2026年5月17日日曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP21 告げられた役割

【内容】
神崎教授とAIが事件を解決していくミステリー小説。始まりは複数の会社へ届いたランサムウェア(身代金要求型ウイルス)が仕込まれたメール。このメールが日本を危機に陥れるとは誰も予想していなかった。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・雅(みやび)
国家サイバー統括室。

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EP21 告げられた役割

4分割されたモニターの右下に、事件の概要が表示された。
・今年8月、複数の公的機関に対して、ランサムウェアを仕込んだメールが届いた。
・開封した機関は、データを外部へ送信され、システムを暗号化された。
・バックアップシステムにより、システムは復旧済。
・外部へ送信されたデータの中には、機密データが含まれている。

「モニターに表示されているのが、今回の事件の概要です。
問題は、機密データが外部へ送信されてしまったことです。
このデータを無効化するため、動いた結果、有効に活用することはできなくなりました。
ただ、このデータの存在を知られると、国際的に不利な立場になります」、雅がいう。

4分割されたモニターの右下に、男性の上半身画像と説明が表示された。
「ランサムウェアメールを送ってきたのは上条雷人 38歳 無職 独身。
神奈川県川崎市出身。東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒。
米国IT企業『ダーウィンスペース』日本法人の社員でしたが、1年前に自己都合退職。

『ダーウィンスペース』では、主に国内インフラのセキュリティシステム開発。
あと、我が国の防衛システムのプログラム開発にも関わっていました。
住所は神奈川県横浜市ですが、現在の生活拠点は東京都新宿区のマンションです。
生活拠点を確認してから、24時間体制で監視を続けています。

通信記録などから、他国と接触した形跡は確認されていません。
先日、上条は病院のシステムを使えなくし、要求動画を放送させました。
他国が上条が犯人であることを知った場合、接触してくる可能性があります。
接触に成功した場合、機密データが他国に渡る可能性があります」、雅がいう。

4分割されたモニターの右下に、解決策が表示された。
1.公的機関のサーバーログから、機密データが保存されたサーバーを特定。
2.サーバーに保存してある機密データを消去。
3.消去が終わり次第、上条を逮捕、身柄を確保。

「1から3を要求動画の期限、5日以内に行う必要があります。
公的機関に他国と通じている者がいるため、秘密裏に行う必要があります。
1と2を正式な手続きで進めると、期限内に終わらせることができません。
そのため、1と2は民間が勝手に行ったという形にする必要があります」、雅がいう。

4分割されたモニターの左下の参加者の内訳と人数が、内訳とコード名に変わった。
国家サイバー統括室:S1、S2、S3、法務省:H1、外務省:G1、防衛省:B1。
警察庁:K1、警視庁:K2、自衛隊:J1、東京都:T1、民間:M1、M2
佐藤のモニターにはK2が、神崎のモニターにはM2が、赤字で表示されていた。

「それぞれの役割について、ご説明させていただきます。
1はM1が行い、終わったらM2に知らせます。
2はM2が行い、終わったらK2に知らせます。
3はK1とK2が行い、J1とT1が必要に応じてサポートしてください。

H1、G1、B1は、彼らが罪に問われないようにしてください。
M1とM2以外は、特別なことをしていただく必要はありません。
出来る範囲で、M1とM2のサポートをしてください。
この後、詳細説明になりますが、ここまでで質問のある方はいますか」、雅がいう。

国家サイバー統括室以外の全員が挙手したので、雅がいう。
「モニターの参加者順に、コード名と質問をお願いします」
「H1です。この件はここにいるメンバー以外は知らないという認識でよろしいですか」
「はい、その認識で結構です」、雅がいう。

「G1です。この場以外で他のメンバーと会話してもよいのか」
「本件以外の内容であれば、お話ししていただいても構いません」、雅がいう。
「B1です。このメンバーに他国とかが接触してくる可能性はあるのか」
「はい、あります」、雅がいう。

「K1です。メンバーの身に危険が及ぶ可能性はあるのか」
「はい、あります。後でGPSが内蔵された筆記具をお渡しします」、雅がいう。
「K2です。M2からの連絡があった後、上には何と報告すればよいのでしょうか」
「それに関しては、後ほどM1、M2も交えて、打合せさせてください」、雅がいう。

「J1です。緊急の連絡をしたい場合、どこへ連絡すればよいのでしょうか」
「後でお渡しするカードカレンダーの印のついた日を繋げた番号が連絡先です」、雅がいう。
「T1です。たとえば拉致されたりといったこともあるのでしょうか」
「可能性はあります。その場合、GPSの情報を使って救助に向かう予定です」、雅がいう。

「M1です。後の打合せのときに質問します」
「わかりました」、雅がいう。
「M2です。M1と同じで、そのときに質問します」
「わかりました。では、詳細説明をさせていただきます」、雅がいう。
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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