2018年9月27日木曜日

銘柄を明かさない理由R214 日本人相場師の心意気(中編)

第214話 日本人相場師の心意気(中編)

大阪市中央区の御堂筋沿いにある証券会社の応接室に2人の男がいた。
不敵な笑みを浮かべながら、淀屋が支店長の村野にいう。
「その男は姓の野村を村野と名乗り、次期社長の座を虎視眈々と狙うとるそうや。
ワテの推測はあながち間違いではないはずや、そうでっしゃろ、村野こと野村はん」

「おもろいこというやないか、村野やのおて野村とはな。
仮にワテが野村やったとして、お前の目的は何や」、支店長の村野がいう。
「ベイビー情報の出所を聞きたいか」
不敵な笑みを浮かべたまま、淀屋がいう。

「どこから聞いたんや」、支店長の村野が銀縁メガネの奥の目を光らせて聞く。
「ワテにベイビー情報を教えてくれたのは2人や。
1人は同じ淀屋一族の二代目本家当主、難波の女帝。
もう1人は伝説の相場師、無敗のキングや」、淀屋がいう。

支店長の村野は思った。
無敗のキング、会うたことはないが、業界では知らん者はおらへん。
ブラックマンデーで大儲けし、その金で証券会社を創業した伝説の相場師。
まさか、無敗のキングと淀屋に繋がりがあったとは知らんかった。

「仮にベイビー情報がホンマやったとして、目的は何や。
日本一の株屋も世界恐慌を起こすベイビーと戦えってか」、支店長の村野がいう。
「そうや、だが、それだけやない。
日本一の株屋にしかできへんことをして欲しいんや」、淀屋がいう。

「どんなことや」、支店長の村野が聞く。
「日本中の証券会社を率いて、一緒に戦うて欲しいんや。
ベイビーが起こすのは世界恐慌で、莫大な金が動くはずや。
ベイビーに勝つためには、総力戦で挑む必要があるんや」、淀屋がいう。

「それでワテに何かメリットがあるんか」、支店長の村野がいう。
不敵な笑みを浮かべたまま、淀屋がいう。
「ベイビーが起こすのは世界恐慌、全ての市場が対象や。
他の市場が恐慌に陥る中、日本だけノーダメージにするんや。

世界は驚いて不思議に思うはずや、ホワイオンリージャパンってな。
日本をノーダメージにしたんは、村野ちゅう日本人らしいで。
すごい日本人もおるもんやと、世界中から賞賛されるのは間違いないやろ。
どや、世界に日本人相場師の心意気を見せへんか」

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