2026年6月7日日曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP42 要塞からの反撃

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご)
東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。

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EP42   要塞からの反撃

東京都を単体の行政区として海外の都市と比較した場合、世界のトップ10に入る。
単体行政区の世界人口ランキングでは、東京都の人口(約1,433万人)は6位になる。
東京都の年間総電力消費量は約762億 kWh。
1人当たりの年間電力消費量は5,318 kWhだが、公共交通などの消費量も含まれている。

東京都が消費する電力の大部分は都外で作られている。
都外で作った電力は長い送電線と巨大な変電所のネットワークで守られている。
東京の電力の大部分は以下の発電所で作られている。
千葉や神奈川の湾岸にある火力発電所と、新潟や群馬の原子力・水力発電所。

送られてくる電力は、エリア内にある約1,600カ所の変電所で段階的に下げられる。
このうち、東京を包囲するようにあるのが約10か所の「外郭変電所」。
発電所から届く超高圧の電気を最初に受け止める変電所で、以下になる。
新所沢変電所、新京葉変電所、新坂戸変電所、新野田変電所、新鶴見変電所など。

「外郭変電所」で下げられた電力は、都心の地下にある「基幹変電所」に送られる。
「基幹変電所」は、23区の各エリアに細かく配るため変電所で、都心の心臓部になる。
土地がないため、地上は別の建物(寺、公園、ビルなど)にカモフラージュされている。
 「基幹変電所」の一つが、地上が指令室のある建物になっている代々木変電所だった。

東京都渋谷区の代々木変電所。
地下に代々木変電所がある建物は、遠くから見ると普通のオフィスビルだった、
だが、近づくと、周囲を囲む防護壁と、ゲートに常駐する警備車両が確認できる。
この建物は4階に指令室があることもあり、要塞化されていた。

建物前に停まったセダンから降りた佐倉井、神崎、高柳は正面玄関に向かった。
玄関の風除室を抜けて、金属探知機とX線による手荷物検査を受けた。
胸にIDバッジをつけてもらうと、正面ロビーの奥へ向かった。
奥には頑丈なステンレス扉があり、特殊警棒を持った警備員が2人、立っていた。

佐倉井がステンレス扉の横にある認証システムに右手のひらをかざす。
静脈認証と同時に、赤のライトが緑に変わって、ステンレス扉が音もなく開いた。
扉の奥は、指令室のある4階への直通エレベーターホールになっていた。
佐倉井がエレベーターボタンを押すと、到着音がして、扉が開いた。

4階に到着して扉が開くと、エレベーターホールに3人の男がいた。
3人は代々木変電所の系統運用センター長、送電技術部長、工務センター長だった。
それぞれが簡単な自己紹介を終えると、指令室へ向かった。
指令室へ入る扉の横にも静脈認証があり、佐倉井が右手をかざして、中に入った。

指令室の正面の壁に、都内の電力網の系統図が映し出されていた。
電力の流れでいる緑や青の細い光の線が、途切れることなく流れていた。
系統図の手前には、何十台もの液晶モニターが並ぶ湾曲したデスクがあった。
デスクには、インカムを装着した管制官たちが座っていた。

指令室の中にある会議室で、6人による打ち合わせが行われた。
打合せが終わって、会議室を出ると、高柳のためのデスクが準備された。
神崎がデスクの端末と持ち込んだノートパソコンをケーブルで接続した。
高柳が椅子に座り、ポケットから取り出したUSBメモリを差し込んだ。

モニターを開くと、ファンクションキーを押したまま、電源を入れた。
選択画面でUSBメモリを選択すると、USBメモリのOSが起動した。
起動した画面の中にある、白い馬のショートカットアイコンをクリックした。
画面全体が白くなり、上部には青字で「Welcome to Pegasus」とあった。

中央には、擬人化された青い目をした白い天馬が二本足で立って腕組みしていた。
高柳は天馬の下にある「Start」ボタンをクリックした。
数分後、画面の上半分が世界地図に、下半分がIPアドレスなどの入力画面になった。
世界地図の日本を拡大、東京を拡大して、この建物のピンをクリックした。

クリックすると、下の「目的地」に、建物のIPアドレスが自動で反映された。
「経由地」には、東欧、中東、南米にあるサーバーのIPアドレスを反映させた。
行け、ペガサス、高柳は一番下にある「Start」ボタンをクリックした。
数分後、建物のサーバーに接続すると、「Scan」ボタンをクリックした。

モニターにスキャン結果の一覧が表示された。
スキャン結果の中には、複数の『オムニサイト』があった。
高柳は、別画面を表示させると、変動する電気信号を送るプログラムを打ち込んだ。
行け、ペガサス、高柳は一番下にある「Start」ボタンをクリックした。

数分後、ペガサスの画面に青字で「Mission Complete」の文字が表示された。
傍に立って見ている人たちが、安堵していることがわかった。
「高柳さん、ありがとうございました。」、佐倉井がいう。
「さすがだね、高柳くん、次は私の番だな。」、神崎がいう。
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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