2026年6月9日火曜日

【小説】神崎教授とAIの事件ファイル:EP44 大都市のラビリンス

【AI(人工知能)による作品紹介】
人間とAIのバディに解けない謎はない。日本を襲うハッキングテロ。崩壊する医療、迫る停電のタイムリミット。未曾有の国家危機に立ち向かうのは、神崎教授と亡き妻の思考を学習したAIだった。緻密な伏線とハイスピードな展開で魅せる、新時代のサイバーミステリー!
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち)
元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。NCOによるコード名はM2。
・神崎悠季(かんざきゆき)
神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI)
神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご)
東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる)
東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。警視庁 サイバー犯罪対策課。NCOによるコード名はK2。
・上条雷人(かみじょうらいと)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。「ダークマップ」管理人。サイバーテロを計画し実行する。
・華喜多美代子(はなきたみよこ)
元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。上条雷人とは異父兄妹。
・雅(みやび)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。国家サイバー統括室(NCO)。本名は美矢部(みやべ)。
・佐倉井(さくらい)
東京中央技術大学 情報工学科 2010年卒の神崎教授の教え子。防衛省 情報本部 特殊情報分析室。NCOによるコード名はJ1。
・高柳(たかやなぎ)
副業でハッキングをしている会社員。NCOによるコード名はM1。
・鳩山(はとやま)
東京都の総務局 文書管理課の職員。NCOによるコード名はT1。
・沢渡(さわたり)
警察庁の警備局 公安警察。

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EP44  大都市のラビリンス 

神崎と高柳は正面ロビーにある椅子に座り、佐倉井が来るのを待っていた。
「遅いですね、佐倉井さん。」、高柳が横の神崎にいう。
「追加のミッションがあったから、報告することも多いんだろ。」、神崎がいう。
ロビーの奥から、佐倉井が歩いてきた。

「お待たせしました、病院へ戻りましょう。」、二人の前に来た佐倉井がいう。
3人は正面玄関から出ると、待っていた黒のセダンに乗り込んだ。
「出せ。」、助手席の佐倉井が運転手にいうと、病院へ向かって走り出した。
「これでお二人のミッションは終わりです、ありがとうございました。」、佐倉井がいう。

「次は佐藤くんたちのミッションだね。」、神崎がいう。
「はい、先ほど、お二人のミッションが終わったことを連絡しました。
すぐに次のミッションが始まると思います。」、佐倉井がいう。
「いよいよ、上条の逮捕ですね。」、高柳がいう。

「はい、今までは機密データの件があったので、逮捕できませんでした。
機密データを削除、『オムニサイト』も無効化できたので、逮捕できます。」、佐倉井がいう。
「前に、美矢部くんがいってた、他国が上条と接触しようとしている件。
その件は大丈夫なのか。接触されてないのか。」、神崎がいう。

「24時間体制で監視していますが、接触した様子はないそうです。」、佐倉井がいう。
神崎が横の高柳を見ると、何かいいたそうな顔をしていた。
「高柳くん、何か気になることがあるのかね。」、神崎がいう。
「今までの上条の行動から、すでに他国は接触しているような気がします。」、高柳がいう。

「どうして、そう思うのですか。」、佐倉井がいう。
「同じハッカーだからです、ハッカーはあらゆる事態を想定して行動します。
上条も他国が接触してくることは想定していたと思います。」、高柳がいう。
「上条は他国が接触してきても、相手にしないと思っています。」、佐倉井がいう。

「私が上条の立場だったとしても、相手にしません。
相手にすると、それだけ自らのリスクが大きくなるからです。」、高柳がいう。
「相手にしないのであれば、問題ないんじゃないかね。」、神崎がいう。
「相手にはしませんが、自らのために利用すると思います。」、高柳がいう。

東京都千代田区の警視庁。
新宿での聞き込みから帰ってきた佐藤は1階でエレベーターが来るのを待っていた。
到着音がし、扉が開くと、エレベーターに乗り込んだ。
サイバー犯罪対策課のある5階を押すと、1人の男が乗り込んできた。

「おや、奇遇だね、聞き込みからの帰りかい。」
佐藤が振り返ると、公安の沢渡がいた。
「はい、沢渡さんも5階ですか。」、佐藤がいう。
「ああ、5階でいいよ。」、沢渡がいう。

扉が閉まり、上昇し始めたエレベーターの中には、佐藤と沢渡の2人だけだった。
「M2のミッションが終わった、次のミッションを開始してくれ。」、沢渡がいう。
えっ…今、何ていった…沢渡さんはこちら側の人だったのか…。
誰も信用できないと思っていた佐藤は驚きで言葉が出なかった。

「君を守ること、君への連絡をすることが私のミッションだ。
表立ってのサポートはできないが、できる限りのことはさせてもらう。
君のミッションが、最後のミッションになるので、よろしく頼む。」
沢渡はそういい残すと、5階に着いたエレベーターから降り、対策課へ歩いて行った。

佐藤は非常階段へ行くと、壁に背をつけて、考え始めた。
沢渡さんがいる公安が対策課に乗り込んできたのは、犯人の要求動画が放送された翌日。
そのときから、沢渡さんたちは捜査員たちの様子を見ているだけだった。
余計なことをしていないか、監視されているのだと思っていた。

公安の中には、本当に監視している人もいるかもしれない。
だが、沢渡さんは私を守ってくれていたんだ。
さっき、エレベーターに乗り込んできたのも偶然じゃない。
会議後に渡された筆記具に仕込まれたGPSの位置情報を確認して、待ってくれていたんだ。

M2のミッションが終わったってことは、神崎先生のミッションが終わったってこと。
これからのミッションは、警察庁のK1と私に託された上条の逮捕。
部屋に戻ったら、岩田さんに上条が生活拠点にしているマンションを報告する。
どのように報告するか考えた佐藤は、対策課へ向かった。

対策課へ戻った佐藤は、岩田に上条が生活拠点にしているマンションを報告した。
岩田は別室にこもっている公安に報告しにいったが、長い時間、出てこなかった。
やがて、出てきた岩田が捜査員たちにいった。
「上条を逮捕するための打ち合わせを行うので、集まってくれ。」
※本作に登場する手法は防犯上の観点から一部改変しています。

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