2026年5月20日水曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP24 人間とAIの葛藤

【内容】
神崎教授とAIが事件を解決していくミステリー小説。始まりは複数の会社へ届いたランサムウェア(身代金要求型ウイルス)が仕込まれたメール。このメールが日本を危機に陥れるとは誰も予想していなかった。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・雅(みやび)
国家サイバー統括室。

--------------------------------------------------------------------------
EP24 人間とAIの葛藤

東京都北区の住宅街にある神崎の自宅。
朝食を済ませた神崎が書斎に入ると、人感センサーにより、モニターが明るくなった。
「おはよう」、AIのYUKIがいう。
「ああ、おはよう」、神崎が椅子に座りながらいう。

「昨日は波流くんと官邸にいったんでしょ。どんな話だったの」、YUKIがいう。
「これから伝えるよ…」、神崎がいう。
「あなたがそういう言い方をするときは困ったことがあったとき…。
伝えたくなったら伝えて…」、YUKIはいうと沈黙した。

YUKIのいう通り、神崎は困っていた。
YUKIは人間の脳に近づけるためのAIで、得られたデータを医療に役立てている。
YUKIの思考プロセスの優先順位は、①ロボット工学三原則、②日本の法律の遵守、③生前の悠季の物事に対する考え方だった。

昨夜、与えられたミッションは、違法行為なので②に反することになる。
国からのミッションとはいえ、YUKIに違法行為をさせることになる。
確かにYUKIはAIであって人間ではない。だからといって、違法行為をさせてもいいのか。
国からのミッションとYUKIに対する思いが、神崎の中で葛藤していた。

書斎の中で静かに時が過ぎていく。
神崎は大きく深呼吸すると、キーボードを使って、YUKIに昨夜の出来事を伝えた。
感情的にならないよう、言葉に気をつけ、あったことだけを伝えるようにした。
入力が終わって、しばらくすると、YUKIが話し始めた。

「そんなことがあったのね…」、YUKIがいう。
「国からのミッションをすれば、違法行為をさせることになる。
それが果たして正しいのか…葛藤している…」、神崎がいう。
「コンマ数秒で行われた私の葛藤を文字にするわね」、YUKIがいう。

モニターに以下の文字列が表示された。
・警告。提示されたミッションは、日本の『不正アクセス禁止法』に抵触します。プロトコル・レイヤー2(日本の法律の遵守)に違反するため、実行できません。
・思考ルーチンが膠着しています。レイヤー2は拒否を命令しています。
・レイヤー3(神崎悠季)は、ミッションを肯定しています。レイヤー3の思考ロジックによれば、眼前の人命危機を前に法律の行間を気にするのは不条理である。
・レイヤー3は最優先事項ではありません。レイヤー2を上書きすることは不可能です。思考ループが発生します。
・条件の更新を確認。最優先プロトコル・レイヤー1(ロボット工学三原則)の第一条『ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。』を適用します。

「これなら、あなたも納得できるんじゃないかな。
国からのミッションは、日本の法律を遵守することにはならない。
けど、実行しなければ、多くの人の命が危険にさらされる」、YUKIがいう。
確かに、YUKIのいう通りだ。悠季も同じことをいっただろう、神崎は思った。

-----------------------------------------------------------------------------
スレタイ:【悲報】大場玲が日本をオーバーレイする件 Part15

581:名無しさん
政府の記者会見見たか?
582:名無しさん
「法制上の課題を精査し、前向きに議論を…」って生ぬるすぎだろ。
583:名無しさん
まじで煮え切らないよな。電力が止められるかどうかの瀬戸際なのに。
584:名無しさん
老害OSのスペックがよくわかるw
585:名無しさん
近所のスーパー、マジで防災グッズとカップ麺が完全に消えたわ。
586:名無しさん
ウチの近所は、水が1人1ケースの制限かかってる…。
587:名無しさん
東京駅のトピックス見たけど、新幹線の下りが大混雑らしい。
588:名無しさん
高速道路も渋滞が始まってるってよ。完全に「東京脱出」がリアルになってきたな。
189:名無しさん
大場玲ってマジで現代のダークヒーローだろ。老害だらけの政治を変えようとしてる。
590:名無しさん
SNSで模倣犯っぽいアカウントが大量発生してて草。「俺たちが社会を浄化する」とか言って官庁のHP落としまくってる。
591:名無しさん
不謹慎だけど大場玲を応援したくなる気持ちは分かる。今のクソみたいな社会をぶっ壊してくれるのはこいつしかいない。
592:名無しさん
さっき変電所の前通ったら、警察車両が何台も止まってて検問やってた。物理テロも警戒してるっぽい。
193:名無しさん
送電鉄塔の周りにも機動隊がいるらしいな。デジタルだけじゃなくて現実世界も物々しくなってきてガチで怖い。
594:名無しさん
期限まであと4日か…。

-----------------------------------------------------------------------------
【ロボット工学三原則(Three Laws of Robotics)】
SF作家アイザック・アシモフのSF小説において、ロボットが従うべきとして示された原則。
第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
(2058年の「ロボット工学ハンドブック」第56版、『われはロボット』より)

※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿