2026年6月14日日曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP48 幻影のプロトコル

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご)
東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。
・沢渡(さわたり)
警察庁の警備局 公安警察。
・岩田(いわた)、川瀬(かわせ)、坂下(さかした)、山本(やまもと)
警視庁 サイバー犯罪対策課。
・木下(きのした)
ペガサス電子の社員。

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EP48  幻影のプロトコル

東京都千代田区の警視庁。
サイバー犯罪対策室では、公安と捜査員たちがモニターで上条逮捕の動きを見ていた。
川瀬たちB班がジャミング照射を開始すると、映像が映らなくなった。
再び、映像が映ったときには、上条が逮捕されているはず、誰もがそう思っていた。

再び、映像が映ったが、そこには予想していなかった光景が映っていた。
公安の実働部隊が身につけているボディカメラの映像は同じ映像ではなかった。
あるカメラにはどこかの部屋の住人が映っており、聞き込みされていた。
別のカメラにはマンション内の通路が映っており、移動していることがわかった。

また別のカメラには、ワゴン車の中でスマホで通話している川瀬が映っていた。
「山本の意識はあるか!」、「救急車は呼んだか!」、「女はどの方向に逃げたんだ!」
矢継ぎ早に質問している川瀬の様子から、想定外の出来事があったことは明らかだった。
やがて、現場にいる公安からの連絡が入り始めた。

東京都新宿区の東京中央技術大学病院。
中央棟の地下1階にある食堂に、神崎と高柳がいた。
神崎は、時間を持て余している高柳から、情報工学の質問攻めにあっていた。
高柳は質問を手帳にまとめており、神崎の回答を聞きながらメモしていた。

「会社は大丈夫なのかい。」、神崎がメモしている高柳にいう。
「今週は有休にしたので大丈夫です。
会社よりは、こちらの方が大事ですからね。」、高柳がメモをしながらいう。
神崎は、上条が学生の頃、よく質問していたことを思い出した。

二人を探していたのか、佐倉井が食堂に現れた。
二人を見つけると、早足で近づいてきて、高柳の横に座り、声を潜めていう。
「先ほど、上条の監視班から連絡がありました。
K1とK2のミッションが失敗、上条は捜査員の拳銃を奪って逃走したそうです。」

東京都千代田区の警視庁。
庁内でも知る人の少ないオペレーションルームには5人のキャリア官僚がいた。
壁の大型モニターには、現場マンションとサイバー犯罪対策課の映像が流れていた。
サイバー犯罪対策課では、責任のなすり合いが始まっていた。

「失態の原因は対策課の誤った情報だ、華喜多美代子の部屋に上条はいなかった。
そのため、上条を取り逃がし、拳銃まで奪われたんだ。」、公安の男がいう。
「こちらの情報は、上条があのマンションを生活拠点にしているだ。
どの部屋にいるかまでは把握していなかった。」、対策課の岩田がいい返す。

警察庁から派遣された理事官が、卓上のマイクスタンドに口を近づけるといった。
「言い訳は必要ありません。一刻も早く、上条を確保してください。
拳銃を奪われた以上、極秘に捜査を進めるわけにはいきません。
公開捜査に切り替えて、記者会見を開いてください。」

理事官の指示を聞いた公安がサイバー犯罪対策課の捜査員たちにいう。
「我々の身内が、テロリストに拳銃を奪われた。これ以上の失態は警察の敗北を意味する。
全捜査員のプライドをかけて、必ず上条を逮捕しろ。
容疑者が抵抗した場合は、いかなる手段をとっても構わん。」

東京都新宿区の新宿遊歩道公園。
黒のロングコートを着た女性が遊歩道を歩いていた。
髪は長く、マスクにサングラス、手には茶色のバッグを持っていた。
公園内の公衆トイレに入ると、男性用の個室に入って扉を閉めた。

絶縁シートの内張りをしたポケットから、市販品を改造したスタンガンを取り出した。
スタンガンは電圧を高め、スイッチをオンにして、素手で触ると感電するようにしていた。
スタンガンをタンクの上に置くと、バッグから拳銃を取り出し、スタンガンの横に置いた。
バッグから男性用の服とスラックス、靴、白髪のかつらを取り出すと、着替え始めた。

着替え終わると、白髪頭のみすぼらしい身なりの男性になった。
スマホの画面をミラーにし、バッグから取り出した道具で年相応になるようメイクした。
バッグから折りたたんだ大きめの紙袋を取り出すと、広げた。
紙袋に、女性用のバッグ、服、パンプス、ウィッグ、スタンガンと拳銃を入れた。

紙袋を持って個室を出ると、手を洗いながら、壁の鏡を見た。
鏡には、どこにでもいそうな50代男性がいた。
我ながら、いい出来だ、上条は口元にかすかな笑みを浮かべた。
公衆トイレを出た上条は、待ち合わせ場所へ向かって、歩き出した。

待ち合わせ場所のベンチへ行くと、相手はすでに来ており、座っていた。
上条はベンチに紙袋を置いて、相手の横に座った。
「見事な変装(オーバーレイ)ですね。紙袋はこちらで処分しておきます。
あとは例の場所に向かってください。」、相手であるペガサス電子の木下がいう。
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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