第359話 疾きこと風の如く(前編)
"仮面の相場師"こと、アンザイ カズマはジツオウジにメールを送信した。
都内にある重厚な門構えの木造家屋の居間。
"無敗のキング"こと、ジツオウジ コウゾウは朝食を終え、経済新聞を読んでいた。
居間のドアをノックする音がした。
ジツオウジが「入れ」というと、ドアを開けて、男性秘書が入ってきた。
「おはようございます、朝早くから申し訳ありません」、男性秘書がいう。
「構わん、用件は何だ」、ジツオウジが聞く。
「先ほど、米国にいるアンザイ様から、このようなメールが届きました」
男性秘書はプリントアウトしたメールを、ジツオウジに手渡した。
ジツオウジは経済新聞を傍らに置くと、メールを読み始めた。
男性秘書は、直立不動のまま、ジツオウジが読み終わるのを待っていた。
「確かに妙だな」、読み終えたジツオウジがつぶやいた。
「いつものメンバーに、このことを伝えろ」、ジツオウジは男性秘書に命じた。
「会長である証券会社にも、お伝えした方がよろしいでしょうか」、男性秘書がいう。
「そうだな、アルカディアの連中にも伝えておいてくれ」、ジツオウジがいう。
「かしこまりました」、男性秘書は頭を下げると、居間から退室した。
同日の午後、都内のある大学の学生寮の一室。
"21世紀少年"こと、キミシマ ユウトは、午前の講義を受けて帰ってきた。
キミシマは大学生だが、無料の株式投資セミナーを主催する個人投資家でもあった。
午後は講義がないので、次回のセミナーの準備をするため、PCを起動させた。
受信トレイに、師である"無敗のキング"こと、ジツオウジからのメールが届いていた。
珍しいな、何だろう、キミシマはメールを開くと、読み始めた。
メールを読み進めるキミシマの、メガネの奥の眼が輝き始めた。
多くの企業が協賛する謎の舞台「Nine dragon eyes(ナインドラゴンアイズ)」か。
これは調べてみる価値がありそうだな。
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