第350話 Nine dragon eyes(前編)
休日、都内の河川敷。
"無敗のジャック"ことジョウシマ ユウイチは、空を見上げたまま話を聞いていた。
話しているのは、"無敗のクイーン"ことクジョウ レイコ。
クジョウが話しているのは、ニューヨーク証券取引所の暴落が起きた日の出来事だった。
ジョウシマは、クジョウの話の中の、ある言葉が気になった。
暴落当日、東京証券取引所の壁に描かれていた9匹のドラゴン・・・。
たしか、劉宋明(りゅうそうめい)のネットワーク名は、"クーロンズ・アイ"。
クーロンズ・アイ(九龍の眼)・・・Nine dragon eyes(ナインドラゴンアイズ)。
ジョウシマは上半身を起こすと、クジョウにいった。
「暴落当日、東京証券取引所に、9匹のドラゴンが描かれていたのは本当か」
クジョウは寝転んだまま、ジョウシマを見るといった。
「自分は見ていないが、メンバーによると、9匹のドラゴンが描いてあったそうだ」
「メンバーにドラゴンの画像を送るよう頼んでくれないか」、ジョウシマがいう。
「わかった」、クジョウは寝転んだまま、スマホを取り出した。
「ニューヨーク証券取引所の暴落が起きた日に撮った画像を送れ」
クジョウは、メンバーである"無敗の天然"ことテンマ リナに、メールを送信した。
「9匹のドラゴンの絵が、ニューヨーク証券取引所暴落の"デッドクロス"なのか」
寝転んだままのクジョウが、ジョウシマに聞く。
「わからないが、"デッドクロス"だったかもしれない」
ジョウシマが答えたとき、クジョウのスマホがメール着信を知らせた。
クジョウがスマホを見ると、テンマからのメールだった。
メールを開くと、複数の画像が添付されていた。
添付されていたのは、テンマの朝食らしい手の込んだ洋食を撮影した画像だった。
違う、これじゃない、クジョウが声に出しそうになったとき、次のメールが届いた。
次のメールにも、複数の画像が添付されていた。
添付されていたのは、街中にある新作ゲームの告知看板を撮影した画像だった。
通勤途中に撮影したらしく、ご丁寧に角度を変えて撮影した画像もあった。
これも違う、あの画像を送れ、とクジョウが思ったとき、次のメールが届いた。
次のメールにも、複数の画像が添付されていた。
最初の画像は、東京証券取引所を背景にしたテンマの自撮り画像だった。
それ以外の画像は、東京証券取引所に黒で描かれたドラゴンを撮影した画像だった。
「届いたぞ」、クジョウは寝転んだまま、ジョウシマにスマホを掲げてみせた。
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