2026年6月24日水曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP58 AIのヒューマンライクシンキング

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご)
東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。
・沢渡(さわたり)
警察庁の警備局 公安警察。
・岩田(いわた)、川瀬(かわせ)、坂下(さかした)、山本(やまもと)
警視庁 サイバー犯罪対策課。
・木下剣次(きのしたけんじ)
ペガサス電子の社員。

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EP58  AIのヒューマンライクシンキング

東京都新宿区の東京中央技術大学病院。
データセンター棟の管理室には、神崎、佐倉井、高柳の3人がいた。
管理室では、8台のAIによるイージス・ウェブ・オペレーションが行われていた。
YUKIを始めとする8台のAIは、都内全域の防犯カメラ映像の解析を行っていた。

3人のノートパソコンのチャット画面にYUKIからのメッセージが表示された。
「19時21分、大井競馬場周辺の防犯カメラ映像に木下確認。
競馬場の東から、もう1人の男と手錠をかけられ、連行されている模様。
連行している4人の男は、新宿のマンションにいた公安であることを確認。」

メッセージの下に、夜の歩道を連行されている木下の画像が表示された。
手錠をかけられている両手には上着がかけられていた。
木下の後ろには同じように手錠をかけられ上着がかけられている別の男がいた。
2人の周りを公安の4人が取り囲むようにして連行していた。

「木下と一緒に連行されている男は誰でしょうか。」、高柳がいう。
「木下と同じ諜報機関の仲間かもしれません。
海に向かった木下はこの男と合流、一緒にいたところを逮捕されたんだと思います。
木下が逮捕されたので、あとは上条だけですね。」、佐倉井がいう。

「おかしい…整合がとれない…。」、神崎がいう。
「神崎先生、何か気になることでも。」、佐倉井がいう。
「私たちは、上条と木下をリアルタイムで監視している。リアルタイムで監視できるのはここだけだ。なぜ、公安は木下の居場所を特定できたんだ。」、神崎がいう。

「確かに、我々以外から情報提供があったとしか考えられませんね。
その場合、最も情報提供した可能性が高いのは、上条ですね。」、佐倉井がいう。
「上条は大久保交番に木下の情報があるサイトのメモを残し、木下が逮捕された。
上条は目的を達成、大井競馬場から離れたのかもしれない。」、神崎がいう。

「これだけ時間が経っても、上条が見つからない説明もつきます。」、佐倉井がいう。
「出てきた人の中に上条がいなかったか、YUKIへの指示を頼む。」、神崎が高柳にいう。
「了解です。」、高柳はキーボードを叩いて、YUKIに指示を伝えた。
30秒ほどで、チャット画面にYUKIからのメッセージが表示された。

「16時45分から16時59分、大井競馬場周辺の防犯カメラ映像に上条確認。
白髪のかつらを外し、変装するためのメイクも落としている。
入場時に着ていたベージュのジャンパーは黒のジャンパーに変わっている。
駐車場側の門を出て、歩道橋を渡って、向かいにあるウィラ大井に入っている。」
メッセージの下に、門から出てくる画像、ウィラ大井に入る画像が表示された。

画像の下に、YUKIからのメッセージが表示された。
「17時53分から18時11分、大井競馬場周辺の防犯カメラ映像に上条確認。
ウィラ大井から出てきて東の方向へ徒歩で向かっている。」
メッセージの下に、ウィラ大井に出てくる画像、東に歩いていく画像が表示された。

「競馬場に入って、すぐ出てきてたんですね。」、高柳がいう。
「出てきた後、向かいのウィラ大井に1時間ほどいたことになります。
ウィラ大井から競馬場を監視していたのかもしれません。」、佐倉井がいう。
「AIの解析に見落としがあったんでしょうか。」、高柳がいう。

「見落としじゃない、AIのウラをかいた、つまりAIを騙したんだ。
AIは過去のデータから学び、予測した上で解析する。
過去のデータから、変装する可能性があることは予測できた。
だが、競馬場に入場して、すぐ出てくることは予測できなかった。」、神崎がいう。

「人間の思考を学べば学ぶほど、AIの思考は人間の思考に近づきます。
人間が騙されることに、AIも騙されるようになります。」、佐倉井がいう。
「今回の件で、YUKIたちは上条の新たな行動パターンを学んだ。
二度と同じ騙され方はしないだろう。」、神崎がいう。

チャット画面にYUKIからのメッセージが表示された。
「フォローしていただき、ありがとうございます。
でも、あまり私たちのハードル上げないでね。」
「げっ、聞かれてた…。」、高柳がいうと、笑いが起こった。

チャット画面にYUKIからのメッセージが表示された。
「東都テレビの報道特別番組に、速報のテロップを確認。
報道特別番組に切り替えます。」
ノートパソコンの画面に、放送中の報道特別番組が表示された。

画面の上部には【速報:犯人からの新たな動画】のテロップがあった。
スタジオでは、姿勢を低くしたADが司会者に原稿を手渡していた。
原稿を読んだ司会者は顔を上げると、青ざめた顔で視聴者に向かっていった。
「さ、先ほど、要求動画の犯人から新たな動画が届いたようです。」
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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