「銘柄を明かさない理由R」は、自身のオリジナル小説だ。
主人公は、ロイヤルストレートフラッシュと呼ばれる5人の無敗の相場師。
また、彼らを取り巻く人々の物語でもある。
登場人物は、自身に似たのか正義感が強い人物が多いw
「銘柄を明かさない理由R」は、小説や映画の影響を強く受けている。
本エピソードのタイトル、「Interview with the stage actor」。
お気づきの方もいるだろうが、「Interview with the Vampire」から拝借した。
ストーリーは全く異なるが、原作者であるアン・ライス女史には感謝したいw
さて、本エピソードには舞台俳優の相場師が登場する。
彼もロイヤルストレートフラッシュ側だが、唯一のダークヒーローかもしれない。
現在、彼はブロードウェイで日本人主演公演最長記録を更新中だ。
それでは「銘柄を明かさない理由R ベイビーワールドエンド編」をお届けするw
--------------------------------------------------------------------------
第208話 Interview with the stage actor(中編)
マンハッタンの高級ホテルの1室、テーブルを挟んで2人の男が椅子に座っていた。
ポロシャツ姿の若い男は、舞台俳優の男の話に聞き入っていた。
サングラスをかけた舞台俳優の男の話は臨場感に溢れていた。
まるで、当時の光景が目の前で繰り広げられているようだった。
ポロシャツ姿の若い男は、室温が下がっていることに気づいた。
おかしいな、インタビュー前に空調機の室温設定をしたはずなのに。
気のせいか室内、特に男の周囲が暗くなってきた気がする。
サングラスをかけた舞台俳優の男は、落ち着いた口調で話を続けた。
「目覚めたとき、私は病院にいた。
スーツ姿の巨躯の男とのやり取りは、気を失っているときに見た夢だと思った。
ところが、枕元には付き添いで来た巨躯の男が置いていった封筒があった。
封筒の中には、巨躯の男が書いたメモとトランプのキングが入っていた。
退院した私は、メモにあった日時にホテルの会場に行った。
会場には老若男女、そうだな、少なくとも20人はいたと思う。
やがて、巨躯の男が現れ、私は巨躯の男の正体を知った。
巨躯の男は、無敗のキングと呼ばれている伝説の相場師だった。
無敗のキングは、20人からの老若男女に数ヶ月にわたり、ある講義を行なった。
相場の歴史から始まったその講義は、経済から心理学まで多岐に及んだ。
数ヶ月の講義が終わる頃、20人からの老若男女は全員が怪物に変わっていた。
無敗のキングの講義は、20人からの老若男女を怪物にするための講義だったんだよ。
講義が終わると、20人からの老若男女が、再び集まることはなかった。
一緒に講義を受けた20人からの老若男女が、どうしているかは知らない。
ただ、同じ講義を受けた者として、わかることがある。
20人からの老若男女は、自分たちが怪物になった自覚はあるはずだ。
講義が終わったあと、私は本格的に相場にデビューした。
リーマン・ショックの暴落相場、東日本大震災の急落相場。
それらの相場も底で買い、高値で売り抜けることで結構な資産ができた。
いつしか相場での収入が、舞台俳優のチンケな収入をはるかに上回るようになった。
やがて、世間が私のことを『仮面の相場師』と呼んでいることを知った。
舞台で仮面をつける役が多かったからだと思うが、あまりにも安易なネーミングだよ。
最初に聞いたときは、あまりのセンスの無さに笑うどころか呆れたよ。
『仮面の相場師』ではなく、なぜ『怪物』と呼ばないのかとね」
0 件のコメント:
コメントを投稿