2026年6月16日火曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP50 完全なる包囲網

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご)
東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。
・沢渡(さわたり)
警察庁の警備局 公安警察。
・岩田(いわた)、川瀬(かわせ)、坂下(さかした)、山本(やまもと)
警視庁 サイバー犯罪対策課。
・木下(きのした)
ペガサス電子の社員。

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EP50  完全なる包囲網

東京都中野区の東京警察病院。
病室には、現場から救急搬送された山本と付き添ってきた佐藤がいた。
病室内には、心電図の規則正しい電子音が鳴り続けていた。
佐藤は椅子に座り、点滴のチューブで繋がれてベッドに横たわる山本を見ていた。

「…ここは…」、山本がまぶしそうに手を目にやり、いう。
「気がついたか、ここは東京警察病院だ。」、佐藤がいう。
「…先輩、どうして自分は病院に…」、山本がいう。
「覚えていないのか、感電させられて気を失って、救急搬送されたんだ。」、佐藤がいう。

「あっ、思い出した、あの女はどうなりました。」、山本がいう。
「あの場から逃げたので、今、皆で追っている。」、佐藤がいう。
「くそっ、自分はどれくらい寝てたんですか。」、山本がいう。
「3時間だ、目を覚まさないんじゃないかと心配したぞ。」、佐藤がいう。

「そんなに寝てたんですか。」、山本がいう。
「医者の話では、電流が流れたことにより、筋肉が溶けている可能性があるらしい。
筋肉が溶けると腎臓に悪影響があるので、点滴する必要があるらしい。
少なくとも24時間は様子を見て、異常がなければ、大丈夫だそうだ。」、佐藤がいう。

「感電させられたのは初めてですが、凄い威力ですね。」、山本がいう。
「鑑識の読みだと、海外製のスタンバトンの基盤が使われてる可能性があるらしい。
国内への持ち込みは禁止されてるので、ダークウェブで入手したんだろ。
川瀬さんたちが、入手先の特定も進めているらしい。」、佐藤がいう。

「すいません、皆に迷惑をかけてしまって。」、山本がいう。
「無事で何よりだった、今は身体を休めてくれ。じゃあ、また来るよ。」
山本のありがとうございましたという声を背に受け、佐藤は病室を出た。
拳銃が奪われたことはいえなかった、早く取り戻さないと、佐藤は病室を後にした。

東京都新宿区の東京中央技術大学病院。
中央棟10階の101号室には、高柳と神崎がいた。
高柳は、神崎が持ち込んだノートパソコンでペガサスを使っていた。
高柳の隣には、椅子に座った神崎がおり、モニターを見ていた。

「公共交通機関の全てのシステムに『オムニサイト』が仕込まれています。
この状況だと、他のインフラのシステムにも仕込まれているはずです。
これだけの数を仕込むには、大勢の協力者が必要です。
いったい、どれだけの協力者がいるんだって思いますよね。」、高柳がいう。

「佐倉井くんの話によると、上条はネットの掲示板で協力者を募ってたらしい。
ダークマップ関係の協力者も含めると、相当な数だろうね。」、神崎がいう。
「短期間で、これだけの協力者を集めるのは難しいです。
かなり前から、準備していたんでしょうね。」、高柳がいう。

「ダークマップができたのが、10年以上前らしい。
そのときから、今回の計画があったのかもしれないな。」、神崎がいう。
「そ、そんなに前からですか。」、高柳が驚いていう。
「推測だが、だったとしても、上条ならおかしくない。」、神崎がいう。

「通信会社の検索結果が出ました。」、高柳がいう。
「結果はどうなってる。」。神崎がいう。
「全滅です。全てのシステムに『オムニサイト』があります。
ここもバックドアを仕込んでおきますね。」、高柳がキーボードをたたき始めた。

部屋のドアがノックされ、高柳がどうぞというと、佐倉井が入ってきた。
「美矢部に連絡したところ、神崎先生の案で行くことに決まりました。
全国の研究機関に協力を要請したところ、多くが協力するとのことです。」、佐倉井がいう。
「協力してくれるAIは、どことどこのAIだね。」、神崎がいう。

「協力してくれるのは、国立治安技術研究所の『八咫烏(やたがらす)』、次世代情報数理研究機構の『CHRONOS(クロノス)』、産業技術総合研究所の『GENESIS 4(ジェネシスフォー)』、筑波先端知能総合研究所の『SYNAPSE(シナプス)』…」 
手に持ったメモを見ながら佐倉井がいう。

「…す…凄すぎる…。」、高柳がキーボードを打つ手を止め、佐倉井を見ていう。
「宇宙開発先進技術機構の『ORION V (オリオンファイブ)』、防衛省の『AEGIS 7 (イージスセブン)』、最後が国家サイバー統括室の『アマテラス』です。』、佐倉井がいう。
あまりの驚きに高柳は言葉を発することができなかった。

「それだけのAIがあれば、リアルタイムでの解析が可能だ。」、神崎がいう。
「…な…なぜ、それだけ多くのAIが協力してくれるんですか。」、高柳がいう。
「神崎先生は日本の情報工学の第一人者で、教え子が多いからね。
神崎先生のためならと協力してくれたところは多かったようです。」、佐倉井がいう。
【スタンバトン】
護身用として使われる警棒型スタンガン。先端を相手に押し当てることで強力な電気ショックを与え、行動を一時的に制限できる。
【ダークウェブ(Dark Web)】
Googleなどの通常検索エンジンでは見つからず、専用ブラウザ(Torなど)でのみアクセス可能な、匿名性の高いインターネット領域。通信の暗号化により、犯罪や不正取引の温床となっており、漏洩した個人情報、クレジットカード情報、違法薬物、ハッキングツールが販売されている。サイト閲覧だけでコンピュータウイルスに感染するリスクがある。
【バックドア(backdoor)】
本来の正規の認証プロセス(IDやパスワードなど)を回避し、システムやネットワークの内部へ秘密裏に侵入できる隠し通路(裏口)。

※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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