2020年9月27日日曜日

銘柄を明かさない理由R352 Nine dragon eyes(後編)

第352話 Nine dragon eyes(後編)

休日の都内にあるマンションの一室。
"無敗のジャック"ことジョウシマ ユウイチは、河川敷から帰宅していた。
ジョウシマはPCを起動すると、あることを調べていた。
ニューヨーク証券取引所を暴落させた、9匹のドラゴンの絵、"Nine dragon eyes"。

ニューヨーク証券取引所暴落の日。
"Nine dragon eyes"は、東京証券取引所に描かれていた。
他の証券取引所にも描かれていたのか、ジョウシマは検索を開始した。
証券取引所は、株式や債券の売買取引を行う施設で、世界中にある。

ニューヨークにある世界最大の証券取引所である、ニューヨーク証券取引所。
ロンドンのセント・ポール大聖堂近くにある、ロンドン証券取引所。
アジアで東京証券取引所に続く第二の規模である、上海証券取引所。
香港で唯一の証券取引所である、香港証券取引所など。

最初にヒットしたのは、ニューヨーク証券取引所だった。
現地メディアが、暴落の朝、9匹のドラゴンの絵が描かれていたことを伝えていた。
絵を拡大して確認すると、東京証券取引所と同じく"SELL"で描かれていた。
現地メディアは、流行の覆面アーティストの作品かもしれない、としていた。

次にヒットしたのは、ロンドン証券取引所だった。
複数の男女が「ドラゴン発見」のタイトルで、ドラゴンの画像を投稿していた。
ドラゴンの画像は9匹で、拡大すると、ドラゴンは"SELL"で描かれていた。
上海証券取引所や香港証券取引所でも、9匹の"SELL"ドラゴンが描かれていた。

ジョウシマは、劉宋明(りゅうそうめい)の恐ろしさを、垣間見たような気がした。
劉宋明は、自らのネットワークを用いて、各国の証券取引所にドラゴンの絵を描かせた。
描かせたドラゴンの絵には、"SELL(売れ)"という"サブリミナル効果"があった。
カリスマトレーダーのニック・ライアンを含む各国のトレーダーは、その絵を見た。

絵を見たトレーダーたちは、無意識の内に売らされ、全市場が暴落した。
劉宋明は、暴落するタイミングにあわせて、空売りを仕掛けた。
劉宋明は底で買い戻すことで、巨額の利益を手にしたことになる。
ジョウシマは、財務省に属する内海へ報告するため、メールを起動させた。

同じ頃、"無敗のクイーン"ことクジョウ レイコは、ジョギングで帰宅中だった。
クジョウのスマホが、その日、20通を超えているテンマからのメール着信を知らせた。
またか、クジョウは立ち止まると、"無敗の天然"ことテンマ リナからのメールを開いた。
開いたメールには、暴落当日のテンマの夕食らしき料理画像が複数、添付されていた。

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