聖遺物のひとつとされる、聖杯はいくつか存在する。
聖杯の1つは、エルサレム近くの教会にあったとされるものである。
7世紀、ガリアの僧がエルサレム近くの教会でそれを見て、触れたと証言している。
銀でできており、把っ手が2つ対向して付いていたというが、現在の所在は不明。
あと、3箇所にある杯も、聖杯だといわれている。
3箇所とは、ジェノヴァ大聖堂、バレンシア大聖堂、メトロポリタン美術館である。
これらの3箇所の中に、ケルン大聖堂は含まれていない。
だが、ケルン大聖堂には、エルサレム近くの教会にあったとされる杯があった。
ケルン大聖堂に聖杯が持ち込まれてから、聖杯を守る騎士団が誕生した。
「ケルンの騎士団」と名づけられた騎士団の使命は、命を賭して聖杯を守ることだった。
第二次世界大戦の最中、「ケルンの騎士団」は聖杯をスイスへ避難させた。
現在、ケルン大聖堂からスイスへ移された聖杯は、スプリングベルが所有していた。
かって、春鈴(シュンリン)という女の子が、近所の教会の老神父から聖杯を託された。
「ケルンの騎士団」だった老神父は、春鈴に聖杯を託した日に、自らの命を絶った。
以来、春鈴は、老神父から託された聖杯を、大事にしていた。
ある日の夜、ベッドで寝ようとしていた春鈴に声が聞こえた。
「敵を愛し、迫害するもののために祈れ」
えっ、誰かいるの、春鈴は起き上がったが、部屋には誰もいなかった。
「己を愛するごとく、汝の隣人を愛せよ」、春鈴に、再び、声が聞こえた。
聖杯の声だわ、春鈴は飾り棚にある銀色の聖杯を見ると確信した。
この夜から、春鈴は聖杯の声に従って生きてきた。
春鈴には、プライベートバンカーだった父親がいた。
父親が亡くなってから、春鈴は後を継ぎ、プライベートバンカーになった。
聖杯は、当時の名前であった春鈴を、スプリングベルに改名するよう告げた。
スイスで最も美しい教会があるといわれる街。
広大な敷地の中には豪邸があり、豪邸のすぐ近くには、教会が設けられていた。
教会ではステンドグラスから降り注ぐ朝日の中、スプリングベルが祈りを捧げていた。
スプリングベルが、祈りを捧げている聖母マリア像の中には、聖杯が格納されていた。
祈りを捧げていたスプリングベルは、聖杯からのお告げを受け取ると、豪邸へ向かった。
玄関の前には、数年前に採用された黒服を着た若い男性秘書のアレックスがいた。
「おはようございます、スプリングベル様、すでに朝食の準備は整っております」
スプリングベルは知らなかったが、アレックスは聖杯を守る「ケルンの騎士団」だった。

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