「いい天気ですね、子どもは疲れ知らずなので大変です、休ませてもらえますか」
額にうっすらと汗をかいた内海がジョウシマにいう。
「大変ですね、お父さんも」、ジョウシマが内海にいう。
「どうして、私がお父さんだとわかったのですか」、内海がジョウシマにいった。
思いもかけない内海の問いに、ジョウシマは答えることができなかった。
答えないジョウシマに内海がいう。
「子どもと遊んでいる男が、全て父親だとは限らない。
もし、父親だというのであれば、その者はその事実を知っていたことになる」
「子どもと遊んでいる男がいれば、父親だと思うのが普通でしょう」、ジョウシマがいう。
「誰に頼まれた、ジョウシマ ユウイチ」、内海がジョウシマにいう。
な、なぜ、名前を知っている、ジョウシマは答えることができなかった。
「パパー」、内海の子どもが、内海を呼んでいた。
内海は子どもに向かって微笑むと、ベンチから腰を上げ、ジョウシマにいった。
「君に調査を依頼したのは、外資系の保険会社だということはわかっている。
外資系の保険会社は表向きの顔で、本当の依頼主は別の機関だ。
どちらにつくか、考えた方がいい」、内海はいうと、子どもの方に歩んでいった。
ベンチに残されたジョウシマは、かって味わったことのない敗北感に包まれていた。
今まで数多くの調査を行ってきたが、常に優位で正体を知られることはなかった。
内海は、いつから俺の調査に気づいていたのか。
いくら考えても、ジョウシマには思い当たることはなかった。
会社が情報漏洩したのか、だが漏洩しても何のメリットもない。
では、依頼主の外資系保険会社の誰かが情報を漏らしたのか。
ありえない、そんなことをしても何のメリットもない。
となると、結論は1つしかない、内海は最強の情報力を持っているということだ。
ジョウシマはベンチから立ち上がると、子どもと遊ぶ内海の元に近づいていった。
「パパー、おじさんきたよ」、ジョウシマを見た内海の子どもがいう。
「誰が来たのかな」、ジョウシマに背を向けていた内海が振り返りながらいう。
内海が見ると、ジョウシマが笑みを浮かべていた。
「楽しそうですね、私もご一緒してよろしいでしょうか」、ジョウシマがいう。
「どうぞ、どうぞ」、内海も笑みを浮かべていう。
「パパー、このおじさんはパパのともだちなの」、内海の子どもが内海にいう。
「ああ、そうだよ、今、お友達になった、とても大切なお友達だよ」、内海がいった。
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