2026年6月15日月曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP49 最強の捜査体制

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご)
東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。
・沢渡(さわたり)
警察庁の警備局 公安警察。
・岩田(いわた)、川瀬(かわせ)、坂下(さかした)、山本(やまもと)
警視庁 サイバー犯罪対策課。
・木下(きのした)
ペガサス電子の社員。

--------------------------------------------------------------------------
EP49  最強の捜査体制

東京都千代田区の警視庁。
公開捜査に切り替わったため、警視庁の大会議室に捜査本部が立ち上がった。
大会議室に電話やノートパソコンなどが運び込まれ、100人以上の捜査員が集められた。
正面のホワイトボードには、上条の顔写真や奪われた拳銃の図面が貼ってあった。

通信指令室は、都内の全パトカーや警察官とやりとりしていた。
指令室:「警視庁から各局、警視庁から各局。9時30分に新宿で発生した拳銃強奪事件の件。現在、新宿駅周辺にて酷似する男の目撃情報あり。付近の各局は警戒を強めよ。」
機動捜査隊;「機捜211、了解。新宿駅東口スクランブル交差点付近、覆面(パトカー)にて緊密に遊撃(パトロール)中。現在、不審人物の視認なし、継続する。」

指令室:「本部了解。公安およびサイバー犯罪対策課からの情報によると、被疑者は女装したまま逃走している可能性あり。黒のロングコートにサングラス、マスクの歩行者に警戒せよ。なお、被疑者は拳銃以外にスタンガンを所持している模様。各自、いつでも実弾装填の拳銃を抜けるよう、ホックを外して臨戦態勢をとれ。」
新宿署:「新宿1、了解。署員12名、駅周辺の配備完了。」

記者会見用の会議室では、緊急の記者会見が行われていた。
テレビ局が生中継する中、100人を超える報道関係者が集まっていた。
壇上には、警視庁ナンバー2の副総監、公安部参事官、サイバー犯罪対策課課長がいた。
全員が神妙な顔をしており、公安部参事官が口を開いた。

「本日9時30分ごろ、都内において捜査中の当庁捜査員が襲撃され、貸与されていた拳銃1丁および実弾5発を強奪されました。犯人は、大場玲の要求動画に関与しているとみられる、以下の男です。」、プロジェクターに上条の顔写真が映し出された。
「男の名前は、上条雷人、住所は神奈川県横浜市、38歳の無職です。」、参事官がいう。

「襲撃された捜査員はどの部署の人間ですか!」、「今まで極秘にしていたんですか!」、「市民に銃口が向く可能性があるということですか!」
報道関係者から、怒号のような質問の声が上がる中、参事官がいう。
「捜査の詳細は差し控えますが、市民の皆様の安全を第一に考え、本日、公開捜査に切り替えました。部署については、個人の特定に繋がるためお答えできません。」

東京都新宿区の東京中央技術大学病院。
中央棟の地下1階にある食堂で、神崎、佐倉井、高柳の3人は壁のテレビを観ていた。
テレビの報道特別番組では、警視庁の緊急記者会見の様子が流れていた。
画面がスタジオに切り替わり、画面には「速報:テロリストが拳銃強奪。」の文字があった。

「要求期限の日に大変なことが起こりましたね。」、司会者がいう。
「警察が拳銃を奪われたことを公表したということは、裏を返せば、警察単独ではもう犯人を追いきれなくなったという『敗北宣言』に等しいです。」、元刑事がいう。
「相手はテロリストですから、新たな要求をしてくる可能性があります。」、弁護士がいう。

振り返るようにしてテレビを観ている佐倉井と高柳に神崎がいう。
「観ていて思ったんだが、私たちで上条逮捕に協力できないかな。」
佐倉井と高柳がテレビを観るのを止めて、神崎の方を向いた。
「君たちなら、上条を逮捕できる方法が頭にあるんじゃないかね。」、神崎がいう。

「都内で警察が監視できる街頭の防犯カメラは約200台しかありません。
公共交通や民間の防犯カメラも使えば、特定できる確率は高まります。
これらの映像をリアルタイムでYUKIに解析させれば、さらに確率は高まります。
ただ、公共交通や民間の防犯カメラの利用には時間が必要です。」、佐倉井がいう。

「上条は防犯カメラの情報が投稿されている『ダークマップ』の管理人です。
ですが、上条は女性に変装して移動しています。
防犯カメラに映ることを想定して、変装しているんだと思います。
移動に公共交通を使ったり、車両を使う可能性は高いと思います。」、高柳がいう。

「私も、上条が公共交通や車両を使って移動する可能性が高いと思う。
防犯カメラの映像を、リアルタイムで解析すれば、特定できる可能性は高い。
その場合、問題が2つある。」、神崎がいう。
「1つは、公共交通や民間の防犯カメラの利用ですよね。あと1つは。」、佐倉井がいう。

「あと1つは、解析に必要なAIの能力不足だよ。
YUKIだけで、都内全ての防犯カメラ映像のリアルタイム解析はできない。
するのであれば、全国の研究機関にあるAIの協力が必要だ。
佐倉井くん、美矢部くんに連絡して、協力要請してもらえるかな。」、神崎がいう。

「先生、公共交通や民間の防犯カメラの利用はどうするんですか。」、高柳がいう。
「上条の協力者が仕込んでいる『オムニサイト』を利用できないかな。」、神崎がいう。
「なるほど、電力会社以外の『オムニサイト』は無効化していませんからね。
仕込まれている『オムニサイト』を見つけ、ハッキングするんですね。」、高柳がいう。

「どうだろうか、佐倉井くん、この案は。」、神崎がいう。
「平時なら認められないでしょうが、今は非常時ですからね。
協力要請の件も含めて、美矢部に連絡してみます。」
佐倉井は席を立ち、美矢部に連絡するため、食堂から出て行った。
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿