2020年10月14日水曜日

銘柄を明かさない理由R357 怪物たちの創造主(中編)

第357話 怪物たちの創造主(中編)

ニューヨークのマンハッタンにある高級アパートメントの一室。
"仮面の相場師"こと、アンザイ カズマは、舞台俳優の傍ら、相場を張る相場師だった。
アンザイは、自分を相場師にした、ある男との出会いを思い返していた。
ある男とは、"無敗のキング"こと、ジツオウジ コウゾウだった。

ある日の夜、アンザイは、下北沢の路地裏に横たわって、雨に打たれていた。
身体の節々が痛むし、ぶつかった相手に殴られたのか、片方の眼は塞がっていた。
地面に横たわって見上げる世界は、今まで見たことがない世界だと、アンザイは思った。
気づくと、傘を差し、コートを着た巨躯の男が、傍に立っていた。

「夢は何だ」、コート姿の巨躯の男が、アンザイを見下ろしながら聞く。
「日本一、いや、世界一の舞台俳優になりたい」、アンザイが答える。
「なぜ、世界一の舞台俳優になりたい」
コート姿の巨躯の男、"無敗のキング"こと、ジツオウジ コウゾウが聞いた。

なぜ、世界一の舞台俳優になりたいかだと、アンザイは思った。
だが、すぐに理由が思い浮かばなかった。
若手たちから尊敬されたいからか、いや、違う。
なぜ、世界一の舞台俳優になりたいなんて、いったんだ。

黙っているアンザイに、ジツオウジがいった。
「世界一の舞台俳優になりたい理由は、金が欲しいからだ。
もし、金が欲しいのなら、ここに来い」
ジツオウジは手帳に走り書きすると、ページを破り、アンザイに渡した。

後日、アンザイは、渡されたメモの日時に、指定されたホテルの会場に行った。
そこには、様々な世代の20名ほどの男女がいた。
その中には、当時は中学生で、"21世紀少年"と呼ばれていたキミシマ ユウト。
銀座のクラブホステスで、"ウィッグの女"と呼ばれていたキサラギ ミレイなどがいた。

やがて、ジツオウジが姿を現すと、相場で勝ち続けるための講義が始まった。
その後、数ヶ月にわたって行われた講義は、経済から心理学まで多岐に及んだ。
講義が終わったとき、アンザイは相場で勝ち続ける知識を身につけていた。
おそらく、ジツオウジの講義を受けた全員が同じ知識を身につけた怪物になったはずだ。

ジツオウジからは、ときおり連絡が来ることがある。
他の者たちの消息は知らないが、おそらく、ジツオウジからの連絡は来ているだろう。
いかんな、雨の夜は、ジツオウジと出会った日のことを思い出してしまう。
アンザイは、新しい舞台の台本「Nine dragon eyes」を手に取ると、読み始めた。

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