2026年5月27日水曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP31 見えてきた真相

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・雅(みやび)
国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。
・佐倉井(さくらい)
防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。

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EP31 見えてきた真相

身支度を済ませた神崎が玄関ドアを開けると、3人のスーツ姿の男がいた。
1人は自衛隊のコード名J1で、あとの2人は知らない顔だった。
「ご不在の間、この2人がご自宅を守りますので、鍵を預けていただけますか」、J1がいう。
神崎が1人の男に鍵を手渡すと、知らない2人は家の中に入っていった。

「近くに車を停めてますので、ついてきてください」、J1がいい、先に歩き出す。
自宅から100メートルほど離れた道路に、運転手が乗った白のセダンが停まっていた。
「さあ、どうぞ」、J1が後部座席のドアを開いたので、神崎は乗り込んだ。
神崎が乗り込むと、J1も続いて乗り込み、ドアを閉めた。

「出せ」、JIが運転席の男にいうと、セダンは走り出した。
「これから、YUKIの本体がある東京中央技術大学病院へお連れします。
厳重な警備体制がとられているので、ご安心いただけると思います。
病院に滞在していただき、ミッションを行っていただけますか」、J1が神崎にいう。

「それは構わんが、そろそろ真相を教えてくれないかね、佐倉井くん」、神崎がいう。
「お気づきでしたか、神崎先生」、コード名J1の佐倉井が笑みを浮かべていう。
「私は教え子の顔と名前は忘れない。会議室で一目で君だとわかったよ。
司会をしていた雅くんは、君と同期の美矢部くんだし、何があったんだ」、神崎がいう。

「今回の内容は、美矢部が説明した通りです。
都内全域を停電させないために、上条を逮捕、身柄を確保する必要があります。
ただ、その前に上条が保管している機密データを消去する必要があります。
今回、私が参加している理由には、上条と同期であることもあります」、佐倉井がいう。

「君や美矢部くん、上条は、歴代の教え子の中でも、一際、優秀だった」、神崎がいう。
「ありがとうございます。卒業後、美矢部と私は防衛省に入省しました。
上条は、米国IT企業のダーウィンスペースに入社しました。
ダーウィンスペースは防衛省の仕事もしているので、上条は取引先の社員でもありました。

しばらくして、上条が要注意人物として、マークされていると情報が入りました。
ダークウェブにある『ダークマップ』の管理人ということでした。
『ダークマップ』はユーザー投稿型の世界地図で、各都市の防犯情報を掲載しています。
犯行前の事前確認に使われたりしますが、捜査機関は罠を仕掛けるのに使っています。

今年になって、上条は公的機関や民間企業にウイルスメールを送りました。
警察は単独犯と見て、捜査を行っています。
ただ、上条は『ダークマップ』の管理人であり、闇の世界では知る人ぞ知る存在です。
我々は、組織的な犯行の可能性もあると考えています」、佐倉井がいう。

「『ダークマップ』には、どのような情報が掲載されているんだね」、神崎がいう。
「街中の防犯カメラの情報や、公的機関や金融機関の警備体制などが掲載されています。
あと、ハッカー向けのセキュリティ情報も掲載されています。
犯罪組織からすると、必要不可欠な地図かもしれません」、佐倉井がいう。

「『ダークマップ』を無くしてしまうことはできないのかね」、神崎がいう。
「無くしても、新たな『ダークマップ』ができるだけです。
そのため、各国の捜査機関は逃走経路や犯行計画の推測に利用しています」、佐倉井がいう。
セダンは料金所を通過、首都中央環状線に入った。

「上条の居場所がわかっているのに逮捕しない理由を教えてくれるかね」、神崎がいう。
「上条が保管している機密データが理由です。
詳しくはお教えできませんが、我が国の防衛システムに関するデータです。
『ダークマップ』と組み合わせれば、我が国にとって重大な脅威になります。

上条が都内全域を停電させれば、都内は大混乱になります。
混乱に乗じて、『ダークマップ』を使い、意に沿わない政府要人を排除することができます。
電力が復旧してから、防衛システムのデータを悪用すれば、我が国へ侵攻できます。
シミュレーションした結果、最短3週間で我が国は掌握されます」、佐倉井がいう。

「お話し中、失礼します。尾行車は2台。予定のルートでよろしいですか」、運転手がいう。
「尾行車の特徴は」、佐倉井がいうと運転手が答えた。
「1台は黒のセダンで後方約30メートル、1台は紺のセダンで後方約100メートル]
「検問している予定のルートで進め」、佐倉井がいうと運転手が「はい」といった。

「昨夜、T1が轢き逃げされ、M1が侵入者に拘束される事件がありました。
これらの事件を受けて、警察庁のK1が都内主要道路での検問を手配しました。
また、神崎先生を東京中央技術大学病院へ避難させることも決まりました。
その矢先に、ご自宅が被害に遭われたことになります」、佐倉井がいう。

神崎は、ようやく真相が見えてきた気がした。
上条は今回の事件でデジタルとアナログを使い分けている。
デジタルは特定される場所で使わず、アナログは防犯カメラを無効化していた。
防犯カメラを無効化できたのは『ダークマップ』があったからか…。
【ダークウェブ(Dark Web)】
Googleなどの通常検索エンジンでは見つからず、専用ブラウザ(Torなど)でのみアクセス可能な、匿名性の高いインターネット領域。通信の暗号化により、犯罪や不正取引の温床となっており、漏洩した個人情報、クレジットカード情報、違法薬物、ハッキングツールが販売されている。サイト閲覧だけでコンピュータウイルスに感染するリスクがある。

※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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