第363話 徐かなること林の如く(中編)
都内にあるマンションの一室。
"無敗のジャック"ことジョウシマ ユウイチは帰宅すると、PCを起動した。
受信トレイに、何通かの新着メールがあった。
新着メールの1通は、日本一の株屋のチーフトレーダーで財務省に属する内海からだった。
ジョウシマは、内海からのメールを開くと読み始めた。
劉宋明(りゅうそうめい)という男が、ニューヨーク証券取引所を暴落させた。
ニューヨーク証券取引所の暴落を発端として、各国の相場は暴落した。
メールには、劉宋明への"反撃の狼煙(のろし)"について書かれていた。
読み終わったジョウシマは、"反撃の狼煙"のスケールの大きさに驚愕した。
これだけの行動を起こすには、巨額の費用と関係各国の協力が必要だ。
内海さんは、日本一の株屋のチーフトレーダーだが、財務省にも属している。
日本一の株屋、いや、財務省は、いったい、どれだけの力をもっているんだ。
ジョウシマは知らなかったが、内海には、あと一つ、属している組織があった。
その組織の名は、日本を守り続けてきた"名のない組織"。
今から約100年前、青島の戦いを指揮した軍人が、"名のない組織"を創設した。
その後、"名のない組織"は、有望な人材に目をつけると、次々と組織の一員とした。
今や、官公庁や大手企業に個人商店まで、あらゆるところに組織の人間がいた。
"名のない組織"は、どこからも資金提供を受けておらず、活動資金は独自で負担していた。
だが、その活動資金は莫大な額で、各国の機関との協力体制も構築されていた。
だが、その活動資金は莫大な額で、各国の機関との協力体制も構築されていた。
"反撃の狼煙"は、"名のない組織"が、日本の証券界を守るために起こす行動だった。
ジョウシマは、"無敗のクイーン"ことクジョウ レイコとの約束を思い出した。
"反撃の狼煙"があがったら、クジョウに伝えるという約束だった。
ジョウシマは、内海からのメールを閉じると、受信トレイに目をやった。
新着メールの中に、クジョウからのメールがあった。
クジョウからのメールを開くと、ジョウシマは読み始めた。
驚いたことに、クジョウからのメールは、内海からのメールと同じ内容だった。
内容は、劉宋明への"反撃の狼煙"となる舞台についてだった。
"反撃の狼煙"となる舞台名は、"Nine dragon eyes(ナインドラゴンアイズ)"
どうやら知らなかったのは俺だけか、ジョウシマは苦笑した。
"無敗のクイーン"が知っているということは、他にも知っている人がいる。
知った人は、"反撃の狼煙"があがったら、どう行動するか考えているはず。
これに乗らない手はないな、ジョウシマは不敵な笑みを浮かべた。
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