2018年9月10日月曜日

銘柄を明かさない理由R204 恐慌が起こる条件(前編)

第204話 恐慌が起こる条件(前編)

大学生の21世紀少年は、都内にある大学の寮で1人暮らしをしていた。
帰宅した21世紀少年が個人用PCを立ち上げると、1通の新着メールがあった。
このメールアドレスは限られた人にしか教えていない。
誰からだろう、21世紀少年は受信トレイを起動した。

メールの差出人は、無敗のキングだった。
メールを読み始めた21世紀少年は、メールの内容に引き込まれていった。
「恐慌を起こしてきたBABYというAI(人工知能)が活動を開始した。
BABYは、日本を含む十数カ国でワールド株式投資セミナーを開催しているらしい。

ワールド株式投資セミナーの開催目的は不明だ。
だが、奴が再び、恐慌を引き起こそうとしていることは間違いないだろう。
ワシは貴様に何かしてくれとはいわない。単なる情報提供だ」
短いメールだったが、無敗のキングの真意を21世紀少年は瞬時に理解した。

無敗のキングは、よい大人なんだけど、伝え方が素直じゃないんだよね。
一言、BABYと戦え、といってくれれば済むのに。
さてと、先ずはBABYに関する情報収集からだな。
21世紀少年はにっこりと微笑むと、BABYに関する情報の高度検索を始めた。

大阪難波のタワーマンションの1室。
淀屋は自宅の居間で、PCが新着メールの着信を知らせる音を聞いた。
今日の仕事は終わりやのに、いったい誰や。
これから、知り合いがオープンした新地のクラブに顔出さなあかんのに。

ぶつぶつ文句をいいながら、受信トレイを確認すると、2通の新着メールがあった。
1通目は、4年前から交際している彼女、無敗のテンちゃんだった。
「昨夜は電話もらって嬉しかったです。
ただ、気になることがあったので、メールしました。

昨夜、浮気していないでしょうねって、聞いたとき・・・。
上手くはいえないけど、いつもと違う感じがしました・・・。
他の男の人とは違うって信じなきゃいけないのに・・・。
いつもと違うって思ったこと、反省してます、本当にごめんなさい・・・」

すぐに淀屋は知り合いに電話、急用ができて、クラブに行けなくなったことを伝えた。
気を落ち着けた淀屋は、2通目のメール、無敗のキングからのメールを確認した。
メールの内容は、同時刻に21世紀少年が受信したメールの内容と同じだった。
AI相手とはおもろいやんけ、淀屋初代本家13代目当主の男は不敵な笑みを浮かべた。

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