第351話 Nine dragon eyes(中編)
休日、都内の河川敷。
"無敗のジャック"ことジョウシマと、"無敗のクイーン"ことクジョウがいた。
「届いたぞ」、クジョウは寝転んだまま、ジョウシマにスマホを掲げてみせた。
「届いたぞ」、クジョウは寝転んだまま、ジョウシマにスマホを掲げてみせた。
ジョウシマは身を乗り出して、クジョウが掲げるスマホを覗き込んだ。
たしかに、東京証券取引所にドラゴンが黒で描かれていた。
ドラゴンの数は9匹、全てのドラゴンがこちらを睨みつけている。
睨みつけている眼は白抜きになっており、迫力のある絵だった。
「近い、離れろ」、真下からクジョウの声がした。
身を乗り出したジョウシマは、クジョウに覆いかぶさるような姿勢になっていた。
ジョウシマは、慌ててクジョウの身体の上から身をそらせるといった。
「すまない、あまりにも迫力ある画像だったので見入ってしまった」
クジョウも上半身を起こすと、スマホの画像を見つめた。
「なるほどな」、しばらく、ドラゴンの画像を見ていたクジョウがつぶやいた。
「どうした」、ジョウシマがクジョウにいう。
「このドラゴンの絵は、単語で描かれている」、クジョウがいう。
「どうやって、単語で絵を描くんだ」、ジョウシマがいう。
「このドラゴンの絵は、いくつもの線で描かれている。
だが、よく見ると、線は長さや太さを変えたりして、変形させた4文字の英単語だ」
クジョウは、ジョウシマにスマホを手渡した。
ジョウシマは、受け取ったスマホのドラゴン画像を注意深く見始めた。
「こ、これは・・・」、クジョウの指摘に気づいたジョウシマが驚きの声をあげた。
驚きの声をあげたジョウシマに、クジョウがいう。
「そうだ、ドラゴンの絵は、いくつもの"SELL"という単語で描かれている。
このドラゴンの絵には、"サブリミナル効果"がある。
"サブリミナル"は、"潜在意識の"という意味がある。
"サブリミナル効果"は、意識と潜在意識の境界領域より下に刺激を与えることで現れる。
このドラゴンの絵を見た者は、自覚のないまま、"SELL"という刺激を与えられる。
"SELL"の意味は"売れ"、この絵を見た者が、無意識に"売り"をしても不思議ではない」
ジョウシマはクジョウにスマホを返すと、立ち上がりいった。
「RがNに売りを指示した方法を教えてくれて、ありがとう」
「これから、貴様はどうするつもりだ」、クジョウも立ち上がるとジョウシマにいう。
「他の証券取引所にも同じ絵が描かれていなかったか確認だよ」、ジョウシマがいった。
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