第337話 最強のツーペア(中編)
南京路の沿線にある高級ホテルの最上階にあるラウンジ。
「娘の家庭教師にと、ミレイに紹介してもらったこの男。
娘だけじゃなく、妻にもいろいろ教えてくれたようだ」、
劉宋明(りゅうそうめい)が、キサラギ ミレイを見ていう。
「最低の男ね」、キサラギ ミレイは冷たい眼差しのまま、いった。
キサラギ ミレイは、黒服のボーイに高級ブランデーを持ってくるよう命じた。
劉宋明は思った、おそらく、ミレイとこの家庭教師は男女の仲だ。
怒ったミレイがどのような行動をとるか、見ものだな。
ほどなくして、黒服のボーイが高級ブランデーのボトルを持ってきた。
ボーイの背後には、艶やかなラウンジの女性たちがついて来ていた。
「ミレイさん、最低男をやっちゃってください」
女性たちの1人で、赤を基調としたチャイナドレスを着たリンがいう。
「最低男を懲らしめてやってください」、「最低男に天罰を」
女性たちがはやしたてる中、キサラギ ミレイは黒服のボーイからボトルを受け取った。
髪から高級ブランデーが滴り落ちるアマネ オトヤは、うつむいたまま無言だった。
キサラギ ミレイは、右手にボトルを持ったまま、アマネ オトヤに近づいた。
キサラギ ミレイは、アマネ オトヤの前に立つといった。
「最低なことしてくれたわね。
人として恥ずかしくないの。
ここまで頭にきたのは初めてよ」
劉宋明は笑みを浮かべながら、キサラギ ミレイとアマネ オトヤを見ていた。
「だいたい、あんたは人の心の痛みがわかってないのよ。
そんなことされたら、相手の人がどれだけ傷つくか、考えたことある。
同じ目に遭わないとわからないのかしら」、キサラギ ミレイがアマネ オトヤにいう。
「劉様、何か飲み物をお持ちしましょうか」
劉宋明の飲み物がないことに気づいたリンがいう。
劉宋明はキサラギ ミレイとアマネ オトヤから、リンに視線を移すといった。
「気が利くな、いつものやつを貰おうか」
次の瞬間、劉宋明は頭から高級ブランデーを浴びせられた。
皆が見ると、キサラギ ミレイが後ろ手に持ったボトルを劉宋明の頭の上で傾けていた。
「いつものやつよ、私の大事な人に、よくもこんなことしてくれたわね」
キサラギ ミレイは、劉宋明を見ると、怒りに満ちた目でいった。
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