2026年5月22日金曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP26 Day4 -4日目-

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・雅(みやび)
国家サイバー統括室。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。コード名はM1。

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EP26 Day4 -4日目-

11月9日、大場玲を名乗る犯人の要求動画が放送された4日後。
各放送局は今回の事件を報道特別番組として放送していた。
犯人は、要求に従わない場合、都内の電力供給設備を使用不能にするとしていた。
都内の店舗では防災用品などが品薄になり、東京から一時的に避難する人も現れていた。

犯人が要求した期限が迫る中、ある局は都内の様子を取材、放送していた。
「それでは、都内の様子を見てみましょう」、司会者がいうと、画面が切り替わった。
「今、私は新橋駅前に来ています。通勤中の方にインタビューしたいと思います」
マイクを手にした男性リポーターの横にはスーツ姿の50代ほどの男性がいた。

「犯人はあと3日で各公的機関のトップを40歳以下にしろといってます。
これに対して、どんな風に考えてらっしゃいますか」、リポーターが男性に聞く。
「できるわけないでしょ。若いだけじゃ国は動かせないよ。
今の日本があるのは、我々や上の世代の方たちのおかげなんだよ」、男性がいう。

「犯人は、要求に従わない場合、都内の電力供給設備を使用不能にするといってます。
これに対して、どんな風に考えてらっしゃいますか」、リポーターが男性に聞く。
「日本でそんなことができるとは思えない。すでに警察は動いているだろうし。
万が一、停電しても、すぐに復旧するでしょ」、男性がいうと、画面が切り替わった。

「今、私は東京駅に来ています。新幹線乗車待ちの方にインタビューしたいと思います」
マイクを手にした女性リポーターの横には、幼い子どもを抱いた30代ほどの女性がいた。
「これから、どこへ向かわれるご予定ですか」、リポーターが女性に聞く。
「東北の実家に行く予定です」、女性がいう。

「都内の電気が使えなくなるかもとお考えなのでしょうか」、リポーターが女性に聞く。
「電気が止まるかもしれないので、主人から実家に行くようにいわれました」、女性がいう。
「ご主人もご実家に行かれるご予定なんでしょうか」、リポーターが女性に聞く。
「主人は仕事があるので、東京に残る予定です」、女性がいう。

Torブラウザに接続、いくつものサーバーを経由して辿り着くダークウェブ。
匿名性の高い領域では、漏洩した個人情報、クレジットカード情報が売買されている。
不正アクセスツールや違法薬物などの販売もされている。
ダークウェブの掲示板では、東京の停電を好機とする者たちの書き込みが進行していた。

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【停電万歳】金融機関襲撃スレ【城南エリア限定】

1: 名無しのハッカー
東京が真っ暗になる日、停電で警備会社のシステムは混線、警察の無線もパンク状態。防犯カメラも全滅。城南エリア(品川・大田区周辺)の地方銀行・信用金庫のATMバックヤードを狙う実動部隊を募集する。
【募集要項】
・募集人員:回収係 2名、見張り兼運転手 1名
・足(車かバイク、ナンバープレート偽装必須)を出せる奴は優遇
・破壊ツール(エンジンカッター、バール)持参できる奴も優遇
・報酬:回収した現金の40%をその場で山分け。残りは暗号資産で洗浄後に送金。
・テレグラムのシークレットチャット(ID:@dark_tokyo_shadow)で待つ。
・合言葉は「停電万歳」。急げ。
2: 名無しのハッカー
マジかよ、バールと軽トラあるから参加したい。テレグラム送る
3: 名無しのハッカー
警備会社の非常用バッテリーって数時間は持つんじゃないの?
4: 名無しのハッカー
>>3基地局の電波が死ねば、警備会社にアラートが飛ばない。飛んだとしても、大混乱で警察も警備会社もすぐには動けないよ。

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都内某所の暗闇に包まれた一室。
ノートパソコンのモニターだけが、男の顔を青白く照らしていた。
男が叩くキーボードの先にあるのは、暗号化された潜伏員(スリーパー)への通信ライン。画面に表示されているのは、業務連絡を装った冷徹な「報告書」だった。

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Subject:【進捗報告】プロジェクト・オセロ

ターゲットの防衛省市ヶ谷駐屯地の第1・第2予備電源の作動状況を監視中。
現時点でプロジェクト・オセロに変更なし。
東京23区全域の電力消失(ブラックアウト)を確認次第、行動せよ。
ブラックアウト後、防衛ネットワークはスタンドアロンの非常用システムへ即時移行。
これにより外部接続ログの監視人員が通常の15%まで低下すると推測される。
事前に仕込んだバックドア(Node-X)が起動するので、防衛省中央データサテライトへの侵入を開始。次期防衛通信人工衛星の「暗号鍵パラメータ」および次年度の「運用計画書」のサルベージ(抽出)を最優先とする。復電するまでに全痕跡を消去し、ログをダミーのパケット(中国/北米発を偽装)で上書きして離脱する。日本側はただのシステム障害およびランサムウェアの余波と誤認する。以上。

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【Tor(The Onion Router)】
通信経路を暗号化・多段中継して匿名性を確保する、フリーかつオープンソースの通信技術。IPアドレスなどの痕跡を隠してWeb閲覧や通信が可能になり、通常アクセスできない「.onion」サイト(ダークウェブ)の利用にも使用できる。通信は世界中のノードを経由するため、速度は遅くなる。
【ダークウェブ(Dark Web)】
Googleなどの通常検索エンジンでは見つからず、専用ブラウザ(Torなど)でのみアクセス可能な、匿名性の高いインターネット領域。通信の暗号化により、犯罪や不正取引の温床となっており、漏洩した個人情報、クレジットカード情報、違法薬物、ハッキングツールが販売されている。サイト閲覧だけでコンピュータウイルスに感染するリスクがある。
【テレグラム(Telegram)】
高い秘匿性とセキュリティを誇るロシア発祥のクラウド型インスタントメッセージアプリ。
【スタンドアロン(Stand-alone)】
他の機器やネットワークに接続せず、単独で機能や動作が完結している状態やシステム。
【バックドア(backdoor)】
本来の正規の認証プロセス(IDやパスワードなど)を回避し、システムやネットワークの内部へ秘密裏に侵入できる隠し通路(裏口)。
【パケット( packet)】
「小包」を意味する英語で、日本では、情報通信における伝送単位を指す。広義には、単にある程度の大きさの送受信データのかたまり。

※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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