本ブログには、自身が初めて書いた小説「銘柄を明かさない理由R」がある。
5人の無敗の相場師、ロイヤルストレートフラッシュの物語である。
そして彼らを取り巻く人々の物語でもある。
もちろん、素人が書いた小説なので、プロの方が書いた小説の足元にも及ばないw
主要登場人物は、無敗の天然こと10(テン)、無敗の相場師J、無敗のクイーンことQ。
無敗の大物相場師キングことK、無敗の若き相場師エースことAである。
しばらく、連載が止まっていたが、仕込みを終えたので再開することにする。
今までの舞台は過去だったが、これからは現代が舞台になるw
「銘柄を明かさない理由R」はフィクションだ。
だが、自身は可能な限り、現在進行形の相場とリンクさせたいと考えている。
なぜなら、現在進行形の相場とリンクさせたほうが、書いていて楽しいからだ。
それでは、「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw
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第265話 買いの奥義(前編)
元号が変る前の年。
年の瀬の休日、東京証券取引所の横にある兜神社に1人の男がいた。
スーツ姿にコートを羽織った男は、どこにでもいそうな会社員だった。
男は会社員だが無敗の個人投資家でもあり、無敗のジャックと呼ばれていた。
ジャックは右手で柄杓を取ると、水盤の水で左手を洗った。
左手を洗うと、柄杓を左手に持ち替え、右手を洗った。
右手を洗うと、柄杓を右手に持ちかえ、左手に水を受け、口をすすいだ。
静かにすすぎ終わると、水をもう一度左手に流した。
手水の作法を終えたジャックは神前に進んだ。
日の光を受けて輝く賽銭箱に、ジャックは賽銭を投じた。
ジャックは今年の相場での勝利にお礼を告げ、来年の相場での勝利を祈願した。
拝礼を終えたジャックは、兜神社を出ようとした。
ジャックが前を見ると、兜神社の入口に中折れ帽をかぶったスーツ姿の男がいた。
男は目深に中折れ帽をかぶっていたので、口元しか見えなかった。
中折れ帽の男は兜神社に入ると、ジャックの横を抜け、神前に向かった。
自分以外にも兜神社へ来る奴がいるとは、ジャックは思った。
そのとき、ジャックの背後から声がした。
「株はいくら下がっても配当の利息が生じ、その品質は下がらない。
つまり株は利息がつくから、いつまで持っていても損はない」
ジャックは振り返ろうとしたが、身体がいうことを聞かず、振り向けなかった。
神前にいる中折れ帽の男は続けていった。
「株の売買をする際には株の利子、配当を注視せよ。
下落相場では、あり得ない配当の株が往々にして出現する」
ジャックは声を出そうとしたが、声すらも発することができなかった。
身動きの取れないジャックに、神前にいる中折れ帽の男がいった。
「第一は、株は配当を注視して売買すること。
第二に、株は会社が安全な物のみを選ぶこと。
第三に、決して借金してまで株を買わないこと」
一息つくと、神前にいる中折れ帽の男がいった。
「これ、すなわち桃介流の買いの奥義なり」
桃介流だと、奴は「黄金の化身」と称された相場師、福澤桃介なのか。
身体が自由になったジャックが振り向いたとき、神前には誰もいなかった。
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