2020年10月3日土曜日

銘柄を明かさない理由R354 反撃の狼煙(中編)

第354話 反撃の狼煙(中編)

休日の夜、家族が寝静まった都内のマンション。
書斎部屋で、内海はPCに向かい、メールの受信トレイを確認していた。
"反撃の狼煙(のろし)"か、内海はわずかに笑みを浮かべた。
内海は、どのように劉宋明への"反撃の狼煙"をあげるべきか、思考をめぐらせた。

目には目を、歯には歯を・・・、アナログにはアナログ、だな。
内海は、受信トレイにある1通のダイレクトメールを開いた。
開いたメールは、あるファーストフード店からのダイレクトメールだった。
内容は、今だけ限定の新商品や、割引クーポンのお知らせなどだった。

一見すると、ファーストフード店からのメールに見える。
だが、メールの本文中に、内海が属する、ある組織を表す言葉があった。
組織の暗号表を使って読めば、メールから、あるWEBサイトのアドレスが解読できる。
内海は、机の引き出しから暗号表を取り出すと、複合暗号の解読に取り掛かった。

暗号の起源は古く、数千年の歴史を持つ。
戦時下においては軍事技術の一つとして発達してきた。
1900年代、エニグマ暗号機のような複雑な電気機械式の暗号が発明された。
ついで電子式機械による、より複雑な暗号機が導入された。

第二次世界大戦中、日本の外務省や海軍は、エニグマ暗号機を過信していた。
だが、コードブックの秘匿維持を怠ったため、連合国に早期に破られてしまった。
対して、陸軍は換字式暗号を併用した複合暗号を使用した。
これら複合暗号の完全な解読は終戦まで出来なかった。

ほどなく、内海は、あるWEBサイトのアドレスの解読を終えた。
内海は、WEBサイトのアドレスを打ち込むと、WEBサイトにアクセスした。
真っ白な画面の中央に、ログインIDとパスワードの入力欄があった。
内海は、ログインIDを入力すると、ENTERキーを押した

すぐに、内海のスマホにメールの着信があった。
内海が、スマホのメールを開くと、パスワードが届いていた。
内海はスマホに届いたパスワードを、WEBサイトのパスワード欄に打ち込んだ。
内海が、ENTERキーを押すと、WEBサイトの画面が切り替わった。

内海は、日本一の株屋のチーフトレーダーだが、財務省にも属している。
だが、内海には、あと一つ、属している組織があった。
組織は、年齢不詳の男"JOKER"も属している、日本を守り続けてきた"名のない組織"。
内海は"名のない組織"のWEBサイトに、"反撃の狼煙"についての入力を始めた。

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