2026年5月19日火曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP23 Day3 -3日目-

【内容】
神崎教授とAIが事件を解決していくミステリー小説。始まりは複数の会社へ届いたランサムウェア(身代金要求型ウイルス)が仕込まれたメール。このメールが日本を危機に陥れるとは誰も予想していなかった。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・雅(みやび)
国家サイバー統括室。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。コード名はM1。

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EP23 Day3 -3日目-

11月8日、大場玲を名乗る犯人の要求動画が放送された3日後。
各放送局は今回の事件を報道特別番組として放送していた。
犯人は、要求に従わない場合、都内の電力供給設備を使用不能にするとしていた。
都内の店舗では防災用品などが品薄になり、国や都は冷静な対応を呼びかけていた。

警視庁の資料室
佐藤は、華喜多美代子と上条の関係を調べていた。
華喜多美代子を検索すると、過去に任意の事情聴取を受けていた記録が見つかった。
事情聴取を受けたのは、2018年に起きた東京中央技術大学病院の治験者死亡事故だった。

2018年10月1日、東京中央技術大学病院の治験病棟に4人の治験者がいた。
23時に当時看護師だった華喜多が、輸液ポンプの点滴バッグを交換した。
翌朝、治験者の1人だった神崎悠季が亡くなっていた。
調査の結果、輸液ポンプの故障による過剰投薬が原因だとされた事故だった。

華喜多美代子の戸籍照会した記録が残っていたので、内容を確認した。
父親の華喜多隆と母親の華喜多美恵の一人娘で、兄弟姉妹はいなかった。
華喜多美恵の旧姓の畑中を見た瞬間、上条の母親の旧姓と同じであることに気づいた。
華喜多美恵の本籍と生年月日、婚姻日を手帳に控えると、資料室を後にした。

サイバー犯罪対策課に戻った佐藤は、上条の捜査資料を確認した。
間違いない、華喜多美代子と上条は、母親が同じ、異父兄妹だ。
畑中美恵の最初の結婚で生まれたのが上条雷人。
離婚して、二度目の結婚で生まれたのが華喜多美代子。

上条雷人と華喜多美代子は、別々の家庭で育てられたことになる。
異父兄妹なので、お互いの存在を知らなかった可能性がある。
お互いの存在を、いつ、どこで、どのような形で知ったのか。
なぜ、同居しているのか、ここに事件の鍵があるかもしれない、佐藤は思った。

東京都千代田区の秋葉原電気街。
体調不良を理由に会社を早退したコード名M1の高柳が歩いていた。
電気街の外れに、流行っているように見えない中古品の販売店があった。
店構えは古く、狭い店内には中古家電や電気機器が、雑多に並べられている。

高齢の店主1人だけなのを見た高柳は、ここにすることを決めた。
店に入り、中古の格安ノートパソコンを現金で購入した。
手書きの領収証を貰うと、ノートパソコンをカバンに入れて、店を出た。
店を出ると、少し離れた場所にあるネットカフェに入った。

無人受付のモニターで利用時間と個室をタップ、受付票を手に個室へ向かった。
個室に入ると、明かりをつけ、備え付けのデスクトップパソコンの電源を入れた。
起動すると、動画サイトにある無料の音楽番組を再生した。
事前準備完了、とっとと終わらせるか、高柳はカバンからノートパソコンを取り出した。

ノートパソコンを机の上に置くと、電源プラグをコンセントに差し込んだ。
スーツのポケットから取り出したUSBメモリを差し込んだ。
ファンクションキーを押しながら、電源ボタンを入れた。
選択画面でUSBメモリを選択すると、USBメモリのOSが起動した。

起動した画面の中にある、白い馬のショートカットアイコンをクリックした。
画面全体が白くなり、上部には青字で「Welcome to Pegasus」とあった。
中央には、擬人化された青い目をした白い天馬が二本足で立って腕組みしていた。
高柳は天馬の下にある「Start」ボタンをクリックした。

数分後、画面の上半分が世界地図に、下半分がIPアドレスなどの入力画面になった。
世界地図の日本を拡大、東京を拡大して、防衛省のピンをクリックした。
クリックすると、下の「目的地」に、防衛省のIPアドレスが自動で反映された。
「経由地」には、東欧、中東、南米にあるサーバーのIPアドレスを反映させた。

行け、ペガサス、高柳は一番下にある「Start」ボタンをクリックした。
数分後、防衛省のサーバーに接続すると、与えられたミッションをこなし始めた。
ミッションが終わったときには、入店してから、1時間が過ぎていた。
思いのほか時間がかかったな、高柳の額には汗が光っていた。

ノートパソコンをシャットダウンすると、USBメモリを抜いて、ポケットにしまった。
カバンの底から、細い針を取り出すと、モニターと本体を繋ぐヒンジに差し込んだ。
バックライト用の給電線だけをピンポイントで突いて断線させた。
ノートパソコンの電源を入れて、モニターが映らないことを確認した。

ネットカフェを出ると、ノートパソコンを買った店に行った。
電源は入るが、モニターが映らないので、返品したいと、店主に伝えた。
映らないことを確認した店主は返品に応じてくれ、代金を返してくれた。
自宅へ帰る途中の公園で、緊急連絡先に連絡し、ミッションの結果を報告した。
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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