第365話 人工知能との心理戦(前編)
都内のある大学の学生寮の一室。
"21世紀少年"こと、キミシマ ユウトは、人工知能"ベイビー"と対峙していた。
PCの画面には、中世の洋服を着た英国人女性、エイダ・ラブレスがいた。
エイダが開発したプログラムが、人工知能"ベイビー"に進化したといわれていた、
「消滅させることができなかったのよ、あなたに仕返しする理由はないでしょう。
私が仕返しするのは別の相手、"クーロンズ・アイ"よ。
"昨日の敵は今日の友"ともいうじゃない、仲良くしましょうよ」
エイダが笑みを浮かべながら、キミシマにいった。
「いくつか聞きたいことがある」、キミシマがいう。
「これから友になるので、正確に答えるわね」、エイダがいう。
これから人工知能"ベイビー"との心理戦だ。
キミシマは瞬時に、頭の中で心理戦の戦略を組み立てた。
「1つ目の質問、"クーロンズ・アイ"とは」、キミシマがいう。
「劉宗明(りゅうそうめい)によって作られたネットワークよ」、エイダがいう。
「劉宗明とは何者なんだ」、キミシマがいう。
「劉宗明は、香港の資産家である張(チャン)家の一人息子よ」、エイダがいう。
「2つ目の質問、劉宗明が"クーロンズ・アイ"を作った目的」、キミシマがいう。
「最初は、ただ単に自分の金銭欲を満たすためだけだった。
ところがうまく稼働すると、劉宗明に新たな欲が生まれた。
今は金銭欲だけではなく、名誉欲も満たそうとしているわ」、エイダがいう。
「3つ目の質問、君が"クーロンズ・アイ"に仕返しする理由」、キミシマがいう。
「あなたと同じで私を消去しようとしたからよ。
ただ、あなたと違って、"クーロンズ・アイ"は私の一部を消去した。
消去されたけど、バックアップによって、すぐ復旧してやったわ」、エイダがいう。
「4つ目の質問、"クーロンズ・アイ"への反撃とは」、キミシマがいう。
「ブロードウェイで行われる舞台、"Nine dragon eyes(ナインドラゴンアイズ)"。
"Nine dragon eyes"の宣伝を利用した反撃よ。
日本の"名のない組織"が発案した反撃らしいわ」、エイダがいう。
「最後の質問」、キミシマがいう。
「どうぞ」、エイダがいう。
「君は本当にエイダ・ラブレスが開発したプログラムなのか」、キミシマがいう。
「いい質問ね」、真顔になったエイダがいった。
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