2020年12月22日火曜日

銘柄を明かさない理由R371 "ベイビー"を作った男(前編)

銘柄を明かさない理由R371 "ベイビー"を作った男(前編)

1975年、アメリカ証券取引委員会(SEC)の会議室。
スーツ姿の委員たちが待っていると、杖をついた老齢男性が現れた。
「ようやく、"地獄の番犬"となる"ベイビー"が生まれたようじゃな」
杖をついた老齢男性、ジェームズ・ランディスは不敵な笑みを浮かべ、委員たちにいった。

「ジェームズ様、お待ちしておりました。では、こちらへ」
スーツ姿の委員の1人、アダムスが隣の部屋へのドアを開いた。
アダムスに続いて部屋へ入ったジェームズは、巨大な機械を目にした。
「!!!」、ジェームズは声にならない声を発した。

隣の部屋には、膨大な数の真空管やブラウン管からできた漆黒の巨大な機械があった。
大部分の空間を占拠した巨大な機械は、絶え間なく光を点滅させていた。
「お待たせしました、ジェームズ様」
巨大な機械の陰から、1人の白衣を着たスリムな男性が現れた。

「こ、これが・・・"地獄の番犬"か」、ジェームズが白衣を着た男性に尋ねる。
「左様で、これが"地獄の番犬"となる"ベイビー"でございます。
ジェームズ様からのご用命を受け、長きにわたり、開発に取り組んでまいりました。
ようやく、お披露目することができ、光栄に存じます」、白衣を着た男性がいう。

「ジェームズ様に、性能をお見せしてくれ」、委員の1人であるアダムスがいう。
「御意(ぎょい)」、白衣を着た男性がいい、機械の端末を操作した。
端末を操作すると、巨大な機械の光の点滅が停止した。
数秒後、ブラウン管には、全銘柄の現在の株価と売買予定の株価と利益額が表示された。

ブラウン管の表示を確認した白衣を着た男性は、再び、機械の端末を操作した。
すると、巨大な機械の光の点滅が始まった。
ブラウン管に表示された銘柄の売買が、次から次へと約定し始めた。
わずか、数分後には、全銘柄の売買が終わっていた。

「"ベイビー"の全勝、"ベイビー"はウォール街を正しい方向へ導くことができます」
白衣を着た男性がいい、ジェームズは呆気にとられていた。
「ま、まさか、本当にこのような機械ができるとは思わなかった」
杖をついた老齢のジェームズがいう。

「全ては、"ベイビー"の開発を命じてくださった、あなたのおかげですよ」
白衣を着た男性が、ジェームズにいう。
「き、君の名は」、ジェームズが白衣を着た男性にいうと、白衣を着た男性がいった。
「ジョン・テンプルトンと申します、以降、お見知りおきを」

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