2018年9月12日水曜日

銘柄を明かさない理由R206 恐慌が起こる条件(後編)

第206話 恐慌が起こる条件(後編)

無敗のJ(ジャック)は、自宅の書斎で過去の恐慌について調べていた。
先日のこと、無敗のJは近くの河川敷で無敗のクイーンに会った。
無敗のクイーンとのやり取りで、無敗のJはあることに気づいた。
BABYが恐慌を起こすのは、相場が油断して恐慌に対する隙が生まれたときだ。

1929年のウォール街の株価大暴落。
世界恐慌のきっかけとなった最初の暴落は1929年10月24日に起こった。
「暗黒の木曜日」と呼ばれたこの日だけで、投機業者の自殺者は11人に及んだ。
「悲劇の火曜日」の29日に更なる暴落が起こった。

ウォール街の株価大暴落の前、ウォール街は投機熱に包まれていた。
当時、合衆国の政治家で実業家のジョセフ・P・ケネディがいた。
ある日、ウォール街の有名な靴磨きの少年が、彼に投資を薦めてきた。
彼は不況に入る日は近いと予測し、暴落前に株式投資から手を引いた。

1987年10月、日経平均株価は1年前の15,000円から、26,000円台に急騰していた。
1987年10月19日、ニューヨーク証券取引所のダウ平均が暴落した。
前日比508ドル安、前日比マイナス22.6%、ブラックマンデーと呼ばれる暴落だった。
だが、最後の相場師と呼ばれた是川銀蔵氏は、暴落前に全ての保有株を手放していた。

是川銀蔵氏の自伝「相場師一代」には、暴落前の様子が次のように書かれている。
「”財テクブーム”を背景に、主婦やOL、サラリーマンまでもが株に熱中し、
証券市場は空前の投資ブームに沸いており、私のいうことに聞く耳を持つ投資家は、
私の周囲を除いてはほとんどいないという状況であった」

資本主義には、基本的矛盾がある。
部分的ではない一般的な過剰生産傾向を生む生産と消費の矛盾である。
資本家は多くの利潤を得るために、生産力を発展させようとする傾向をもっている。
他方では、労働者の賃金を、最低限にまで制限しようとする傾向をもっている。

「全ての現実の恐慌の究極の根拠は、どこまでも、資本主義的生産の衝動に対比しての、
あたかもその限界をなすのはただ社会の絶対的な消費能力だけであるかのように
生産諸力を発展させようとする衝動に対比しての、大衆の窮乏と消費制限なのである」
(マルクス『資本論』第三部)

恐慌について、調べ終わった無敗のJは思った。
恐慌前には、誰もが好景気に浮かれるバブル状態が訪れる。
言い換えれば、バブル状態にならなければ、恐慌は起きないともいえる。
バブル状態で売り抜けて、大底で買い戻してやる、無敗のJは不敵な笑みを浮かべた。

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