第330話 聖杯のお告げ(前編)
スイスで最も美しい教会があるといわれる街。
広大な敷地の中には豪邸があり、豪邸のすぐ近くには、教会が設けられていた。
教会ではステンドグラスから降り注ぐ朝日の中、黒髪の女性が祈りを捧げていた。
祈りを捧げていた黒髪の女性、スプリングベルは祈りを終えると、豪邸へ向かった。
「おはようございます、スプリングベル様、すでに朝食の準備は整っております」
黒服を着た金髪の若い男性秘書のアレックスが、玄関の前で恭しくいう。
「おはよう、アレックス、いつもありがとう」
スプリングベルはいうと、アレックスが開けた玄関ドアを通り、ダイニングへ向かった。
「聖杯から、相場以外のお告げがあったわ」、スプリングベルがいう。
「どのようなお告げでしょうか」、アレックスが尋ねる。
「獣がやってくる。備えを怠るな」、スプリングベルがいう。
「かしこまりました」、アレックスが答えた。
同日の深夜。
スプリングベルが所有する広大な敷地の中、黒の服に身を包んだ2人の男がいた。
2人の男は森の中を、スプリングベルの豪邸を目指し、進んでいた。
2人の男の目的は、プライベートバンカーであるスプリングベルの資産だった。
スイスのプライベートバンカーで、黒髪でオリエンタルな美貌のスプリングベル。
彼女は、各国政財界の要人や大口の機関投資家の資産運用を行っているという噂だった。
プライベートバンカーには謎が多いが、彼女の存在は多くの国民に知られていた。
彼女は慈善団体に多額の寄付を行っており、その活動は広く知られていた。
彼女が住んでいる豪邸は、広大な敷地の中にあり、豪邸の周囲は森で囲まれていた。
2人の男が調べたところ、自宅である豪邸の警備は手薄らしいことがわかった。
2人の男は、森の中を抜けて、スプリングベルの豪邸が見えるところまでたどりついた。
豪邸に明かりはなかったが、この先に高い木々はなく、身を隠すような場所はなかった。
一気に豪邸まで、駆け抜けるしかない。
2人の男は、お互いに顔を見合わせると、うなずいた。
2人の男は、豪邸に向かって駆け出した。
2人の男が駆け出した瞬間、足元の地面が消失し、2人の男は深く掘られた穴に落下した。
同時刻、スプリングベルの豪邸の中の一室。
「聖杯のお告げどおりに現れた獣は、2匹か」
2人の男が穴に落下する様子を、モニターで見ていたアレックスがつぶやいた。
アレックスは地元警察との専用回線を使い、2人の男を確保するよう依頼した。
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