2022年1月30日日曜日

銘柄を明かさない理由R441 天狗の秘密(中編)

第441話 天狗の秘密(中編)

「これを渡すために上海から帰国したのか」、ジョウシマがいう。
「ネットは常に監視されてますからね、あと、別の件もあったので帰国しました。
あなたに会うため、店に顔を出していたら、日に日に店が忙しくなりました。
さすがに見るに見かねて、手伝っていたんですよ」、アマネがいう。

「なるほど、そういうことか、データありがとう、恩に着るよ、ところで別の件って」
店が忙しくなった原因は君だろうと思いながら、ジョウシマがいう。
「数年前、『テングッド』という株の自動売買システムが発売されました。
上海の投資家の間でも話題になったのですが、先月、バグが発覚、発売中止となりました。

システムにバグはつきものなのに、なぜ、修正しないのか、違和感を持ちました。
『テングッド』について調べたところ、オリジナルらしき存在を確認しました。
『テングッド』の特許出願後に、特許が出願されていた『天狗』です。
出願時期は後ですが、おそらく『天狗』がオリジナルだろうと考えました。

理由はわかりませんが、『天狗』は発売されておらず、市場にも出回っていません。
ただ、精度がどの程度なのか気になり、確認するつもりです」、アマネがいう。
確か、『天狗』の特許は、丑田晃一と本間宗矩の共同出願だったはず。
「どうやって精度を確認するんだ」、ジョウシマがいう。

「上海では、キサラギミレイという女性と一緒でした。
ミレイは、「無敗のキング」ことジツオウジコウゾウの門下生の1人です。
門下生の中には、21世紀少年と呼ばれていた天才プログラマーがいます。
彼に『天狗』の精度を確認してもらおうと考えています」、アマネがいう。

「その天才プログラマーは、どこで何をしているんだ」、ジョウシマがいう。
「大学卒業後も研究室に残り、金融工学の研究をしているそうです。
一緒に帰国したミレイが、すでに『天狗』の精度確認を依頼しています。
おそらく、今週中には精度の確認が終わると思います」、アマネがいう。

「どの程度の精度なのか知りたいな、結果を教えて貰えるかな」、ジョウシマがいう。
「承知しましたといいたいのですが、教えて欲しいことがあります」、アマネがいう。
「何を教えて欲しいんだ」、ジョウシマがいう。
天使のような笑みを浮かべると、アマネがいった。

ヨドヤタエの海外での不動産事業を調べている理由です。
先日から伊庭精機株がストップ安になるなど、激しい値動きの仕手戦になっています。
売り方は、『天狗』の特許出願者である丑田晃一の父親、『三猿の丑田』こと丑田春樹。
買い方は、『難波の女帝』ことヨドヤタエらしいですね」

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