2026年6月29日月曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP63 ダークナイトの追跡者

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご)
東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業『ダーウィンスペース』日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。遠隔監視操作プログラム『OmniSight(オムニサイト)』を開発した。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。
・沢渡(さわたり)
警察庁の警備局 公安警察。
・岩田(いわた)、川瀬(かわせ)、坂下(さかした)、山本(やまもと)
警視庁 サイバー犯罪対策課。
・木下剣次(きのしたけんじ)
ペガサス電子の社員。『ギルド』の潜伏員(スリーパー)。

--------------------------------------------------------------------------
EP63  ダークナイトの追跡者

東京都新宿区の東京中央技術大学病院。
データセンター棟の管理室には、神崎、佐倉井、高柳の3人がいた。
管理室では、8台のAIによるイージス・ウェブ・オペレーションが行われていた。
YUKIを始めとする8台のAIは、都内全域の防犯カメラ映像の解析を行っていた。

3人のノートパソコンの画面には、最新のYUKIからのメッセージが表示されていた。
「21時18分から21時25分、品川駅高輪口周辺の防犯カメラ映像に上条確認。
品93系統の都営バスから下車、徒歩で北へ移動している。」
メッセージの下に、バスから降りている画像、歩いている2枚の画像が表示されていた。

「混んでたようですが、ナイター競馬が終わったからでしょうね。」、高柳がいう。
「この時間帯のバスに乗るつもりだったのかもしれません。」、佐倉井がいう。
「高柳くん、YUKIに上条の行き先を予測させてもらえるかな。」、神崎がいう。
「了解です。」、高柳がキーボードを叩いて、YUKIに指示した。

ノートパソコンのチャット画面に、YUKIの予測が表示された。
「21時30分時点の行き先と確率は以下。
1.芝公園:確率30%。
2.羽田空港 国際線ターミナル:確率20%。
3.山手線・京浜東北線:確率10%。」

「1は24時間出入りできますし、2は夜でも人が多い。
3は電車に乗り続けるとすると、どれもありそうですね。」、佐倉井がいう。
神崎が高柳を見ると、何かいいたそうな顔をしていた。
「高柳くんも同じ意見かね。」、神崎がいう。

「どれも違うと思います。ハッカーならこれらの場所は避けます。
ハッキングする場所には、いくつかの必要条件があります。
これらの場所には、ハッキングに必要な条件が欠けています。」、高柳がいう。
「欠けているものは何だね。」、神崎がいう。

「欠けているのは、ハッキングに集中できる環境です。
これらの場所でのハッキングは、常に人の目を気にしなくてはいけません。
私なら、これらの場所は真っ先に対象から外します。」、高柳がいう。
「高柳くんが、上条の立場なら、どこへ行くんだね。」、神崎がいう。

「私が上条の立場なら、係留されてる船舶がある場所に向かいます。
セキュリティシステムが設置されていない船舶に侵入、そこからハッキングを行います。
品川駅から移動する場合、品川浦や天王洲アイルが徒歩圏です。
オフィスビルが多く、比較的、通信環境が良好な天王洲アイルですね。」、高柳がいう。

「木下は、運河に停泊しているプレジャーボートにいました。
停泊している船舶を利用する可能性はありますね。」、佐倉井がいう。
「通常、犯人は事件現場から遠ざかろうとすることが多い。
あえて、事件現場近くに留まれば、盲点になるな。」、神崎がいう。

「午前0時までの時間を考えれば、時間的にも向かう可能性は高いです。
もし、そうなら、すぐに警察を向かわせないと間に合いません。」、佐倉井がいう。
「佐倉井くん、美矢部くんへの連絡をお願いできるかな。」、神崎がいう。
「わかりました。」、佐倉井がいい、キーボードを叩き始めた。

「あと、どうしてもわからないことがあります。
上条は品川で身代金要求動画を撮影、品川から企業へ送信しました。
今日も品川から動画を送っていますが、品川から送信する理由がわかりません。
ハッカーなら、特定のエリアから送信しないです。」、高柳がいう。

「『ダーウィンスペース』日本法人が品川にあるからじゃないでしょうか。
土地勘があることが理由じゃないでしょうか。」、佐倉井がいう。
「そこもわからないんですよね、品川だと知り合いに会う可能性が高いじゃないですか。
私が上条なら、品川は真っ先に対象から外します。」、高柳がいう。

確かに、高柳くんのいう通りで、佐倉井くんの理由は理由になっていない。
聡明な佐倉井くんにしては、今までにない発言だ。
もしかすると、佐倉井くんは、上条が品川にこだわる理由を知っているのか。
キーボードを叩いてる佐倉井を見ながら、神崎は思った。

東京都品川区。
ビルの2階にあるネットカフェ『アットスペース』品川店では、現場検証が行われていた。
品川警察署の鑑識が、上条が使った個室席などの指紋採取を行っていた。
くそっ、あと少しだったのに、鑑識作業を見ながら、佐藤は思った。

川瀬からの電話があって、5分もしないうちに、ビルの火災報知器が鳴り始めた。
ビルの中から出てくる人やスマホで撮影する通行人などで、通りは埋め尽くされた。
とても中に入れる状態ではなく、上条が出てくるのを待つことしかできなかった。
近くの駐車場に車を停めた公安や川瀬さんが来てくれても、待つことしかできなかった。

消防車が到着、消防士が中に入った。
しばらくしてから、出てきた消防士に聞くと、火災報知器の誤作動とのことだった。
公安の実働部隊がビル内を探したが、上条の姿はなかった。
上条が使った個室席には、手つかずのコーヒーカップだけが残されていた。

店内の防犯カメラ映像を確認すると、火災報知器が鳴り始めると非常口から出ていた。
非常口から出ると、非常階段を降りて、逃げたようだった。
偶然、火災報知器が誤作動したのなら、上条の悪運が強かったことになる。
鑑識作業が終わったら、故意に作動させていないか、パソコンを調べるつもりだった。

佐藤が鑑識作業を見ていると、店内に入ってきた川瀬が急ぎ足で近づいてきていう。
「これから天王洲アイルに向かうことになった。
上条が向かった可能性が高いらしい、行くぞ。」
佐藤は、急ぎ足で出ていこうとする川瀬の後を追った。
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿