2020年10月22日木曜日

銘柄を明かさない理由R360 疾きこと風の如く(中編)

第360話 疾きこと風の如く(中編)

大阪難波のタワーマンションの一室。
早朝、自宅兼オフィスのリビングで、1人の男がPCで相場の確認をしていた。
相場の確認をしていたのは、淀屋の初代本家第13代目当主。
"浪花の相場師"こと、ヨドヤ コウヘイだった。

なんや、ニューヨークもたいした動きなかったんやな。
暴落してから、ぱっとせん相場やで、ほんまに困ったモンや。
そのとき、PCが新しいメールの着信を知らせた。
誰からのメールかと思えば、ジツオウジはんやんけ、久しぶりやな。

ヨドヤ コウヘイは、淀屋の初代本家第13代目として生まれた。
だが、ヨドヤ コウヘイが生まれた当時、二代目本家が淀屋一族の中で勢力を誇っていた。
二代目本家の"難波の女帝"こと、ヨドヤ タエが多大なる影響力をもっていた。
お家騒動ともいえる状況を打破すべく、1人の男がヨドヤ コウヘイの元に現れた。

現れたのは、"無敗のキング"こと、ジツオウジ コウゾウだった。
大学生だったヨドヤに、ジツオウジは時には優しく、時には厳しく相場を教えた。
その後、ヨドヤは初代本家第13代目として、一族を掌握することになった。
ヨドヤが一族を掌握すると、ジツオウジとはメールでやりとりすることが多くなった。

ヨドヤは、ジツオウジからのメールを開くと読み始めた。
舞台のタイトルが"ないんどらごんあいず"やからって、どうしてん。
別に不思議でも何でもないやろうに、気にしすぎちゃうか。
けど、万が一ってこともあるさかいな、姐さんには教えとくか。

ヨドヤはスマホを手に取ると、ある番号に電話をかけた。
「朝っぱらから何の用や」、電話が繋がった瞬間、相手がいった。
「まあまあ姐さん、落ち着いてえな」、ヨドヤがいう。
「ウチはいつでも落ちついとるがな」、電話の相手、"難波の女帝"ことヨドヤ タエがいう。

「実は、"無敗のキング"って呼ばれとるジツオウジはんから、メールがきたんや。
ニューヨークで行われる舞台"ないんどらごんあいず"が、変らしいって」
「そのメールなら、ウチのとこにもきてるわ」、"難波の女帝"ことヨドヤ タエがいう。
「えっ、姐さんのとこにも、何で姐さんのとこにもきてんの」、ヨドヤが驚いて聞く。

「あんたにはいうてなかったかな、ウチとジツオウジは旧知の仲や。
ジツオウジは"最後の相場師"に指導を受けた同期で、腐れ縁の仲や。
あの男は好かんが、情報の精度は高い、今回の情報も無視できへんで」
"難波の女帝"こと、ヨドヤ タエは一方的にいうと、電話を終えた。

0 件のコメント:

コメントを投稿