2026年5月15日金曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP19 Day2 -2日目-

【内容】
神崎教授とAIが事件を解決していくミステリー小説。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。

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EP19 Day2 -2日目-

11月7日、大場玲を名乗る犯人の要求動画が放送された2日後。
各放送局は今回の事件を報道特別番組として放送していた。
犯人は、要求に従わない場合、都内の電力供給設備を使用不能にするとしていた。
ある局は、使用不能になった際の影響について、専門家の意見を聞いていた。

「犯人は、要求に従わない場合、都内の電力供給設備を使用不能にするといってます。
使用不能になった場合、どのような影響がありますか」、司会者がゲストに尋ねる。
「もし、都内の主要な電力供給設備が使用不能になれば、単なる一時的な停電にとどまらず、ブラックアウトが発生します」、電気工学の教授がいう。

「ブラックアウトとはどのような状態でしょうか」、司会者が聞く。
「東京の電力は網の目のようになっていますが、系統は分離されています。
そのため、使用不能になった系統は他の系統に影響を与えません。
ですが、全系統が使用不能になればブラックアウト、全域停電となります」、教授がいう。

「ブラックアウトになった場合、復旧するまで、どれくらいかかりますか」、司会者がいう。
「復旧には数週間から数ヶ月かかる可能性があります」、教授がいう。
「復旧するまでは電気が使えないってことですよね」、司会者が確認する。
「ブラックアウトになれば、東京の都市機能は完全に停止します」、教授がいう。

「具体的には、どのようなことが起こりますか」、司会者が聞く。
「信号機が停止、都内の主要交差点で大渋滞と事故が多発します。
鉄道、地下鉄は駅間や地下トンネル内で完全停止するでしょう。
エレベーターに多くの人が閉じ込められ、数百万人の帰宅困難者が街に溢れます。

消防や警察には救助要請が殺到し、パンクします。
携帯電話の基地局は数時間で動かなくなり、ネットも電話も繋がらなくなります。
東京証券取引所や銀行のオンラインシステムも停止します。
コンビニやスーパーではレジが動かず、販売できなくなります」、教授がいう。

「復旧するまで、その状態が続くってことですね」、司会者がいう。
「先ほど申し上げたのは、ブラックアウト発生当日に起こることです。
2日目からは、病院の非常用電源が切れたり、ビルやマンションが断水するなどします。
生きるために東京から脱出する人も出てくるでしょう」、教授がいう。

「つ、つまり、東京には人が住めなくなると…」、司会者がいう。
「住むことはできるでしょうが、自給自足のサバイバル生活になるでしょう。
治安も悪化するでしょうから、住むには相当の覚悟が必要になります」、教授がいう。
「私が思っていたより、かなり深刻な事態ですね…」、司会者がいう。

東京都千代田区の首相官邸。
犯人の要求動画が放送されてから、首相官邸には多くの人が出入りしていた。
政府関係者、報道関係者、地下にある内閣危機管理センターの関係者など。
最寄り駅で待ち合わせして来た神崎教授と佐藤波流は、20時前に正面玄関に着いた。

受付で氏名を告げた後、スマホなどのデジタル製品を預けさせられた。
金属探知機によるセキュリティチェックを受けると、胸にIDバッジを付けられた。
IDバッジを付けると、案内係の男性SPの後に続いて、エレベーターで地下へ降りた。
御影石とコンクリートで構成された、無機質で清潔な廊下を進んだ。

「内閣危機管理センター」のプレートがある重厚な防爆扉の前を通り過ぎた。
廊下の奥には、「電気室」や「機械管理室」のプレートがある扉があった。
それらの並びにある「倉庫」のプレートがある扉の前で案内役は止まった。
「ここから先は、お二人だけでお進みください」と言い残すと、その場から立ち去った。

神崎と佐藤は顔を見合わせ、神崎が倉庫の扉を開けた。
扉の奥には、天井と壁が白く床が黒の廊下が、奥の白い扉へと続いていた。
廊下の天井や壁、床の表面は平坦で、照明らしきものは見えないが、明るかった。
SF映画に出てきそうな空間だなと佐藤は思った。

神崎が廊下に入ったので、佐藤も後に続き、後ろ手に扉を閉めた。
20メートルほど進み、白い扉の手前で止まると、音もなく扉が開いた。
扉の奥は8帖ほどの小部屋になっており、1台の長テーブルが置かれていた。
神崎と佐藤が小部屋に入ると、どこからか声がした。

「生体認証クリア。筆記具、手帳、財布、キーホルダーをテーブルの上に置いてください。
これから入室していただきますが、発言がある場合、挙手して許可を求めてください。
許可なく発言された場合、強制的に退室させられます。
これから扉を開きますので、お入りください」、奥にある扉がゆっくりと開き始めた。
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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