第429話 素行調査(中編)
ジョウシマが社長から指示を受けた1時間後。
晃一が経営するコンサル会社の応接スペースには、晃一とジョウシマがいた。
俺の親父くらいの年齢か、どこにでもおりそうなタイプやな、晃一は思った。
思っていたより若いな、かなりのやり手かもしれないな、ジョウシマは思った。
「お忙しい中、ご足労いただき、ありがとうございます。
早速ですが、お願いしたいのは、この女性の素行調査です」
晃一が、ヨドヤタエの前回の調査報告書を、ジョウシマに渡しながらいう。
調査報告書を受け取ったジョウシマは、読み始めた。
「よく調べてありますよ、これ以上、何を調べるのですか」
調査報告書を一通り、読み終わったジョウシマがいう。
「いいにくいのですが、この女性の弱みを調べて欲しいのです」、晃一がいう。
「弱みとは」、ジョウシマがいう。
「詳しいことはいえないのですが、この女性は金には困っていない。
ですが、何かしらの弱みはあるはずなので、それを知りたいのです」、晃一がいう。
「弱みがあったとして、それを知ってどうされるのですか」、ジョウシマがいう。
「弱みを知ったとしても、問題になるようなことは致しません」、晃一がいう。
この女性は「難波の女帝」と呼ばれている相場師のヨドヤタエ。
確かに金には困っていないだろうが、弱みを知って、どうするつもりだ。
これからの相場に関係があるのかもしれない、ここは素直に引き受けるか。
「ご事情はわかりました、ご依頼の調査をお受けいたします」、ジョウシマがいった。
晃一からの調査依頼を引き受けた3日後。
ジョウシマは、ヨドヤタエの地元である難波で聞き込みを行っていた。
「叔母であるヨドヤタエの祝いの席で、友達からのサプライズを考えています。
親しかった友達とかをご存じでしたら、お教えいただけないでしょうか」
だが、地元でのヨドヤタエの評判はよくなかった。
「ヨドヤタエって、あの強欲なおばはんかいな、あのおばはんに友達なんておらんやろ」
「先代のときはまともやったけど、あの女が後を継いでから、おかしなったんや」
「バブルんとき、あの女に高値の土地を買わされて、破産した人やったら知ってるで」
もうこんな時間か、ホテルに戻って作戦を練り直すか。
ジョウシマはホテルへと歩き始めたが、背後に人の気配を感じたので振り返った。
「ヨドヤタエの友達をお探しのようですね、ご紹介させていただきますよ」
ジョウシマの背後にいたグレーのスーツ姿で銀縁眼鏡の細身の男がいった。
0 件のコメント:
コメントを投稿