2026年6月12日金曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP46 Day7 -7日目-

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご)
東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。
・沢渡(さわたり)
警察庁の警備局 公安警察。
・岩田(いわた)、川瀬(かわせ)、坂下(さかした)、山本(やまもと)
警視庁 サイバー犯罪対策課。

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EP46  Day7 -7日目-

11月12日、大場玲を名乗る犯人の要求動画が放送された7日後。
犯人の要求は、1週間以内に全ての公的機関のトップを40歳以下にすること。
従わない場合、都内の電力供給設備を使用不能にするとしていた。
東京は期限となる7日目の朝を迎えていた。

東京都新宿区。
コインパーキングの駐車場には、白のワゴン車が停まっていた。
一見すると、どこにもありそうな車種だが、後部の窓にはスモークが貼られていた。
後部には、複数のノートパソコン、無線機、広帯域電波妨害装置などの機材があった。

ワゴン車には、サイバー犯罪対策課の川瀬、坂下、佐藤、山本が乗っていた。
4名は上条を逮捕する公安の支援について、何度もシミュレーションをしていた。
公安から連絡があり次第、100メートルほど先にあるマンション前に移動する。
電力会社の作業員に扮した坂下と山本が、マンションの管理人室へ行く。

電気設備室の鍵を預かり、マンションのインターネット回線の電源をオフにする。
山本はワゴン車が駐車禁止違反にならないよう先に戻り、電源オフを伝える。
川瀬と佐藤が、ワゴン車内からジャミングを照射、公安に合図する。
マンション内で待機していた公安の実働部隊が、上条を逮捕する計画だった。

「通勤や通学で歩いている人も減ってきたな。」、運転席の坂下が窓の外を見ながらいう。
「そろそろ連絡がきそうですね。」、助手席の山本がいう。
坂下がダッシュボードに置いていたスマホが震えた。
坂下がスマホを取ってタップし「はい」といい、内容を聞くと通話を終えていう。

「マンションの管理人が出勤したそうです、今からマンション前に移動します。」
坂下はエンジンを始動すると、マンション前に向かった。
マンション前で停車すると、坂下と道具箱を持った山本が管理人室へ向かった。
エントランスに面した管理人室のシャッターを開けている高齢の管理人が見えた。

「おはようございます。東都電力です。定期点検に伺いました。」、坂下がいう。
「今日だったかな。」、シャッターを開けた管理人が振り返っていう。
「ええ、昨日、管理会社へは確認の連絡をさせてもらってます。」、坂下がいう。
「そうだったんだ、どこの点検をするんだね。」、管理人がいう。

「今日は電気設備室のブレーカーなどを点検します。」、坂下がいう。
「待ってて、鍵を持ってくるから。」、管理人がいい、管理人室へ入った。
鍵を持って出てきた管理人が坂下に鍵を手渡しながらいう。
「忙しいので立ち会えないけど、終わったら返しに来て。」

わかりましたと坂下がいい、山本と地下の電気設備室へ向かった。
昨夜のうちに管理会社からマンション内部の図面を入手、部屋の配置は記憶していた。
エントランス奥の非常階段から地下2階へ降りると、廊下に面して鉄扉が並んでいた。
一番奥の「電気設備室」の鉄扉の鍵を開けて、中に入った。

部屋の壁には、マンション全体の電気制御をする配電盤が並んでいた。
「共用部」の配電盤の中に「インターネット」と書かれたスイッチを見つけた。
スイッチをオフにした坂下が、先に戻るよう、山本にいう。
山本は、はいといい、道具箱を置いて、ワゴン車に向かった。

川瀬と佐藤は、ワゴン車の窓越しにエントランスを見ていた。
エントランスを出た山本がワゴン車に向かって歩いてきた。
ドアを開いて運転席に座った山本が小声でいう。
「インターネットの電源をオフにしました。」

「ジャミング照射開始。」、後部座席の川瀬が佐藤にいう。
「了解。」、佐藤がいい、黒の箱型の通信機能抑止装置のスイッチをオンにした。
スマホが圏外になったことを確認した山本はハザートランプのボタンを押した。
ジャミング照射中であることを知らせるハザードランプの点滅が始まった。

マンション内で待機している公安の実働部隊はワゴン車を見ている。
ジャミング開始と同時にハザードランプを点滅させることで打合せ済だった。
点滅と同時に1008号室へ向かい、上条を逮捕することになっていた。
もう部屋に向かっているんだろうな、佐藤は窓越しにマンションを見ながら思った。

エントランスから黒のロングコートを着た女性が出てきた。
髪は長く、マスクにサングラス、手には茶色のバッグを持っていた。
今から出勤なのか、と思いながら、佐藤は見ていた。
女性はワゴン車の横を通り、最寄り駅の方向へ歩き始めた。

佐藤が女性が歩いていく姿を見ていると、右側の細い路地に入るのが見えた。
あそこの路地の両側は住宅しかなく、通り抜けするだけの路地だったはず…。
そのとき、佐藤の頭の中に、上条の見えないルートを可視化した地図が浮かんだ。
あの路地を通れば、防犯カメラに映ることなく移動できる…まさか…上条…。
【ジャミング(Jamming)】
レーダーや無線通信などの電波に対して、意図的に妨害電波を発信して通信を乱したり遮断したりする行為や技術。
【通信機能抑止装置】
無線通信を通信妨害するための無線設備。通信抑止装置、電波抑止装置などとも呼ばれる。特に携帯電話の通信をジャミングするための無線設備を指してこう呼ぶことが、ほとんどである。電波法令では特別業務の局の一種である携帯無線通信等を抑止する無線局という。

※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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