銘柄を明かさない理由R374 侵掠すること火の如く(前編)
現代のアメリカ合衆国ニューヨーク州。
ブロードウェイのタイムズスクエア付近では、その周辺に劇場街が広がっている。
夕刻、タイムズスクエアの路上では、複数の男女が機材の設置を行っていた。
「そこじゃない、もっと後ろだ」、メガホンを持った監督の男性が指示を飛ばしていた。
指示された若い男性スタッフが、設置した機材を持ち上げた。
「いいか、今の位置から、正確に3歩下がった位置に設置しろ」
ゆっくりと3歩下がった若い男性スタッフは、機材を下ろした。
「下がり過ぎだ、半歩戻れ」、監督の男性が怒鳴った。
怒鳴られた若い男性スタッフは、慌てて機材を持ち上げると、半歩戻った。
「そうだ、その位置に設置しろ」、監督の男性がいった。
「いやはや、なんとも、大変ですな」、監督の男性の背後から声がした。
「あんたは誰だ」、監督の男性は振り返ると、恰幅のいい白人男性にいった。
「"Nine dragon eyes(ナインドラゴンアイズ)"に出演する俳優のマネージャーです」
「なんだ、関係者か、これだけ大規模な宣伝をするからには、成功間違いなしだな」
「ありがとうございます、なにとぞ、よろしくお願いいたします」
"仮面の相場師"こと、アンザイ カズマのマネージャー、エリックは深々と頭を下げた。
夜になると、舞台"Nine dragon eyes"の宣伝イベントが始まった。
多くの人々が、タイムズスクエアに設置された特設ステージの周りに集まっていた。
周辺では、騎馬警官を含む、多くの警官が警備にあたっていた。
報道機関も取材に訪れており、特設ステージの前には、多くのテレビカメラが並んでいた。
ライトアップされた特設ステージに、出演する舞台俳優たちが次々と姿を現し始めた。
日系2世の米国軍人役であるアンザイ カズマも、舞台衣装の軍服姿で現れた。
全員が揃うと、マイクを手にした司会のリンダが、舞台俳優と役名の紹介を始めた。
紹介が終わるたびに、詰めかけた多くの人々から拍手が起こった。
全員の紹介が終わると、人気司会者であるリンダが、にっこりとほほ笑んでいった。
「お待たせしました、それでは、"Nine dragon eyes"、プロモーション動画の公開です」
リンダがいった瞬間、特設ステージのライトアップ、周辺の建物の明かりが消えた。
驚くことに、街路灯や信号機、ネオン看板までもが消され、周辺一帯は闇に包まれた。
次の瞬間、特設ステージの背後の建物に、プロジェクションマッピングが投影された。
複数の場所に設置された大型スピーカーから、男性ナレーターの重厚な声がした。
「1945年5月8日、第二次世界大戦でドイツは無条件降伏した・・・」
当時のニュース映像が流れる中、男性ナレーターによる舞台の説明が始まった。
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