第356話 怪物たちの創造主(前編)
ニューヨークのマンハッタンにある高級アパートメントの一室。
"仮面の相場師"こと、アンザイ カズマはシャワーを終えた。
アンザイは、舞台で鍛えたスリムで筋肉質な身体に残った水滴を、バスタオルで拭った。
全裸の上に、高級なバスローブを羽織ると、アンザイはキッチンでカクテルを作った。
アンザイはカクテルを手に、マンハッタンの夜景を一望できるリビングのソファに座った。
カクテルを飲みながら、窓越しにマンハッタンの夜景を見ると、雨が降っていた。
街のネオンはぼやけて、色の塊にしか見えない。
アンザイは、"無敗のキング"こと、ジツオウジ コウゾウと出会った日のことを思い出した。
アンザイの家は、父親は地方都市の会社員、母親は専業主婦、弟が1人の平凡な家庭だった。
何不自由なく育てられたアンザイは、都内の大学に入学、演劇サークルに入った。
演劇サークルに入った理由は、先輩たちに美男美女が多かったという単純なものだった。
だが、その演劇サークルで、アンザイは演劇の虜(とりこ)になった。
アンザイが、演技で怒りを露(あらわ)にしたり、悲しむと、観客が感情移入してくれた。
やがて、先輩たちは演劇以外の道を選択、演劇サークルを卒業していった。
同期生の就職先が次々と決まる中、就職先が決まっていないのは、アンザイだけだった。
俺は演劇で生きていく、卒業したアンザイは、親の反対を押し切り、小さな劇団に入った。
小さな劇団だったので、すぐに役を与えられたが、劇団での収入は少なかった。
バイトで生活費を稼ぐ日々だったが、好きな演劇ができるだけで、幸せだった。
気づくと、小さな劇団で古株になっており、団長以外は年下ばかりになっていた。
ある日のこと、アンザイは、下北沢の居酒屋で、劇団の若手数人と飲んでいた。
演劇論を語るアンザイに、若手の1人が「あんたの演劇論は古いんだよ」といって笑った。
頭にきたアンザイは、自分の飲み代をテーブルに叩きつけると、居酒屋を後にした。誰かと肩がぶつかったところまでは覚えている。
気がつけば、路地裏に横たわって、雨に打たれていた。
身体の節々が痛むし、殴られたのか片方の眼は塞がっている。
たぶん、肩がぶつかった相手に殴られたのだろう。
地面に横たわって見上げる世界は、今まで見たことがない世界だと、アンザイは思った。
気づくと、傘を差し、コートを着た巨躯の男が、傍に立っていた。
「夢は何だ」、コート姿の巨躯の男が、アンザイを見下ろしながら聞く。
「日本一、いや、世界一の舞台俳優になりたい」、アンザイが答える。
気がつけば、路地裏に横たわって、雨に打たれていた。
身体の節々が痛むし、殴られたのか片方の眼は塞がっている。
たぶん、肩がぶつかった相手に殴られたのだろう。
地面に横たわって見上げる世界は、今まで見たことがない世界だと、アンザイは思った。
気づくと、傘を差し、コートを着た巨躯の男が、傍に立っていた。
「夢は何だ」、コート姿の巨躯の男が、アンザイを見下ろしながら聞く。
「日本一、いや、世界一の舞台俳優になりたい」、アンザイが答える。
「なぜ、世界一の舞台俳優になりたい」
コート姿の巨躯の男、"無敗のキング"こと、ジツオウジ コウゾウが聞いた。
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