは、先ほど教えていただいた内容を関係者に連絡してきます。
後で病室へ行きますので、それまでに食事をされたりして、休んでいてください」
神崎がわかったというと、佐倉井と運転手はセダンに乗り込み、駐車場の出口へ向かった。

セダンを見送った神崎は、スタッフ専用ドアを開け、受付に氏名を伝えた。
すぐに中から、警備員の男性が出てきて、病室への行き方をわかりやすく説明してくれた。
礼をいい、職員用通路を進むと、職員用エレベーターがあったので、乗り込んだ。
行先ボタンの10階を押すと、扉が閉まり、エレベーターが上昇した。

10階で停止して降りると、10階の職員用通路だった。
正面のドアを開けると、一般用の通路に出たので、102号室へ向かった。
102号室のドアは内側へ開いており、中に入ると、ドアを閉めた。
病室の中は、シティホテルのシングルルームのような作りになっていた。

窓からは、夕やみに沈んでいく他の棟や敷地を見下ろすことができた。
神崎が設計に関わったデータセンター専用棟は向かいにあった。
普段、YUKIとは自宅の書斎からやりとりしている。
YUKIのすぐ近くで過ごすのが初めての神崎は、データセンター専用棟を見ていた。

ドアがノックされ、神崎がドアを開けると、M1がいた。
「お久しぶりです。来られたようだったので、挨拶に来ました。
よろしかったら、下に食事しに行きませんか」、M1がいう。
「誘ってくれてありがとう。すぐ用意するから待っててくれるかな」、神崎がいう。

M1がわかりましたといってくれたので、支度をして、一緒に食事をしに行った。
地下1階にある食堂で、M1と食事をしながら、お互いの話をした。
M1は高柳といい、普段は会社勤めをしているが、副業でハッキングをしていた。
以前から、警察に頼まれては、ハッキングで捜査に協力しているらしい。

神崎が自分のことを話すと、高柳はかなり驚いてくれた。
てっきり、自分と同じようなことをしている人だと思っていたらしい。
神崎が書いた情報工学に関する書籍のタイトルを聞いた高柳がいった。
「その本、買って読みました。今でも大切にしています」

食事を終えてからも、高柳との話は終わらなかった。
高柳が聞いたことに、神崎が答えるという流れになった。
まるで、大学で質問してくる学生みたいだな。
普段、技術的なことを話せる相手がいないのかもしれない、神崎は思った。

やがて、2人を探していた佐倉井がやって来た。
佐倉井によると、ミッション前の準備に時間がかかっている。
そのため、明日の正午からミッションを開始する。
正午にデータセンター専用棟前に集合とのことだった。
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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