2026年5月4日月曜日

【小説】神崎教授の事件簿:EP.6 整った基盤(A Solid Foundation)

※AI(人工知能)と作った小説です。
【タイトル】神崎教授の事件簿
【内容】神崎教授が会話の中にあるヒントから事件を解決していくミステリー小説。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち):元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき):神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI):神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・佐藤波流(さとうはる):警視庁 サイバー犯罪対策課。東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。
・上条雷人(かみじょうらいと):元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。東京中央技術大学 情報工学科2010年卒の神崎教授の教え子。サイバーテロを計画し実行する。

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神崎教授の事件簿:EP.6 整った基盤(A Solid Foundation)

2010年1月、東京中央技術大学 情報工学研究室。
多くのモニターやコンピュータ機器が設置された部屋の中。
テーブルを挟んで、神崎教授と上条雷人が話し合っていた。
「どうして、この論文がダメなんですか」、添削された卒業論文を手にした上条がいう。

「その論文は、君の社会に対する考えをまとめたものだ。
誤解しないで欲しいが、決して君の社会に対する考えを否定するわけじゃない。
だが、君がここで学んだことをまとめるのが卒業論文だ。
まだ時間はあるので、君が学んだことを私に教えて欲しい」、神崎がいう。

「ここで学んだことを、どう生かすかが大事だと思います。
訂正しますが、一個人としての先生の意見を聞かせてください」、上条がいう。
「さっきもいったように、決して君の考えを否定するわけじゃない」、神崎がいう。
「答えになっていません、答えてください」、上条がいう。

現在の東京都北区の住宅街にある神崎の自宅。
神崎は、YUKIに今までにわかっていることを入力した。
「私のデータベースにあるのは、上条くんの訂正前の卒業論文なのね。
私の他にも、訂正前の卒業論文はあるのかしら」、YUKIがいう。

「上条は持っているだろうが、他にあるかはわからない」、神崎がいう。
「現在、わかっていることを整理するわね。
複数の会社が、ランサムウェアでシステムを停止され、身代金を要求された。
身代金を要求した人物は大場玲で、上条くんの可能性がある、

同一人物である可能性がある判断基準は、上条くんの訂正前の卒業論文。
このことを知っているのは、上条くんとあなたと私だけの可能性がある」、YUKIがいう。
「判断基準となる卒業論文の箇所を見せてくれ」、神崎がいう。
YUKIのモニターに、卒業論文の該当箇所が表示された。

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題目:社会構造の動態的更新におけるオーバーレイ・ネットワークの応用考察
提出者:東京中央技術大学 情報工学科 上条 雷人

【第1章:序論 - 社会の停滞とOSとしての制度】
現在の日本社会において、経済・政治・文化の各層で新陳代謝が停止している原因は、人間という「ハードウェア」の老朽化ではない。その上で動作する社会制度という「OS(オペレーティングシステム)」が、20世紀後半の仕様のまま固定(フリーズ)されていることにある。既存のシステムは、既得権益という名の「デッドロック」を引き起こしており、正規のプロセス(選挙、改革等)ではもはや再起動は不可能である。

【第3章:オーバーレイによる「実体の消失」と再定義】
物理的な基盤(アンダーレイ)を破壊することなく、その上に仮想的な制御層(オーバーレイ)を構築することで、下位層の制限を無視した高度な通信・制御が可能となる。これを社会構造に置換するならば、旧態依然とした法的・倫理的システムを物理的に破壊するのではなく、その上位に「ITによる新たなルール層」を強制的に重ね書き(オーバーレイ)することで、旧世代の実体を無効化、あるいは「消失」させることが可能である。

【第6章:結論 - 世代交代の強制執行】
本研究の結論として、ITは単なる利便性の追求ツールではなく、社会の「強制アップデート」のためのトリガーであるべきだ。もし既存のシステムがバージョンアップを拒むのであれば、外部からの「非連続な介入」によって、強制的にプロセスをキル(Kill)し、新世代のコードへと書き換える必要がある。2010年現在のネットワーク帯域および計算資源では、この「社会の上書き」を瞬時に行うには限界があるが、今後10年で基盤が整えば、一個人が論理的な一撃を加えるだけで、社会の重力圏の入れ替え(世代交代)を実現することが可能になるだろう。

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「2010年から最も基盤が整ったものは何だ」、神崎がいう。
「最も基盤が整ったのは"暗号資産"でしょうね。
2008年に、サトシ・ナカモトがビットコインの論文を発表。
2009年に、論文に基づくオープンソースのソフトウェアが公開されたわ。

2010年に、ピザとビットコインの交換などで、初めて、価値が認識された。
2020年代になると、投機対象から金融資産への転換が進んでいるわ」、YUKIがいう。
「そのことが、今回の件にどう影響するんだ」、神崎がいう。
「手に入れた身代金をマネーロンダリングできるわ」、YUKIがいう。

「マネーロンダリングできたとしても、そもそも身代金を払わないだろ」、神崎がいう。
「多くの会社が恐れるのは二次被害よ。
システムを停止されたことで、脆弱なセキュリティの会社だと思われる。
預かっている個人情報が第三者の手に渡っていると思われる。

それらが会社の業績に与える影響は大きいわ。
そう考えると、身代金を払って、被害届を出さない会社もあるんじゃない」、YUKIがいう。
以前、神崎は佐藤に、身代金を払った会社はあるのかと聞いたことがあった。
佐藤の答えは「先生が思っているより、多いと思います」だった。

「大場玲が上条だとすると、なぜ撮影スタジオにビデオカメラを忘れたんだ」、神崎がいう。
「忘れたんじゃないわ、わざと置いていったのよ。
置いていくことで、警察は動画を撮影した人物が大場玲だとわかる。
大場玲は、"日本社会をオーバーレイする"というメッセージよ」、YUKIがいう。

「大場玲が上条だとすると、次に何をする」、神崎がいう。
「手に入れた身代金を使って、世代交代を実現することに使うでしょうね」、YUKIがいう。
「具体的にどういうことが考えられる」、神崎がいう。
「わからないけど、”見えないルート"を使う可能性が高いわ」、YUKIがいう。

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